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2005.02.06

図書館業務に携わる者の心理についての一考察(メモ)

 ウェブログの世界では旧聞に属してしまうかもしれないが、『笛と私と図書館と』というウェブログの記事「図書館員は図書館好きじゃない?」で、baronagonさんが真摯に「仕事ってこんなもの?」と問いかけをしておられた。それに対して、多数のコメントが寄せられ、他の図書館関係ウェブログでも、数々の記事が書き込まれた。

 司書としての自らのことを考えつつ、あるいはこちらの会の人たちのお話を伺っていたときのことを振り返りつつ、管理人は少々暗澹としながらこのやり取りを読んでいた。今回は、少々徒然になってしまうかもしれないが、「図書館業務に携わる者の心理についての一考察」と題して、図書館に身を置く者のモチベーションについて考えてみたい。このことに付いて考えることが、図書館に関わる人々の精神的健康について考え、ひいては「図書館をよくする」ことにも通じるのだと考えている。

 いくら仕事に対する誇りを持っていても、その組織に関わる要因…人員配置・予算配分等の業務環境…が変化しないことによる閉塞感により、「もう仕事は増えないでほしい」という心理に追い込まれる場合があること。人事のあり方…図書館の外に出たら、図書館に戻れる保障はないという状況があること。親機関との関係。利用者のニーズと、労働力など館側の体制とのアンバランスの問題。当人の思いや熱意が図書館全体の中で報われるとは限らないこと。これらのことにもかかわらず、なおかつ図書館に関わる人が図書館の仕事の意義や面白さを理解しているか否かが重要な要素になっていること。仕事以外の「好奇心のアンテナ」をどれだけ腐らせずに保ち続け、磨き続けることが出来るかが鍵になること。

 このようなことをつらつらと思いながら、まず、一冊の本のことに思い至った。田尾雅夫・久保真一『バーンアウトの理論と実践』(誠信書房,1996)。同書が引用したマスラックの定義によると、バーンアウト(燃え尽き症候群)とは、「極度の身体疲労と感情の枯渇を示す症候群」である。看護師、医師、福祉従事者、教師等人間を相手にする職業の従事者に多い病気だとのことである。図書館の仕事も利用者を相手にする仕事であり、他人事ではないと思われる。もっとも、雑誌記事索引やNDL-OPAC等のデータベースを引いてもあまり図書館従事者の燃え尽き症候群の文献は見当たらないが、海外だとJanette S. Caputo "Stress and Burnout in Library Service"(Oryx Press,1991)が発表されている。海外の動きや国内他対人サービス業種での議論も参考になるだろう。管理人が身を置く大学図書館の世界では、研修の中に精神衛生の問題も出てくるが、大学に限らずいろいろな場面で考えていくべき問題であると考えている。

 二点目に思い至ったのが、管理人が学生のときに受けた英文学の講義の中で教授から出された「WorkとLaborを訳し分けてみなさい」という課題だった。二十歳そこそこの若造にはとてもわからなかったのであるが、人間を40年以上やってきた今になって、20年以上前の問いかけに対して回答らしきものが出せたような気がする。『研究社新英和中辞典』四訂版の訳語を使って示してみたい。今にして思えば、その教授はこのようなやり方で私たちに「仕事」の持つ2つの面を教えてくださったのである。

  • work…作品
  • labor…勤労・労働・骨折り

 そして、最後に思い至り、本棚から取り出して今まさに読み返し始めたのが、『ず・ぼん』7号に掲載された次のレポートである。

日信葉子 (ヒノブ ヨウコ)「「専門」非常勤制度という矛盾の中で (特集 図書館での働き方を考える--非常勤の未来)」
『ず・ぼん』(通号 7) [2001.8]pp.4~15

 当時東京の区立図書館で図書館非常勤職員として勤務していた日信さんによるこのレポートでは、図書館の非常勤職員制度が待遇等の勤務条件・仕事の進め方や専任職員との関わり等多方面から分析・掘り下げられており、働きにくさが生まれてしまう要因についても論考が加えられている。ただ、日信さんの発言はそれだけでなく、最後には以下のような発言がある。

…結局使い捨てられてしまう現在の日本の公共図書館という世界にそれでも身を置き続けようとするのはなぜなのか?それはもっと多くの人に図書館を活用してほしいからです。そのために自分の手でやってみたいことがたくさんあるからです。せっかく身近にある公共の財産なのに、上手に活用している人がまだまだ少なくて、納税者たる市民としても、民主主義社会の構成員たる市民としても、なんてもったいないのだろうと歯がゆく思うからです。

 ところで、現在、東京の公共図書館の世界では委託が広範囲に採用されている。委託された図書館の業務に従事する職員の低賃金等、様々な問題が指摘されているのはご存知のとおりであり、最近でも2月2日付『朝日新聞』朝刊「どうなる公立図書館」の記事の中で日本図書館協会常務理事大橋直人氏が「民間委託のところは低賃金労働が多く、継続して働くのは難しい。図書館員としての専門性が身につくのか」とコメントしている。一方で、このサイトの「『ディスカバー図書館』報告書が出版されました」で触れた片山知事のいる鳥取県での図書館政策は特筆すべきであろう。上記日信レポートに現れたような真摯な思いを持つ司書が活き活きと図書館の仕事に携われるようにすることが、ひいては、市民の情報ニーズにとっても重要なことだということは論を待たないであろう。そのために、図書館員・図書館・利用者・そして図書館司書養成機関が英知を集めて取り組むことが、今ほど必要なときはないのではないだろうか。

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