「23区図書館業務委託アンケート」分析と評価(概要)
東京の図書館をもっとよくする会
Ⅰ 「分析と評価(概要)」発表に当たって
1.はじめに
「23区図書館業務委託アンケート」は、図書館カウンター等の委託が東京23区の大勢となりつつある状況の下、図書館行政の責任者が、委託についてどのような認識を持っているかを把握するために実施した。
「行政の透明性」が言われる時代において、市民の求めに応じて情報を開示するという当然のことが、「民主主義の砦」の責任者にどこまで浸透しているのか、このことにも私たちは強い関心を持っている。市民運動団体が、23区図書館行政責任者に一斉にアンケートを行い、回答を求めるということは今までなかったと思う。23区の中央図書館長が「行政の透明性」にどのような見識を持っているか、このアンケートに現れるはずである。
回答者である中央図書館長は、図書館行政の責任者として行政組織に位置づけられる。図書館行政の責任者である以上、たとえ委託の実態に疑問を感じていても、その責任を追及されるような回答をおこなう事はできない。そのことが、回答の〈限界〉であり、その集合が〈危険性〉を生み出すことになる。
私たちは、以上のことも踏まえて、回答が触れない部分、回答には表れない暗黒 (ブラックホール)に光を当てて分析評価し、「図書館業務委託」の実体を明るみに出したい。
アンケート回答はすでに公表しているので、この「「分析と評価」(概要)」を、「分析と評価」全体にさきがけて公表する。できるだけ、論議・検討を重ねてよりよいものを作りたいので、感想・意見をお寄せいただきたい
「分析と評価」全体の発表の際には、整合性を図る上で異動が生じることをあらかじめ、お断りする。また、感想や意見を受け止めて、主張の追加や分かりやすい表現にするなどもしてゆきたいと考えているので、そこでの変化もある。しかし、基本的な主張が変わることはない。
最後に、このアンケートに回答していただいた23区の中央図書館長の方々に感謝し、お礼を申し上げる。私たちは、先に述べたように、委託の実体を明らかにしたい。そのために、アンケート回答に批判を加えざるをえないことも多くあった。また、回答の本旨を捕らえきれずに評を下したということもありうると思う。ご指摘があればお答えしたい。
2.アンケート実施から最終発表に至る経過
アンケートは、05年9月26日、23区中央図書館長にあてて送り、さらに未回答区には、10月28日はがきで回答を求める要請を行った。これによって、11月24日の中間発表段階では14区(足立、荒川、板橋、葛飾、江東、新宿、杉並、墨田、世田谷、中央、千代田、中野、文京、港)、その後北区からの回答があり、合わせて15区となった。12月17日、未回答8区の区長に対して、文書で、アンケートに回答すること、回答しない場合はその理由を明らかにすることの2点を要求した。これにより、8区(江戸川、大田、品川、渋谷、台東、豊島、練馬、目黒)からも回答があり、23区の回答が出揃った。
アンケート回答は、すでに11月中間発表、12月追加、1月最終発表として、「東京の図書館をもっとよくする会」のウェブに掲載した。
Ⅱ 「分析と評価(概要)」本文
1.アンケートが性格として持つ〈限界〉と〈危険性〉
〈限界〉 図書館業務委託は多くは区行政のトップで決定される。中央図書館長は委託を実施し、成功させる以外の道を絶たれる。そのため、委託の実態が外部に漏れるのを極端に恐れる。部下には緘口令を敷き、自らは「サービスは向上し、なんら問題点はない」と言いつづける。どの区であっても、程度の差はあれ、このような傾向を帯びてくる。それは、今回のアンケート回答にも当然に表れる。
また、委託は外見を請負契約として行われる。行政は仕様書を作成しそれに基づき受託契約を行う。受託会社は、自らの指揮監督の下、仕様書に従い業務を行う。行政は仕様書どおりに業務が行われたことを確認し、契約金額を支払う。問題点を書けば、仕様書どおりに受託会社が業務を行わなかったのに、不当に公金を支出したと指摘される恐れがある。また、偽装請負と指摘されることも困る。だから、仕様書に基づき委託が良好に行われている以外のことは出てこない。実体は隠される。
〈危険性〉 〈限界〉を持った回答の集合体は、回答者の意図を超えて真実を歪曲する。「(図書館の委託に反対している)東京の図書館をもっとよくする会が23区を対象に行ったアンケート調査からも、委託がサービスの向上に効果的であったこと、問題点と言えるものは見当たらないことが、実態として明らかになった」と、宣伝される危険性が存在する。
しかし、その一方、この〈危険性〉は、ブラックホールの周縁部分を形づくることから、ブラックホールを際立たせることにもなる。
2.ブラックホール
1)低賃金で働く受託会社の社員
アンケート回答を一目見て気のつくことがある。受託会社にかかわる部分が見事に抜け落ちていることである。
設問1-7(受託先の図書館勤務者数、うち司書有資格者数)、設問1-8(受託先社員の給料に関すること)、設問1-9(受託会社に司書資格者・経験者を求めているか)についての回答は、不透明である。特に私たちが関心を持っていたのは、受託会社社員の低水準の給料について、どのような認識を示すかと言うことであった。回答を列挙すれば次のようになる。
「受託会社において決定する事項であり、区側としてはその報告を求めていない為、一切把握しておりません(足立区)」「図書館では把握していません(板橋区)」「委託先の個別事項となりますので、把握しておりません(大田区))」「調査していません(北区)」「区では関知していない(渋谷区)」「区では関知していない(杉並区)」「回答できません(墨田区)」「受託先の質問事項については、回答できかねます(千代田区)」「調査しておりません(中野区)」「不明(港区)」「把握していない(目黒区)」、さらに無記入4区(江東、品川、豊島、文京) 。これが委託区15区の回答である。
受託会社が図書館に配置する社員の給料は、受託会社によって差はあるもののきわめて低い。スタッフ募集の新聞折込チラシに掲載される賃金は、図書館に責任者として配置されるチーフ、サブチーフと言われる人たちの給料でさえ月20万円を割る。チーフ、サブチーフ以外のスタッフと呼ばれる多くのパート社員は時給800円から900円で、受託会社が社会保険料等を負担しない短時間勤務者が多いから、さらに賃金は低い。税金等がそこから引かれるから、さらに少なくなる。チーフと言われる責任者であっても、自活するのは難しい。
行政は委託の積算基礎を明らかにしない。受託会社も、社員に給料を口外しないように口止めするくらいなので、受託会社がこれに関して述べているものはほとんどない。唯一「NPO図書館の学校」副理事長小川俊彦氏が、触れているものがある。(「NPO図書館の学校」は、図書館流通センター(TRC)の関連団体である。TRCは、最も積極的に図書館受託の働きかけを行い、最も多くを受託している企業である。)
「一人あたり一六〇〇円は東京周辺の標準的な委託費であり、これが一人のスタッフ分として計算され、支払われていることは事実であるが、これですべてをまかなえという金額である。交通費、フルタイムで週4日以上働けば、各種社会保険に入る必要が出てくる。仮に時間単価が八〇〇円であったとしても、これらの費用を加えるとおそらく一二〇〇円前後になるはずである。この残りが利益であるが、ここから営業費、会社維持費等を捻出することになる。
年間を通して働けば有給休暇を与えることも起きてくる、スタッフの研修も有給で行う必要がある、予定していた職員が急病で休めば補充の必要になる、といったことも考えなければならない。こういった費用も予定しておく必要がある。まともな対応をしていこうと考えれば、とても現状では利益の出る商売になっているとはいえないはずである。」(雑誌「図書館の学校」2004年12月号)
小川氏は、まともな対応をすれば利益は出ない、と述べている。しかし、TRCをはじめ多くの会社が委託を受けるために競争するのは、もうかるからである。まともな対応をしないことによって、膨大な利潤を挙げることができるからである。
各種社会保険等を払っても1時間1人につき400円のピンハネができるし、殆どは各種社会保健等を払う義務を負わない勤務時間に抑えて払わないから、1時間1人について800円に近いピンハネができることになる。
このことについては、東京自治体労働組合連合弁護団の「意見書」が明確に述べている。
2)劣悪な労働条件と業者の高収益
図書館専門業者であるとして各自治体に対して委託を働きかけているTRC(株式会社図書館流通センター)の労働条件と委託料は次の通りである。
a 労働条件(募集広告による)
1日2時間以上週3日以上の勤務
~5時 時給 850円 5時~ 時給 990円
b 委託料(ある区の見積もりによる)
~5時 1時間1650円 5時~ 1時間1960円
a÷b ~5時 51.5% 5時~ 50.5%
1日8時間平日の全開館日203日働くと人件費は267万円であり、劣悪な労働条件である。他方で、委託先業者に対する委託料は人件費の2倍となっている。業者が研修の実施や指揮命令を負担することは建前のみであり、施設設備はすべて行政側が設置したもので資本投下が不要である。
したがって、業者にとっては少ない資本で人件費の約2倍もの委託料収入が得られることになり、高収益が見込めるものとなっている」(「公立図書館の窓口業務の民間委託に関する意見書」2003.2.6)
これが委託のブラックホールの中心となる。
区側も、受託会社社員の給料を知っていることを認めれば、不当に高い委託料を支払っていることを知っているはずだ、と追求されかねない。併せて、受託会社社員の低賃金も知ることになることから、委託者としての社会的責任も問われかねない。図書館行政の責任者が受託会社社員の給料を知らないという異常さはここに起因するのではないだろうか。このことが「見ざる」「聞かざる」「言わざる」の姿勢に凝集する。このような沈黙と加担がブラックホールをより大きくする。
足立区は「受託会社において決定する事項であり、区側としてはその報告を求めていない為」と回答している。これは他区に比べ、一歩踏み込んだ回答である。しかし、受託会社が社員の給料の報告を出すとは思えないが、少なくとも、報告を求めるべきではないだろうか。委託する側の責任として、受託会社の労働者の労働条件にも関与し、労働環境の改善に努力するのは当然ではないのか。受託会社チーフのあまりの長時間勤務を見るに見かねた図書館職員が、受託会社に「労働基準法に違反する」と改善を申し入れたところ、増員されたということがあった。何もしなければ、何も改善されない。また、受託会社社員の給料分として支払った委託料の半分を受託会社が取っている異常な状態を放置していることは、区民の信託に反するのではないのか。
設問1-5(委託契約金額)を回答しない区が、無記入も含めて6区もあったのは、予想外であった。「お答えしておりません(大田)」「契約金額については回答できません(北)」「回答は差し控えさせていただきます(渋谷)」「契約金額については回答できません(墨田)」、加えて、無記入2区(品川、杉並)があった。回答できないと言うのなら理由を示すべきである。これら6区は、行政が透明性や説明責任を求められる時代になっているという認識を欠如しているのではないだろうか。税金を使って「回答できません」はあまりにひどい。公表してまずいことがあるとは思えないだけに、契約金額を隠す意図がどこにあるのか、不可解である。単純に「知らしむべからず、依らしむべし」の役人意識の名残なのか、あるいは受託会社への支払金額を公表するのは危険と思ったのだろうか。
3)偽装請負委託
もうひとつ、このブラックホールを形成する素材は、前記と表裏一体の「派遣であるにもかかわらず、請負契約を偽装している」実体である。職業安定法施行規則第4条は、「派遣」でなく「請負」とされるためには、4つの要件をすべて満たす必要がある、と規定している。この規定の目的は、労働者が劣悪な労働条件で働かされ、賃金を搾取されることを防ぐことにある。逆に、偽装請負は、労働者の賃金の搾取を容易に行うことができる仕組みといえる。今日、この違法行為である偽装委託は半ば公然と一般社会に横行している。そして、図書館のカウンター委託においても横行する。横行していても、表に出すわけにはいかないから、偽装委託の実体はブラックホールとなる。
「請負」とされるための4つの要件とは、以下のとおりである。
1号 作業の完成について事業主としての財政上及び法律上のすべての責任を負うものであること
2号 作業に従事する労働者を指揮監督するものであること
3号 作業に従事する労働者に対し、使用者として法律に規定されたすべての義務を負うものであること
4号 自ら提供する機械、設備、器材(業務上必要なる簡易な工具を除く)若しくはその作業に必要な材料、資材を使用し、又は企画、若しくは専門的な技術若しくは専門的な経験を必要とする作業を行うものであって、単に肉体的な労働を提供するものではないこと
図書館の委託は、1号・2号・4号を満たさない。なかでも焦点となるのは、2号である。アンケート回答が、仕様書・マニュアルに従って、業務遂行が良好に行われていることを、異口同音に述べているのも、この2号との関係もある。
しかし、実態は異なる。違法行為が行われている実態を、図書館行政の責任者として述べている貴重な文書があるので紹介する。当時文京区立真砂中央図書館長の佐藤直樹氏「図書館カウンター委託から一年」(「みんなの図書館」04年5月号)の一部である。
「作業に従事する労働者を指揮監督するのは、請負った側(受託会社)であるという点です。運営の実際は、現場に配置された、一定の権限のある業務責任者(チーフ)が各々のスタッフに業務遂行方法の指示をはじめ、人事労務関係全般に関わる指揮・命令・管理を行うのです。ここで必ず出てくる議論は、区側には指揮監督権がないのだから、何ら指示めいたことを言ってはならない。ひどい場合は、口を利いてはならないという極論さえ飛び出します。仕事は時々刻々動いていますし、お客様相手ですから、窓口でもいろいろなことがある。完璧な人間はどこにもいないように、スタッフとて瞬時の判断に迷うこともある。ましてお客様が待っているところでマゴマゴしていたらご迷惑をかけることになる。そんなときは、職員が「こうした方がいいよ」と声をかければいい。聞かれたら適切に応えてあげればいい。それらは、命令(order)ではなく、示唆(suggestion)ないし助言(advice)です。法律はこれらの事実行為まで禁止するものではありません。もしこれがダメなら、図書館は機能しないでしょう」
「命令」ではなく、「示唆」や「助言」までを法は禁止していないとしている。しかし、命令や指示を別の言葉に置き換えることで、違法行為が合法行為に変わることなどあるはずもない。図書館行政の責任者が、図書館職員が、受託会社社員を教え指導しなければ図書館運営はできない実態を述べているのである。
このようにして、図書館職員が受託会社社員とカウンターに隣り合って座って、貸出・返却の指導をしたり、受託会社社員が休憩時間をとれないために図書館職員が代わってカウンター業務を行う、図書館職員が私的に受託会社社員を対象に業務研修を実施する、カウンターで起きた利用者とのトラブルに職員が対応する、受託会社社員が少なく書架が乱れたりすると職員が書架整理をおこなうなど、図書館運営に支障が出ないために日常的に請負契約を逸脱した行為が繰り返し行われている。これらは、アンケート回答には現れない。
3.23区で突出した図書館委託
2003年12月、日経新聞は「図書館、市場規模は2倍強」のタイトルで、首都圏には970の図書館があり、民間委託の市場規模は5年後には94億円に拡大するとし、さらに、教育委員会が選んだ館長の配置義務や選書など基幹的な業務は行政が担うことになっていることなどが全面委託を難しくしているので、いっそうの市場拡大には法制度の見直しが必要になる、と報じた。この財界の要請は、指定管理者制度、市場化テストに結実していった。
この強大な力が国や自治体を動かしている。委託が効率的だから委託する、住民サービスが向上するから委託するのではない。市場拡大のために委託・民営化するのである。
だから、23区の財政状況が良い区も委託を選択する。経費削減のための手法は、専門非常勤化や派遣社員などもあり、図書館サービスの質や経費削減でも優れている。しかし、委託以外の手法はタブーとされる。
委託は23区に突出して起きている。23区の特殊な図書館人事政策も深く関わっているからである。東京23区は、司書の採用をおこなわず、事務職員として採用した人を3~5年間図書館に配置しては、他部署に配置転換することを繰り返してきた。これでは図書館の運営に支障が出てくるので、多くの区では司書有資格者を図書館に長く置いたりするなどの配慮をも併せておこなってきた。しかし、司書採用をおこなったり,図書館員の養成に力を注いだ多摩地域の同規模図書館を比較すると、23区は職員数を多く配置せざるをえず、しかも、サービス水準は低いという非効率的な運営をおこなってきた。優れたレファレンスを提供する図書館員は個々にはいるにしても、23区を見渡せばレファレンスの力量はきわめて低い。それどころか、本を読んだことがない、人と話をしたくないという図書館員が生まれるということも、23区の制度上、普通に起きてくる。これは、図書館行政の責任者であろうと例外ではない。
私たちは、図書館らしい図書館を作るために、税金のムダ遣いをやめて、司書を採用するように行政当局に働きかけてきたが、実現しなかった。今の図書館を「無料貸本屋」という人がいる。区行政トップが、今まで多くの人件費をかけてきた「無料貸本屋」を、人件費を削った「無料貸本屋」に変えようと言う発想にたつのは、図書館や文化についての識見を持たなければ容易なことである。
図書館の委託は区のトップの方針として決定される。トップは、委託で大きな成果をあげるのが当然と考えているから、図書館行政責任者には失敗は許されない。図書館長は組織内に検討部会を設置して、委託の理論付けをおこなう。委託本体からは経費削減しか期待できないので、開館日拡大、資料費増額、図書館職員をカウンター業務から開放しレファレンス・選書などの充実を図る、などを付け加え、委託効果をあげることを検討する。I区の中央図書館長は、「なぜ、開館時間を延長するのか」という職員組合の質問に、「委託でサービス内容も少し落ちるし、1000万円の削減だけではアピール性がない」と答えている。このような区の内部状況が、アンケート回答に濃厚に反映している。
5.委託図書館に何が起きているか
図書館職員は、利用者と接する機会をほとんど失う。新規に図書館に配属された職員は、図書館職員としての第1歩となる資料提供や簡単なレファレンスについての技術・経験を蓄積できなくなる。専門的なレファレンスや企画調整は、基礎的な技術・経験の蓄積の上に成り立つものだから、それも当然にできない。図書館の仕事がわからない職員が増えてくる。
受託会社に委託している業務を、時間の経過とともに職員はわからなくなる。聞かれても、何を聞かれているのかも、わからなくなる。受託会社で解決できなくなってしまった、もつれてしまった利用者とのトラブルが持ち込まれてくる。委託仕様書の中身を理解できなくなった職員が、そのことでのトラブル処理で利用者に対応するには、無理がある。
また、受託会社社員への指示命令なしに図書館業務は成り立たない。図書館職員は違法であることを承知しながら、違法行為を行うことに追い詰められる。
委託された業務を実際にやっていた職員と委託後に図書館に配置された委託業務の経験を持たない職員との二極化も進んでいる。アンケート回答では、7区が「職員が「基幹的業務」に専念できるようになった」と応えていた。 しかし、そのためには、基幹的業務をおこなう能力を持つ職員を配置する必要があったのに、従来と変わらない人事異動を行った。基幹的業務に専念できるようになっても、「基幹的業務」の低下崩壊が進んでいる。
以上のことは、単に職員ばかりでなく、職員が減少して人事管理がほとんどなくなった図書館責任者である中央図書館長にも起きてくる。
「東京の図書館をもっとよくする会」がこの3月に開いた「委託情報交換会」では、図書館職場が意欲を失い、荒廃していく状況の深まりが、現場から多く寄せられた。アンケート回答で、このことに触れたものはない。アンケート回答は現場を掌握していない。
受託会社社員は、図書館の仕事に熱意と能力をもっていても、自活できる給料を得られないから、より良い就職先があれば移っていく。チーフでも1年雇用の契約社員で、所属する会社が次年度受託できなければ、仕事を失う。
今の給料も安く身分も不安定な労働環境であっても、将来に希望が持てれば、働く気力を持ち続けることもできようが、将来に希望を持てる状況にはない。
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