Google検索




  • ウェブ全体から検索
    このサイトの中を検索

カウンター


  • (2004.10.26以来)

« 2005年3月 | トップページ | 2005年5月 »

2005.04.25

山中湖情報創造館「4つの視点」のこと:山中湖情報創造館副館長 丸山高弘さんへ

山中湖情報創造館「4つの視点」のこと
--山中湖情報創造館副館長 丸山高弘さんへ--

                    (管理人注:2005/05/08著者からの申し出により加筆)

池沢昇(東京の図書館をもっとよくする会事務局長)


 ご意見をいただきありがとうございます。私の書いたのは、2月2日の朝日新聞の報じるところの山中湖情報創造館への疑問であり、同じく小林同館長が述べたとする一文について思うことを即興的に述べたものです。山中湖情報創造館の実際とは異なるものであろうことも承知しています。朝日新聞が流した「民営化で図書館はばら色」を切り崩すには、虚像であろうが、記事が描いた像を対象にせざるをえません。ご容赦ください。
 ふと、朝日新聞を2/26夕刊を見ていたら、「群樹雑倒」と言う文字が目に入り、びっくりしました。これは、評論家の肩書きの方が書いたコラム「寄席」に出てくるものです。「群集雑鬧」(読みは「クンジュザットウ」)の誤りです。これなどは無知をさらけだしただけであり、受験生が間違えた答案を書く程度の害ですむので、大したことではないのですが。とはいえ、「講談の言語感覚を楽しむのも一興かもしれない」として「群樹雑倒」を取り上げたのですから、念の入ったことだと感心します。朝日新聞には頭にきているので、余計なことまで言ってしまいます。
 諸事に取り紛れて、以降1ヵ月以上過ぎての記述となります。その間、丸山さんに勧められたホームページ「山中湖情報創造館を深~く知るための4つの視点」なども見せていただきました。お寄せいただいたご意見も含めて、思い浮かんだこと、3点を私見として述べたいと思います。1点は住民の図書館運営(経営)の参加の問題です。2点目は賃金の問題です。3点目として、西部劇の保安官や映画「七人の侍」を引用しての宣伝を行っていますので、そのことについて述べます。

住民の図書館運営(経営)の参加
 「誰もが会員となり運営に参加できるNPO法人が指定管理者制度で図書館経営に当たる場合、むしろその地域の誰もが図書館づくりに関わることができる」と丸山さんは述べられています。山中湖情報創造館「4つの視点」にも、「(会費を払って)地域住民は会員になることで(中略)NPO法人の運営に直接かかわることができ、ひいてはその地域における「私たちの施設」として、管理運営することができる」と紹介しています。
 つまり、山中湖情報創造館の指定管理者となっているNPO「地域資料デジタル化研究会」に会費を払って会員となったものは、図書館の管理運営に参加できるが、そうでない山中湖村民は図書館の管理運営にかかわれないかのように受け止められます。また会員が図書館の管理運営のどの部分にかかわるのか、NPOの総会での発言権と議決権についての記述しかないので、それ以外にもあるのかが分かりません。
 当然山中湖村の全村民がNPOに加入すべきという理想的な姿が考えられているようです。そうしないと、村民が図書館の管理運営について意見を述べる権利を失います。それを避けるために、余りに現実から離れた、村民全員のNPO加入を追求せざるを得なくなります。そのことの追求の是非はおいても、村に払う税金のほかに、図書館のための「人頭税」を地域資料デジタル化研究会に払わされるように、私には見えます。
 また、このNPOの構成メンバーは山中湖村民だけで構成されているわけではありません。会員である他の地域の住民が、山中湖村の非会員の住民より図書館に対する権利を持つことになります。
 これらの矛盾は、「4つの視点」の4番目の視点として挙げた「プロとしてNPOで働く」、「4つの視点」のおまけ「映画『七人の侍』とNPO」にも一貫して流れているように思います。後述します。

生活できる給料は当然払うべきであるということ
 私がもっとも気にかかるのは、指定管理者や受託会社の職員(社員)の給料です。指定管理者にNPOがなることによって「公費負担を大幅に削減することができる」と「4つの視点」は述べています。この大幅削減の対象は人件費であり、指定管理者や受託会社の下で図書館に働く人々の給料をあまりに低い状態に押し下げます。例えば、東京の図書館で働く受託会社の社員のほとんどがパート社員と呼ばれるアルバイトです。時給800円程度でスーパーのパートと同じか若干低くなります。図書館に責任者として配置されるチーフであっても時給1000円と言われています。週40時間の勤務でチーフでも月16万円程度にしかならないのです。
 さて、山中湖情報創造館ではスタッフの平均年収は180万円程度です。平均月収は15万円です。6時間勤務なので、時間当たり賃金を比較すると受託会社のチーフよりも高い賃金になっています。それでも、他に収入がなければ1人が生きるのがやっとではないでしょうか。丸山さんは「最終的に、生活の糧を得る仕事を何時間行うかは、個人の裁量にまかせております」と述べられています。「4つの視点」は、番外として「3×8→4×6」というライフスタイルを提案されています。労働時間、睡眠時間、生活時間各8時間の割り振りを、社会参加時間を加えて各6時間に割り振り、社会参加時間の6時間をボランティア活動やリカレント教育や収入が不足する場合は副業も可能だとしています。6時間をボランティアやリカレント教育にまわせる人は社会の中でごく少数で、多くの人は生活するためにその6時間を働かざるをえないはずです。山中湖情報創造館での拘束時間は、30分の休憩時間と通勤の往復を30分として、それを含めると少なくとも7時間ですから、社会参加時間は5時間になります。副業として働ける時間は最大4時間でしょう。山中湖情報創造館の時間当たり平均単価は1250円ですので、同じ賃金を獲得できたとしても、月20日働いて10万円です。1日10時間働いても、一ヶ月の総収入は25万円です。一人の力で一家を支えるのは困難です。
 私がこのことを強く述べるのは、労働に対する正当な賃金が支払われない不公正に対する怒りとともに、低賃金労働者の大量創出によって日本人が自滅の道をたどっているという危惧を感じるからです。2人から3人の子どもを生み育てられる最低限の生活ができる賃金が与えられなければ、国民は次世代の国民を再生産していくことはできません。そして、いま眼前に国民を再生産できない状態が起きています。
 以上は、指定管理者である一団体には選択の余地はないことです。しかしながら、「4つの視点」は「なにより優秀なスタッフを雇用するために、きちんとした雇用主であるあるための努力もしていこうと考えています」と述べ、給与待遇、有給休暇、出産・育児休暇、社会保険、厚生年金などを列挙します。このことがどこまで実施されているか分かりませんが、述べたことについては実施すべきです。

私は「西部劇の保安官」みたいにはなりたくない
 「4つの視点」の4点目は「プロとしてNPOで働く」で、「私たちは『西部劇に出てくる保安官』みたいな感じがしています」と述べています。続けて、住人の有志が街の治安を守るために、「相応のスキルを持った人」を街の保安官として、「相応の報酬」を用意して迎えるとあります。マッカーシズム(赤狩り)の所産でもある「正義の味方の保安官」は、50年代の西部劇で終わります。70年代以降は、実態を反映して次のように描かれ方に変わります。街の有力者たちが、自分たちの生命財産を保護するために、自分たちが金を出し合い保安官を雇って街の治安を維持させます。住人の大多数の利害と有志(有力者)とが対立したとき、保安官がどちらに立つかは明白です。十分にスキルを発揮して住人を殺したり牢屋にぶち込んだりします。私は西部劇の保安官みたいなことをしたくはありません。
 「4つの視点」は、西部の街の住人をNPO会員に、住人有志をNPO役員に、保安官をNPO職員になぞらえて、次の図式を提示します。《住人=会員、有志=役員、保安官=有給職員》
 この図式は誤りです。なぜなら、西部の街の住人と有志の間には同じ地域に生活している以外の関係はありません。一方、NPOの会員と役員は同じ組織の一員であり、それぞれの権利義務も定款等により明確に規定されています。それを無視して、《住人≠有志=保安官》を《会員=役員=職員》に対応するかのように提示しています。この図式を正しい対応関係に置き換えれば、①《住人=住人代表=保安官》《会員=役員=職員》あるいは②《住人≠有志=保安官》《住民≠役員=職員》のいずれかになります。
 さらにひとつ、述べざるを得ないことがあります。それは、西部劇の保安官の給料は純粋に雇用者(町の有力者)の財布から出るのに、山中湖情報創造館職員の給料は、村が指定管理者「地域資料デジタル化研究会」に支払う税金から出ていると言うことです。それにも。かかわらず、マネーローンダリングされて税金の痕跡も見当たりません。

「七人の侍」を復元する
 「4つの視点」と付属する「おまけ」は、黒澤明監督の50年代の映画「七人の侍」を大きく取り上げ、それを自らに引き寄せて紹介します。「侍を捜していた村人たちがNPOなのである」「七人の侍たちは有給のスタッフ」「山賊を撃退するために参加した村人たちは…(中略)…ボランティア」など、恐るべき断定を行っています。あまりに牽強付会に過ぎる引用は「七人の侍」に気の毒であり、そのことの弁明も含め述べます。重要な誤りだけを指摘します。

〔村人はNPOではない〕
 まず、野武士が来年の収穫時期に村を襲う話をしているのを、農民が聞いたとありますが、そんな悠長な話ではありません。間もなく熟れる麦の収穫を待って襲うのです。晩春から初夏にかけて、町中の麦が実り始めようとする時から山奥の村が麦を取り入れるまでです。およそ1ヶ月あるなしです。だから、村人は時間と争って防備を整えたのです。
 野武士の襲撃を知って、役員会としての村の寄り合いが持たれるとあります。寄り合いには、女子どもも参加し、女も平等に発言しています。役員会ではありません。村としての行動決定を全体が集まって行っています。村人は、村の自治にかかわる決定をし、それに基づき行動しています。村落共同体をNPOとは言いません。

〔七人の侍は「有給スタッフ」ではなく、「無給スタッフ」だ〕
 次に、より重要な誤りを指摘します。
「4つの視点」は、繰り返し、パートタイムであっても給与を保障するのはNPOの義務とのべています。このことは正しいと思います。しかし、七人の侍を「有給のスタッフ」、「村はなけなしの食料と謝金を用意した」と繰り返し述べていますが、誤りです。七人の侍は無給であり、腹いっぱい食べられるだけを条件に、野武士との戦いを引き受けたのです。
 野武士の襲来を知った村は全体集会を開きます。結論が出ず長老に相談します。長老は野武士との戦いを支持し、無給でも来る、腹の減った侍を探すように指示します。4人の村人が侍を雇う任務を帯びて町に出ますが、ようやくのことで勘兵衛(志村喬)を見出します。勘兵衛は、腹いっぱい食べられるだけでは侍は集められないと、農民の必死の懇願を断ります。しかし、農民の苦しみを見捨てることができず、危険な仕事を無償で引き受けることを決断します。恩賞にも知行にも与らない仕事だと、勘兵衛は苦しい説明をしながら、なんとか侍を集めます。
 東南アジアを大津波が襲った2週間後のテレビが現地の状況を写していました。テレビにはアメリカ人女性が登場していました。その人は休暇で遊びに来ていて津波に遭遇して、そのままボランティアとして救援活動に残ったのです。この時、このアメリカ人女性と同じ決断をした人は多くいたのではないかと思います。この人たちは、状況の違いはあれ事に臨んで、勘兵衛と同じ決断をしたように思います。  

〔戦闘に参加した村人はボランティアではない〕
 村を襲う野武士とは、農民が一国一城の主を夢見て下級兵士となったものの、敗走してホームレスとなった武装集団です。当然に戦闘には熟達していて農民に勝ち目はありません。負ければ村は皆殺しになります。それでも村人は野武士との戦闘を決意し、そのために侍を雇って、戦いに臨んだのです。戦うのは村人全員であり、自分の足で立って歩くことができる男は全員武器を手に持っています。村民皆兵です。今日言うところのボランティアではありませんし、志願兵や義勇兵でもありません。村が作った正規軍です。とは言っても、常備軍でもなければ、訓練された軍隊でもありません。頼りないことおびただしくとも正規軍です。  

 指摘すべきことがまだありますが保留し、ここまでとします。かなり厳しい言い方をしたことにはお詫びします。しかし、西部劇の保安官や「七人の侍」にかかわる記述はあまりにひどいのではないかと思います。

最後に
 地域資料デジタル化研究会は、その名の通り地域資料デジタル化の研究・実践を掲げる団体で、図書館運営の受任を想定して作られた団体ではありません。(同会理事長小林是綱氏が「山中湖村から図書館運営の依頼がきたということは、本会の定款(3)にあるミッションの趣旨と一致する」(「図書館雑誌」4月号)と述べているのは事実誤認であろう。同論文が紹介する定款を見れば分かるはずなので、説明はしない)山中湖村の図書館運営にあたって「(会費を払って)地域住民は会員になることで(中略)NPO法人の運営に直接かかわることができ、ひいてはその地域における「私たちの施設」として、管理運営することができる」という命題を導入します。実態は《山中湖村民=山中湖村長=地域資料デジタル化研究会=山中湖情報創造館職員》であるものを、《山中湖村民=地域資料デジタル化研究会=山中湖情報創造館職員》に見せたかったのです。そのために無理を重ねたように思えます。その無理をやめても、実績があれば通用するはずです。
 丸山さんが書かれた中に分からないことが1点あります。「『地域の皆さんから、「私たちはこんな図書館がほしい!!」と思う気持ち』を持ってもらうことであり、行政はそうした市民活動を支援することであったり、そうした意見を現在の図書館づくりに反映させたりすることではないでしょうか。これは『図書館の自由』に関する政治介入ではありません」とあります。私には意味がつかみかねます。「『図書館の自由』に関する政治介入」と言うようなやり取りがあったのでしょうか。私が書いたものの中にはそのように取れる箇所はなかったはずです。狐につままれたような思いです。具体的に示せるものがあるならお教えください。

2005.04.16

「指定管理者制度」学習会

 23区の図書館委託の流れも、一部窓口業務委託から実質的には「指定管理者」に近いものに変わってきています。そして全国的にも指定管理者は広がろうとしている一方、指定管理者ではおこなわないという自治体も出ています。どういう動きがすすんでいるのか、どのように対応するか、学習し、議論しましょう!

1.講 師  大橋直人氏
2.日 時  4月23日(土) 19:00~21:00
        受付開始 18:40より
3.会 場  文京区男女平等センター
        最寄り駅:本郷3丁目駅(地下鉄丸ノ内線・大江戸線)
4.参加費  500円(資料代を含む)
5.参考資料 
大橋直人「指定管理者制度とこれからの図書館運営のあり方」
『図書館雑誌』Vol.98 No.12号(2004年12月)
上記資料は、転載許可済です。

主 催:東京の図書館をもっとよくする会
連絡先:℡042-765-3382

第10回 東京の図書館をもっとよくする会総会のお知らせ

 下記の通り総会を開催する予定です。詳細が決まりましたら改めてお知らせいたします。今日の問題にかみ合ったシンポジウムなど予定していますので、万障お繰り合わせの上ご参加ください。

                            記
       日時:2005年6月11日(土)午後
       会場:日本図書館協会
          (東京メトロ茅場町駅下車)
       問合せ先:池沢 042-765-3382
           (メッセージを留守番電話に残してください)  

2005.04.10

[資料紹介]『図書館雑誌』特集「これからの公立図書館の行方」

 管理人が帰宅すると、日本図書館協会から郵便物が届いていた。中身は最新号(v.99,no.4)の『図書館雑誌』である。今回の特集は標記のとおり「これからの公立図書館の行方」。副題に「指定管理者制度導入をめぐって」とある。現在大変な問題になっている事柄であり、早速論題だけでも読者の皆様にご紹介したい。


[特集]これからの公立図書館の行方-指定管理者制度導入をめぐって
特集にあたって…西野一夫/222
公立図書館の法的環境の変化と図書館の未来…山口源治郎/224
堺市立図書館の指定管理者制度導入構想をめぐって…竹田芳則/228
山中湖情報創造館における行政とNPOの協働-全国初の指定管理者…小林是綱/230
PFI手法から見た図書館への指定管理者制度導入-サービスの質を評価する仕組みを図書館の指定管理者制度に導入…熊谷弘志/234

 同誌編集長である西野一夫氏(川崎市立中原図書館)の概説や、東京学芸大学教員(図書館学)の山口源治郎氏による論考に続いて、それぞれのお立場から指定管理者制度についての発言が寄せられている。ちなみに竹田芳則氏は堺市立中央図書館所属であり、小林是綱氏は特定非営利活動法人地域資料デジタル化研究会の理事長である。また最後の熊谷弘志氏はKPMGビジネスアシュアランス(株)パブリックセクター事業部の責任者で、慶応義塾大学でも教えていらっしゃるという。

 前段でも述べたが、現在図書館は大きな曲がり角にあり、指定管理者制度も大変大きな事案として取り扱われている。私たちの暮らしにとって図書館とは何なのか、そしてその図書館がよって立つ制度はどうあるべきなのか、しっかり考えていく必要がある。山口氏は上記論考の最後を「…私たちの側の豊かな図書館像が求められているということであろう」と締めくくっているが、読者の皆様も早速今月号の『図書館雑誌』を手にしていただき、意見交換・交流などを進めていただければ、と考えている。

参考URL
KPMGビジネスアシュアランス(株) http://www.kpmg.or.jp/profile/ba/

« 2005年3月 | トップページ | 2005年5月 »

無料ブログはココログ