図書館と災害…図書館における災害対策関係資料(稿)
地球のあちこちが災害に見舞われ続けている。図書館の関係者も、新潟で、あるいは海外で災害からの復旧に追われている。ブログの世界でも、大勢の方が取り上げているのはご存知のとおりである。
そのような中で、災害にまだ見舞われていない図書館でも、いつ起こるかわからない災害にしっかり対応していくことが求められている。あるところでは避難訓練などの取り組みがあり、またあるところでは災害対策マニュアルの整備に追われていることであろう。
管理人が身を置く図書館でも、昨年(2004)に避難訓練を行い、災害対策マニュアルをまとめなければ…という動きになった。そこで、管理人は、「世界的にはどのような状況になっているのだろう」との疑問から、国際図書館連盟(IFLA)の運営するメーリングリストで図書館の災害対策に関する現状について質問してみた。
その結果、海外から大勢の方に貴重な時間を割いて情報を提供していただくことができた。1994年に大震災に見舞われたロサンジェルスにしばらく住んでいたことがあるという方からも、災害の経験を分かち合うというお考えの下、情報を寄せていただくことができた。大変ありがたいことである。
頂いた情報の中身としては、文献・リソースリスト(書誌)、文献・リソースそのもの、災害対策マニュアル--中には「テンプレート」、つまり自分の館の名前を付して若干手を加えればそのまま時間の災害対策マニュアルにできるものもある--、関連団体やインターネット情報源のサイト、など様々であった。
今回は、それらの情報を整理した上で若干日本発の情報も加味してこのサイトで紹介したい。但し、まだ整理の途上であるため、まだ足りないものがたくさんある。もしよろしければご助言、ご指摘賜れば幸いである。
草津町立図書館の中沢孝之さんが『みんなの図書館』333号(2005.1)に寄せた「2004年自然災害と図書館」という論考で、「図書館(あるいは図書館職員)が蒙った災害や事件、事故等を一箇所にまとめ、蓄積し、いつでも引き出せ、さらには分析をする図書館や研究機関があると、今後の災害の備えや復旧への対処法に応用が可能だ」と指摘しているが、まさにそのとおりである。さらに言えば、その中には災害関連情報も含まれるであろう。今回のこの記事がそのような積み重ねの一つになれば幸いである。
図書館における災害対策関係資料(稿)
1.文献
1-1.単行書
Be prepared : guidelines for small museums for writing a disaster preparedness plan / a Heritage Collections Council project undertaken by Soderlund Consulting Pty Ltd.
Canberra, ACT : Commonwealth Dept. of Communications, Information Technology and the Arts, 2000.
Disaster management for libraries and archives / edited by Graham Matthews and John Feather.
Aldershot, Hants ; Burlington, VT : Ashgate, 2003.
ISBN0 7546 0917 0
IFLA Principles for the Care and Handling of Library Material。「IFLA図書館資料の予防的保存対策の原則」として翻訳されている。
An ounce of prevention : integrated disaster planning for archives, libraries, and record centres / Wellheiser, Johanna G. -2nd ed.
Lanham, Md. : Scarecrow Press ; Toronto, Ont. : Canadian Archives Foundation, 2002.
ISBN 0810841762 (pbk. : alk. paper)
Preparing for the Worst, Planning for the Best: Protecting our Cultural Heritage from Disaster /Ed. by Nancy Gwinn and Johanna Wellheiser.
Muenchen: Saur, 2005, 192 p. (IFLA Publications; 111) ISBN 3-598-21842-7
Preservation Planning Program Resource Guides: Disaster Preparedness / Constance Brooks
Association of Research Libraries,1993
ISSN/ISBN: 0-918006-65-1
1-2.雑誌
Disaster Recovery Journal(要認証)
International Preservation Issues / by the International Federation of Library Associations and institutions (IFLA) Core Activity on Preservation and Conservation (PAC).
ISSN 1562-305X
2.書誌・文献目録
1.Disaster Planning for Libraries: Selected Resources / Stephen Henson and Mary M. Finley (California State University, Northridge,Oviatt Library)
2.Disaster Preparedness and Recovery: Selected Bibliography/ Southeastern Library Network(SOLINET)
3.Disaster Response: A Selected Annotated Bibliography (ALA Library Fact Sheet 10) / American Library Association
4.Resources for Disaster Prevention, Preparedness & Recovery / Office of Cultural Education, New York State
5.Useful Resources: Selected Resources on Disaster Management / IFLA Preservation and Conservation Section
3.災害対策マニュアル
1.Disaster Plan Manual/ Pennsylvania State University
2.Disaster Planning prevention, preparedness, response, recovery / UNESCO
3.Library Disaster Plan Template/ California Preservation Clearinghouse
4.Western New York Disaster Preparedness and Recovery Manual for Libraries and Archives/Western New York Library Resources Council
4.ウェブ情報源
4-1.国立図書館
a.米国議会図書館(Library of Congress)
"Preservation"というページには、同館の修復・保存担当者であるAnn Seibertさんによる'Emergency Preparedness for Library of Congress Collections'という記事や、'Emergency Preparedness'というマニュアルなど、有用な情報がたくさん収録されている。
b.National Preservation Office. (British LIbrary)
Disaster/Emergency Planningというページでは、災害対策マニュアルや書誌などが提供されている。
c.オーストラリア国立図書館(National Library of Australia)
"Disaster Planning for Libraries and Archives: Understanding the Essential Issues"のような職員による論文や、Collection Disaster Planのようなマニュアルが収録されている。
4-2.その他の図書館
a."Library Disaster Response Plan"
カリフォルニア大学図書館バークレー館の災害対策マニュアル。
b."Conservation Online"
アメリカ・カリフォルニア州にあるスタンフォード大学図書館の修復・保存部門が担当するプロジェクト。災害対策マニュアルや書誌・文献目録、研修プログラム、リンクなど保存に関する様々な情報が搭載されている。" Disaster preparedness and response"という資料は大変有用。
※上記"Conservation Online"サイトからは、様々な資料修復・保存関係団体サイトにリンクが張られている。その中からいくつか取り上げる。
i.BAP.net (Bay Area Preservation Network)
カリフォルニア地区の図書館等、資料修復・保存に関わる組織の連合体。"Disaster planning and response"というページに災害関連情報が掲載されている。
ii.Western Association for Art Conservation(WAAC)
アメリカ西部地区の資料修復・保存担当者による組織。意見やニュースの交換などを行っている。"WAAC newsletter"を発行している。その中には、'Seismic Disaster Planning: Preventive Measures Make a Difference'や'Conferences, Meetings, Lectures: Reducing Earthquake Risk to Collections--Museums, Libraries, Galleries & Laboratories'など、有用な情報が数多い。
4-3.諸団体
a.Northeast Document Conservation Center(NEDCC)
全米最大であり非営利で行われている、資料保存・修復の地域センター。修復支援や教育等のサービスを行っている。サイトには下記のリーフレットをはじめ、有用な資料が搭載されている。
- Disaster Planning
- Protection from loss: Water and fire damage, biological agents, theft and vandalism
- Worksheet for outlining a disaster plan
- Emergency Salvage of wet books and records
- Emergency Management Bibliography
b.Federal Emergency Management Agency (FEMA)
全米の危機管理を司る庁。"Library: virtual library and electric reading room"というページのPreparation & Preventionという項目に、様々な有用な資料がPDFで保管されている。
c. J. Paul Getty Trust (Conservation Institute)
アメリカ・ロサンゼルスにあり、資料修復等の研究・教育・出版活動・情報源提供等が行われている。
d.Heritage Emergency Task Force
米国議会図書館、米国公文書館、OCLC、後述のGETTY Institute等が参加する、資料保存関係者が集うタスクフォース。水没した資料等の救済についての情報等が掲載されている。
e.Public Safety and Emergency Preparedness Canada (PSEPC)
カナダでの危機管理を司る庁。 災害対応のための情報提供等が行われている。
f.M25 Disaster Management Working Group (M25 Consortium of Academic Libraries, UK)
イギリスの主要な大学図書館が加盟する、危機管理に関するワーキンググループ
g.IFLA Core Activity on Preservation and Conservation (PAC)
国際図書館連盟(IFLA)内の中核的活動の一つで、資料保存を任務とする。前述の"International Preservation Issues"の発行などを行う。この活動のアジア地区のセンターが国立国会図書館に置かれている。
h.The International Committee of the Blue Shield (ICBS)
国際的な、資料保存の取り組みを行う団体の連合体。IFLAとも連携を取り合って活動している。
5.日本発情報
5-1.雑誌論文
2004年 自然災害と図書館 (特集 図書館の自由と危機管理--三重県立図書館利用者データ盗難事件をめぐって) / 中沢 孝之
みんなの図書館. (通号 333) [2005.1]
地震 宮城県図書館(仙台市) 割れて落ちない金属板に変更--垂れ壁のガラス落下に驚いた発注者が採用した安全策 (特集 災害建築からの警鐘--安全設計にスタンダードはない いま一度、手がけた建物の点検を)
日経アーキテクチュア. (781) [2004.10.18]
地震災害と安全な図書館の課題 / 安井 覚みんなの図書館. (通号 326) [2004.6] 特集 図書館と災害・安全対策
図書館雑誌. 98(3) (通号 964) [2004.3]
大災害時における図書館の専門的役割 (特集 図書館と災害・安全対策) / 坂本 勇
図書館雑誌. 98(3) (通号 964) [2004.3]
公共建築の安全・安心を考える (特集 図書館と災害・安全対策) / 吉村 英祐
図書館雑誌. 98(3) (通号 964) [2004.3]
図書館施設・家具の地震防災 (特集 図書館と災害・安全対策) / 木野 修造
図書館雑誌. 98(3) (通号 964) [2004.3]
第15回保存フォーラム報告 災害に備える--図書館資料の防災と救済計画
国立国会図書館月報. (506) [2003.5]
図書館における災害対策 (特集 図書館の危機管理) / 坂本 勇
現代の図書館. 40(2) (通号 162)[2002.6]
資料紹介 BOOK 『図書館、文書館における災害対策』(シリーズ本を残す(7))サリー・ブキャナン著 / 竹内 秀樹
ネットワーク資料保存. (通号 55) [1999.03]
激甚災害の発生と図書館--震災から学んだもの (災害と図書館--阪神・淡路大震災から学んだこと《特集》) / 原田 安啓
図書館雑誌. 89(11) [1995.11]
阪神・淡路大震災に学ぶ (災害と図書館--阪神・淡路大震災から学んだこと《特集》) / 村尾 成文
図書館雑誌. 89(11) [1995.11]
図書館書架の被害状況と今後の対策--電動式移動棚を中心に (災害と図書館--阪神・淡路大震災から学んだこと《特集》) / 原 義和
図書館雑誌. 89(11) [1995.11]
図書館家具の地震対策と今後の取り組み (災害と図書館--阪神・淡路大震災から学んだこと《特集》) / 谷所 真一
図書館雑誌. 89(11) [1995.11]
システムの地震対策について--地震からいかにしてシステムを守るか (災害と図書館--阪神・淡路大震災から学んだこと《特集》) / 日本電気K.K.公共システム事業部公共図書館プロジェクト
図書館雑誌. 89(11) [1995.11]
災害時に学校図書館を守るものは何か--兵庫県SLAからの報告 (図書館の安全・防災対策《特集》) / 田中 勝
学校図書館. (通号 535) [1995.05]
5-2.図書
図書館,文書館における災害対策 / サリー・ブキャナン[他]. -- 日本図書館協会, 1998.12. -- (シリーズ本を残す ; 7)
図書館/文書館の水災害を受けた資料の救助法 / ピーター・ウォーターズ[他]. -- 〔東京修復保存センター〕, 〔1990〕
阪神・淡路大震災に学ぶ / 鬼頭当子. -- MK図書館研究所, 1995.7
5-3.関連団体・図書館
3.防災専門図書館
6.謝辞
上記の情報のうち、海外発については下記の方々から頂いたものに基づいている。心からお礼申し上げる。
- George Abbott (Syracuse University Library, USA)
- Margaret Baffour-Awuah (National Library Service, Botswana)
- Walter Cybulski (National Library of Medicine, USA)
- Else Delaunay(IFLA Newspapers Section)
- Gabriela Grossenbacher(National Library of Switzerland)
- Nancy E. Gwinn (Smithsonian Institution Libraries, USA)
- Sarah-Jane Jenner (British Library, United Kingdom)
- Karen Mason (New York Public Library, USA)
- Sueanne E. Morse (Library of Congress, USA)
- Claudia Popescu (Public Library George Baritiu Brasov, ROMANIA)
- Shamprasad M. Pujar (Indira Gandhi Institute of Development Research,India)
- Mary Reinsch Sackett (The Getty Research Institute, USA)
- Arsenio Jose Sanchez Hernamperez (National Library of Spain)
- Dr. Shawky Salem (Alexandria University, Egypt)
- Birgit Schneider(Die Deutsche Bibliothek, Deutsche B?cherei Leipzig, Germany)
- Kaisa Sinikara (UNIVERSITY OF HELSINKI, FINLAND)
- Sally Sinn (Council on Library and Information Resources, USA)
- Sydnae Steinhart (Bowdoin College Library, USA)
- MarieTherese Varlamoff (Director of IFLA PAC)
- Alison Walker (National Preservation Office, British Library, United Kingdom)
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こんにちは。トラックバックありがとうございました。
リストの取りまとめお疲れ様です。膨大な情報量にただただ感服しております。
ところで、“1-1.単行書”中の「IFLA図書館資料の予防的保存対策の原則」の翻訳全文については、“5-3.関連団体・図書館”に挙げられているhttp://www.jla.or.jp/hozon/">「日本図書館協会資料保存委員会」 内 http://www.jla.or.jp/hozon/ifla98.html">「IFLA図書館資料の予防的保存対策」の目次からも参照できるようです。
日図協から『IFLA図書館資料の予防的保存対策の原則(シリーズ本を残す 9)』としても出版されているそうなので、日図協会員館でこの冊子の配布を受けているところはそちらを見てもらうのが早いかと思います。
投稿: MIZUKI | 2005.02.06 17:26
コメントありがとうございました。確かに、「IFLA図書館資料の予防的保存対策の原則」はおっしゃったように整理するのが使いやすそうですね。他の方からもいろいろとアドバイスがあって、大変ありがたいです。また何か気が付いたら教えてください。
投稿: 高橋隆一郎 | 2005.02.08 22:00
『図書館屋の雑記帳』中「災害対策マニュアル」で、マニュアルについてとても大切なことが指摘されていた。少々引用させていただく。
・法律や利用者・職員の生命に関する行動指針を明記したマニュアルは必須と考える。
・公共図書館では雇用形態、命令系統が多様であり、また個々の職員の意識レベルも様々である。ここにはマニュアルの存在が必要な場合もある。
・マニュアルの限界は特にサービス分野や運営分野では顕著である。ただこれらの分野であっても、限界を認識しマニュアルの範疇を超えた発想ができる人材が存在する場合にはマニュアルも有効である。
管理人も、図書館で災害対策を考えるとき、これらのことを熟慮する必要があると考えている。
投稿: 管理人 | 2006.08.15 17:28
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投稿: AprilKIDD31 | 2011.08.06 14:03