[資料紹介]『朝日新聞』連載「賢い患者術」
『朝日新聞』元旦の紙面に、病気と情報とのかかわりを考える上で興味深い記事が掲載されていたので紹介する。
「賢い患者術 上--病気を知るには」『朝日新聞』2005.1.1p.33
病気を知る・病気と闘うにあたり自らが情報を収集することの重要性を、昨今、様々な論者が指摘している。一例はノンフィクション作家柳田邦男氏の『死の医学への日記』(新潮文庫)である。今回の朝日新聞では、「病気を知るには」とのメインテーマの下、「電話を使おう」「専門の図書館に足を運ぼう」「ネットを活用しよう」との3本柱を立てて、それらについて概説がなされている。
そのうち、第2番目の「専門の図書館に足を運ぼう」では、患者情報室(国立大阪医療センター)やさわやか情報センター(聖路加国際病院)、からだ情報館(東京女子医科大学病院)等の取り組みを紹介しながら、病気について知るための、図書館での資料提供の重要性が記されている。
また、「ネットを活用しよう」では、国立国会図書館NDL-OPAC(『雑誌記事索引』等、日本の文献の索引となるもの)を含め、インターネット上で提供されている有用な情報源が紹介されていた。ちなみに、この国立国会図書館NDL-OPACの利用には費用は係らない。
アメリカではMEDLINEという医学文献情報データベースがあり、誰でも無料で利用できるようになっているが、残念ながらまだ日本ではそのような状況にはない。しかし、今回上記の記事で紹介されているインターネット情報を使うことにより、いくらかでも、一般の人々にとって病に関する情報にアクセスする機会が増加しているということは言えるだろう。たとえば『雑誌記事索引』でタイトルに「がん」等と入れてそれに関する論文の一覧を出したり、著者に医師名を入れてその人の業績のリスト(一部)を出したりすることなどができるであろう。
そのほか、「電話を使おう」では、電話相談についての情報が記されていた。また、この紙面には、がんと闘っている最中である絵門ゆう子さんのインタビュー記事も載せられている。自分自身の体験に基づき、絵門さんは患者が情報に触れることの大切さを指摘している。
絵門さんの記事は、「がんでも幸せな毎日を送れれば問題ない。その目的のためにあらゆる分野の方たちが一つになることを望みます」という言葉で締めくくられている。とても大切なご発言である。「情報に関わる者」の一員つまり司書としての管理人も、改めてこの言葉が身にしみた次第である。今回紹介されなかったが、日本病院患者図書館協会のWEB患者図書館の取り組みが現在も進行中であり、また、地域の公共図書館でも入院患者へのサービスを行っているところがある。それぞれの場所で、それぞれの人が行っている取り組みを、今後ともしっかりと続けていくことが重要となろう。
この連載は、3日に「下--病院を探すには」が掲載されるとのことである。正月、のんびりしている機会に、是非紙面をめくってみてはいかがだろうか。
参考文献
死の医学への日記 柳田 邦男著
東京 新潮社 1999年03月
ISBN 4-10-124915-6
(新潮文庫 や 8-15)
病院患者図書館 患者・市民に教育・文化・医療情報を提供 菊池佑著
東京 出版ニュース社 2001年12月
ISBN4-7852-0100-2
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» (絵門ゆう子・著/山中翔之郎・絵)『うさぎのユック』(金の星社)ー5匹のうさぎの「いのちのものがたり」 [ほのぼの文庫]
5匹のうさぎの「いのちのものがたり」~「希望の光に向かう仲間の輪が広がって、みん [続きを読む]


ちなみに、「下 病院を探すには」は1月3日の31面に掲載されています。そこでは、次のような柱の下にポイントが記されています。「近くか遠くか」「手術件数は」「名医に出会うには」「快適な病室がいい」「治療成績わかる?」「ランキング本は」「厚い看護がいい」「保険外診療では」「セカンドオピニオン」。そして、『やっと名医をつかまえた』の著者下田治美さん(作家)や内山真一郎さん(東京女子医科大学教授)のインタビュー記事も寄せられています。「名医に出会うには」や、下田さんの記事でも、インターネットや書物などで医療情報を入手することの重要性が語られていました。
投稿: 高橋隆一郎 | 2005.01.06 21:27
ところで、ブログ『日本の図書館はもっと良くなる』の「誰かの助けにならなければ、その情報は意味がない」に「図書館は、不安を解消する場所である」と書かれていました。まったくそのとおりだと思います。今回の医療情報の提供の問題は、医療情報の提供を通じて、医療者らが言うところの「クオリティ・オブ・ライフ」(Quality of Life,生活の質)の向上に寄与するのだという視点を重要視する必要があるだろうと考えています。
上記記事URLはこちら。
http://surprise.jugem.cc/?eid=24
投稿: 高橋隆一郎 | 2005.01.06 21:38
初めまして。「ほのぼの文庫」の管理人のまざあ・ぐうすと申します。
病院を探す、良いドクターと出会うという記事には、直接関係ない内容かもしれませんが、絵門ゆう子さんの初の書き下ろしのものがたりが出版されましたので、トラックバックさせていただきました。
どんな病状になっても前向きに生きる勇気を絵門さんも画家の山中さんも与えてくれる方です。図書館に所蔵してほしい一冊だと思いましたので、ご紹介させていただきます。
投稿: まざあぐうす | 2005.01.19 12:50
まざあ・ぐうす様初めまして。トラックバックとコメントをありがとうございます。とても素晴らしい本をご紹介くださいましてありがとうございました。
病気そのものの情報だけでなく、闘病者がどのように生きようとしているのかの情報も大切なのだということをよく聞きます。その意味でもありがたいご発言でした。今後ともよろしくお願いします。
投稿: 高橋隆一郎 | 2005.01.19 21:40
トラックバックをありがとうございます。このブログのように、実際に図書館がしているサービスや司書の活躍を紹介してくださるのは貴重で意義あるものですし、個人的にもとても嬉しく思います。
メディアも図書館の取組みを広めてくださるようになってきましたね。これからの図書館がどう良くなっていくのか楽しみです。
投稿: yumi | 2005.02.12 00:13
『医学図書館』という雑誌の51巻4号では、「患者図書サービス」という特集が組まれている。そこでは、図書館側からの患者や家族への提供の実践報告に混じって、突然病を得て、医療情報を必要とする立場になった司書による現状報告記事が寄せられていた。
「図書館員が突然入院して」 平川裕子著
『医学図書館』v.51,no.4(2004)pp.355-356
平川さんの次の発言の前に、私は立ちすくしてしまった。あまりにも重たい指摘だからである。そして、知識の有無が生き死にを左右するという厳然とした事実と、そこでの図書館の役割の重要性を再確認させていただいた次第である。
>>これからの患者は、病気のことを勉強してゆかなければ、自分の欲しい医療に、たどり着
>>けないのではないかと危惧する。それなのに医学文献を取り巻く状況は、患者にやさしい
>>とは言えない。医学図書館の果たす役割はますます広がっていると感じる。…
投稿: 高橋隆一郎 | 2005.03.11 21:18
『ブログ加藤眞三 医療の維新をより良い方向に』に「医療情報リテラシーのためのHP立ち上げ」と言う記事があり、大変興味深く読みました。皆様もお立ち寄りになってはいかがでしょうか。
http://katos.at.webry.info/200505/article_1.html
投稿: 高橋隆一郎 | 2005.05.21 08:38
コメントと紹介をありがとうございます。
図書館とインターネットは情報の入手で欠かせないものです。私も、何とか患者のための図書館を慶應病院内に作りたいものだと考えています。
情報量が多くなって、図書の利用の仕方が大きく変わってきました。昔は、文献をコピーしてそれを自分の引き出しにとっておくことが大切だったのですが、むしろ最近はその情報が必要な時にその雑誌を図書館でコピーするというスタイルに変わりつつあります。それだけ図書館に頼ろうとしているわけです。
医療情報の場合、一番の問題は、情報の信頼性の評価です。私たちプロであれば、どの情報がいかがわしいとか、どれなら信頼できるかなど、それを見分ける術をもっていますが、一般の人にとっては情報はピラミッドでなく並列できている場合が多いと思います。その辺を私たちがいかにお手伝いするかがこれからは大切なのだと思います。
ちなみに、私の肝臓病教室では講演の最後に今月の推薦図書といって、よい本を推薦するようにしていますが、喜ばれているかともいます。
図書館でも是非このような優良図書の紹介機能を充実していただくとよいかと思います。
是非一度「患者の生き方」をお読みいただけたらと思います。私は、自分の本が売れるということよりも読まれることを願っていますので、その意味では図書館に入れていただけるとそれだけ読んでくださる方が増えてくださると期待するのです。。
投稿: 加藤眞三 | 2005.05.21 09:18
昨日の『金スマ』で、絵門ゆう子さんの追悼番組が放送されていました。4月3日に旅立たれたとのことです。司書の一人として、絵門さんが出版なさっていた本や、『朝日新聞』の連載記事「がんとゆっくり日記」に触れることで、たくさんのenergyをいただきました。
ご冥福をお祈りしたく存じます。
投稿: 管理人 | 2006.04.15 07:30