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2005.10.09

[資料紹介]ジョナサン・コゾルの2冊の本 

 色々とドタバタしていた間に、おかげさまでカウンターが3万を超えていました。振り返ってみると、このサイトを開設してからそろそろ1年が経とうとしています。当サイトをお訪ねくださいました皆様に御礼申し上げますとともに、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

 この1年、色々なことがありましたが、中でも戦慄を味合わされたものは様々な災害です。新潟の地震、スマトラ等の津波、そして8月に発生した合衆国南部のハリケーン「カトリーナ」等による水害。何よりもまず、犠牲になった方々に哀悼の意を表します。

 考えるに、ある意味では、災害が襲い掛かることにより、それぞれの社会の有様が抉り出されたということが言えるのかもしれません。「カトリーナ」がもたらした傷はまだ癒えてはいないようですが、「人種差別」が深くこの災害には関わっているのではないかとの疑念を持つ人々のことが様々な形で伝えられてきました。そのことをも含めて、日本のブログなどでも多くの方がこの災害のことを取り上げておられます。少しだけタイトルを挙げてみましょう。


「カトリーナのもたらした災禍」(『内田樹の研究室』)
「正直なところ、イラクにいたほうがいい。」(『ブログ加藤眞三 医療の維新をより良い方向に』) 
「カトリーナ被害からブッシュ叩きの世相について」(『極東ブログ』) 
「ハリケーン(カトリーナ)は天災か1?」(『コラムの王様』)
「ハリケーン・カトリーナ」(『Wikipedia』)

 ここまで書きながら、アメリカの作家ジョナサン・コゾル氏の著作2冊を思い出し、棚から取り出してみました。一冊は『非識字社会アメリカ』、もう一冊は『アメリカの人種隔離の現在』。今回はこの2冊を取り上げます。

 その前に、コゾル氏について少し述べておきましょう。コゾル氏はボス トンに生まれ、1958年にハーバード大学を卒業しました。1964年よりボストンのサウスエンド地区--観光案内な どでは、治安の観点から「オモシロ半分で近づかないこと」等と記されています--に住んで黒人教育に携われてこら れました。御自身が赴任したボストン公立学校で黒人への差別教育が公然とまかり通っている現状に直面し、 『死を急ぐ幼き魂』(1968年早川書房刊)という本を「告発の書」として発表します。その他にも、たとえば、『自分の学校をつくろう』( 1987年晶文社刊。貧困が理由で学校に通うことが出来ない子 どのためのフリースクールを立ち上げたことに基づいたレポート)や 『先生とは』(1986年晶文社刊。教えるこ との根源と教師の役割とを問い直したもの)等の著作を発表し続けています。

 それでは、1冊目の『非識字社会アメリカ』からご紹介しましょう。まずは書誌事項からご覧下さい。


非識字社会アメリカ / ジョナサン・コゾル著 ; 脇浜義明訳. --
東京 : 明石書店, 1997.4
434p ; 20cm. -- (世界人権問題叢書 ; 16)
ISBN: 4750309184
目次:第1部 目に見えないマイノリティ―読み書き不能のアメリカの危機増大(こんな字が読めないのか、は国民の三分の一 言い逃れと数字ゲーム ほか) / 第2部 読み書きのできないアメリカを動かすために(無力感という神話―何をなすべきか 火種起こし―読み書きのできないアメリカを立ち上がらせる計画 ほか) / 第3部 実用を越えて(テクノロジー憑依 大学の責務 ほか)

 この資料は、合衆国内の非識字問題の存在を指摘し、教育・行政等での緊急の取り組みの必要性を 訴えたものです。本書執筆時(原書"Illiterate America"は1985年発表)の著者の経験として、「文章が読めない」ということでその人々が社会の中で幸せに生活することが不可能となり、ひいてはその人々が民主主義社会の崩壊を招くということが余すところなく描かれています。

 続いて、2冊目の『アメリカの人種隔離の現在』をご紹介します。


アメリカの人種隔離の現在(いま) : ニューヨーク・ブロンクスの子どもたち
/ ジョナサン・コゾル著 ; 脇浜義明訳. --
東京 : 明石書店, 1999.8
379p ; 20cm. -- (世界人権問題叢書 ; 32)
原題:"Amazing grace : the lives of children and the conscience of a nation"(1995年刊行)
目次:第1章 南ブロンクス、夏 / 第2章 閉ざされた生活 / 第3章 絶望の中のクリスマス
第4章 だれが子どもを殺すのか / 第5章 ゲットーの学校、ゲットーの病院
第6章 イエスは泣かれた―アメイジング・グレイス

 この資料は、ニューヨーク、 南ブロンクス地区--ニューヨーク最貧困地区--からのレポートです。病院や警察など地域を支える行政サービスが市当局の予算削減によって悪化し、その地域の住民が「暮らしにくさ」に直面している状況が描き出されています。例えば、著者は、市の財政削減で建物の点検担当の行政職員が削減され、危険な地区を避けてもいいという労働規約をたてに壊れたエレベーターを点検しなかったことが、ある黒人少年の死を招いたのではないかという一女性の話を紹介し、この女性の「新聞が市の予算削減を書くとき、焼死した子どもや事故死した子どもの写真もいっしょに載せればいい」等のコメントも紹介しています。 また、著者は、正規の免許状をもたない教員が多数をしめる学校の存在や、生活環境の悪さが原因で心身の病をかかえている子どもたちの多さ、学校の建物自体の環境汚染問題も指摘しています。ちなみに原題"Amazing Grace"は、讃美歌第2編 167番「我をも救いし」の英語版タイトルで「驚くべき恩寵」の意味です。Judy Collinsの歌でご存知の方も多いことでしょう。

 この2冊のコゾル氏の本にこめられた、人々が幸せに生きるには問題を多く含んでいる社会へに向けられた怒りから、私たちも汲み取らなければならないものが数多くあるのだと思います。ただ、この記事を書いている途中に見つけたウェブページ「『カトリーナ』被災者救援でネットが活躍」(Wired News, 2005年9月1日)には救われる想いがしました。人間にとっての情報の重要性、インターネットの持つパワー、そして危急の際に立ち上がった方々の思いを再確認させていただきました。

 最後にもう一言書いておきたいことがあります。それは、自然災害は対岸のものではないのだということです。東京でも9月4日晩の豪雨災害…「想定外」の降水量…により23区に被害がもたらされ、練馬区立南大泉図書館がいまだに予約受け取り窓口以外の業務を再開できない状態であることはご存知のとおりです。

    http://www.lib.nerima.tokyo.jp/library/minami.html

 災害、それはいつ襲ってくるかわからないものです。襲われたとき、どうするのか。いや、「襲われたとき」では間に合わないのであり、普段の社会の中でどのような営みをしていくのかを考えること。その中で、私たちの生活にとって情報の持つ役割、そして図書館の持つ役割は何なのかを振り返り、行動していくこと。それらのことを私たちは努々忘れてはならないのではないでしょうか。

(追記)
 アップする直前、次の"American Libraries"(アメリカ図書館協会機関誌)掲載記事に接した。ニューオーリンズ公共図書館職員のレイオフにより、同図書館の活動が停止したという記事である。ロイターが10月5日に、ニューオーリンズ市が職員のレイオフを発表したことを伝えていたが(「米ニューオーリンズ、財政難で市職員3000人をレイオフへ」)、図書館にもその影響が現れたということである。

"New Orleans Public Library Services Terminated." American Library Association. 2005.
http://www.ala.org/ala/alonline/currentnews/newsarchive/2005abc/october2005ab/nopllayoff.htm (Accessed 09 Oct, 2005)

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