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2007.01.31

[資料紹介]西川馨著『優れた図書館はこう準備する』

 今回は西川馨著『優れた図書館はこう準備する』を紹介したい。こ
の本は(有)図書館計画コンサルタントの西川馨さんが「優れた図
書館を実現するためには図書館側(教育委員会の場合も)がソフトも
八一ドも十分に勉強をし、準備しなければならない。そして、図書館
計画書をしっかり書くことが必要である」との立場の下に、「図書館
の新設・改装などに直面する関係者のために、著者の経験を踏ま
えて送る手引書」としてお出しになったとのことである。今入手し、
改めて内容に目を通し始めたが、著者の意図することが簡潔にまと
まっており、私たち図書館に関わる者にとって大変参考になる本だ
との思いを新たにした。

  優れた図書館はこう準備する / 西川 馨 (著)
  東京 教育史料出版会 (発売) 2006/12
  ISBN-13: 978-4876524754
  価格: ¥ 3,990 (税込)
  目次より
  はじめに
  第1章 日本の図書館は発展途上にある
   日本の公共図書館の現状/日本の特殊事情
  第2章 今図書館はどのように使われているか
   図書館統計から/実態調査/利用者の特性
  第3章 計画の準備段階
   計画の流れ/準備室/準備委員会/基本構想
   基本計画/本館の規模計画/敷地の選定/複合建築
  第4章 図書館建築の基本構成
   図書館建築の一般的な条件/構成要素・ダイヤグラム/
   全体構成の考え方/その他の基本的事項
  第5章 各部の考え方
  第6章 設備・備品・家具
   図書館設備/電気設備/家具
  第7章 建設・開館へ向けての準備
   建設準備室/建設予算・設計期間/建設スケジュール
   図書購入計画/設計者の選の方/基本設計/実施設計
   工事監理/視聴覚機材の準備/利用者へのPR
  第8章 計画書の書き方・実例
   構成例・目次/内容記述の例   
    第9章 ライブラリーシステム
    ライブラリーシステム/イギリス・オランダの例/
    日本の現状/市町村内での図書館サービス網を
    構成する

 以上のような項目立ての元、図書館の施設の各部についての留意
点がとても詳しく書かれている。そして、巻末の付録には国内・外の
図書館建築計画書の実例が引かれていて、それぞれ元になった図
書館の思想からどのような計画書が出来上がっているのかがわかる
ようになっている。
 図書館に関わる者にとって、図書館施設とは利用者と資料、そして
図書館で仕事をするものが交わる場として重要である。そのことを省
みるためにも、よろしければ皆さんも何らかの機会にお手にとって御
覧になるとよいのではないだろうか。

2007.01.08

『千の風になって』に寄せて

 私管理人は、職場では主に図書館間相互協力の仕事をしているのだが、また、7~9門(芸術・語学・文学)の本の選書担当者の一人でもある。本を選ぶときは、選書リストとして用いている資料はあるのだが、願わくば実際に本物も手にとって見たい。そのような思いを持って、よく休日には都心の大規模書店を巡り歩いたりもする。今日お話したいのは、そのような書店めぐりのときに出会った、はっとさせられた本の話である。

 その本のタイトルは『千の風になって』。読者の中にも、年末のNHK紅白歌合戦にこの歌が取り上げられたことなどでご存知の方もあろう。「私のお墓の前で泣かないでください。そこに私はいません。千の風になってあの大きな空を吹きわたっています」という歌いだしで、まるで死者が残された者に語りかけるかのような、あの歌である。オリジナルの英語詩の作者は不詳。日本語詞と作曲が新井満さんの手になる。

 そして、関連資料として視界に入っってきた次の本やCDを、思わず管理人は衝動買いしていた。

   千の風にいやされて あとに残された人々は悲しみをどうのりこえたか
   著者:佐保美恵子
   東京 講談社 2004
   監修 新井満

   千の風になって スペシャル版 企画プロデュース:新井満
   東京 ポニーキャニオン 2006 CD
   「千の風になって」一曲のみを複数の演奏者がそれぞれ演奏したもの

 前者は、日英両方の「千の風になって」のあと、第1部では肉親との死別など身近に死を経験した方々がこの詩とどのようにかかわり、どのようにかけがえのない人との別れを形作って言ったのかが佐保さんの取材の元に描かれている。この中には、神奈川県の小学校で「命の授業」に最後まで取り組んで旅立たれた大瀬敏昭さんのことも描かれている。また、第2部では新井さんの仲間の連れ合いの方の死など、「千の風になって」誕生までの物語が描かれている。第3部では作家の故遠藤周作さんの奥様の遠藤順子さんと新井さんとの対談が掲載されていて、そこでもこの歌などを通してかけがえのない人の死や命のことが語られている。ちなみに、後者のCDで複数の演奏者とは新井満、Yucca、谷川賢作、中島啓江、コペルニクス、新垣勉、スーザン・オズボーンらのことである。

 管理人は、かつてよく読んだ作家柳田邦男さんの『犠牲(サクリファイス) : わが息子・脳死の11日』(文藝春秋, 1995.7)--自死したご子息を巡る物語--を手にして立ちすくんで以来、「死」についての本にはよく目が行くようになったのだが、今回の『千の風になって』の「私は墓の中にはいない」という表現には驚かされてしまった。今まであまり出会ったことのない表現だったからである。しかし、上述『千の風にいやされて』でご遺族の一人が「死によって人が存在しなくなると思うより、風や光になっていると思うだけで、大切な人を亡くした喪失感が浄化される」と語っているように、「私(死者)は風になって大空を吹きわたる」というメッセージが多くの人の心に力を与えているのだと管理人は痛感した。

 昨今、上述の『犠牲』やその続編である『『犠牲 (サクリファイス) 』への手紙』(同社,1998.4)、東京学芸大学教授である相川充さんの『愛する人の死、そして癒されるまで : 妻に先立たれた心理学者の"悲嘆"と"癒し』(大和出版, 2003.2)など、心理学者らが「喪の仕事(グリーフ・ワーク)」と呼ぶ事柄に関わる本が多く出版されている。そして今回の『千の風になって』。もっとも、一人ひとりの人生は全然別のものであり、どれ一つとして同じ離別の物語などない。しかし、『千の風になって』に触れて大切な人を亡くした喪失感が浄化されると感じられた方がいらっしゃるように、書物などは時としてその人を新たなステージへと導いていく力となりうる。そして、管理人はこのように思う。図書館も、風を心に受けて進んでいくための大切な場所の一つとなりうるのだと。また、図書館に関わる者は、そのようなことに対して感覚を鋭敏にしていかなくてはならないということも、今回『千の風になって』に触れて痛感したことである。

追記
 こちらから新井満さんの公式ページ「マンダーランド通信」を訪問できます。
 http://www.twin.ne.jp/~m_nacht/

 

2007.01.03

『有山たかし著作集』を紐解く

 忙しい日々の仕事。私たちはともすると目の前の仕事を片付けるこ
とに追われ、「道筋」を見失うということはないだろうか?正月休みの
ひと時、管理人は久しぶりに本を一冊手にとってみた。日々行ってい
る図書館間相互協力の仕事をしている時に再度出会った、身近な図
書館を水道の蛇口だと例える文言の源流を確認し、これからの仕事
の力の源としたかったからである。そして、その手に取った本とは『有
山〓』著作集(〓は山冠に松)である。書初めではないが、今年はこ
のことから書き起こしていきたい。少し「つれづれ」になってしまうかも
しれないが、ご容赦いただければ幸いである。

 まずは例によってこの本の書誌事項を確認しておこう。有山さんに
ついてはここで管理人がどうこう申し上げるまでもないだろう。日本図
書館協会の事務局長として活躍し、また、出身地である日野で
「市民の図書館」を創ることに努力され1969年永眠された方であ
る。この著作集は3巻組みになっており、「図書館の本質を論じたも
の、図書館協会や図書館運動に関するもの、読書と読書運動に関す
るもの」という3本の柱の下に彼の書かれたものがまとめられている。

  有山〓著作集 / 有山〓著 ; 石山洋 [ほか] 編. --
  東京 : 日本図書館協会, 1970   3冊 ; 20×19cm -- 1;2;3

 目的の「水道の蛇口」論の源流らしきものは、1巻の「市立図書館
の経営:市には図書館を、その図書館はこうあってほしい」(pp.20-
29)に書き込まれていた。ただ、これより前にも言われていたことかも
知れないので、もしご存知の方がいらしたらご教示いただければ幸
いである。これはもとは『市政』という雑誌に1964(昭和39)年(1月、
2月)に発表されていたものだとのことである。この論考は次の柱で成
り立っている。

   Ⅰ 1 すべての民衆は図書館サービスを受けるべきである
   2 国からの交付金の中には図書館費が算入されている
   3 図書館とは建物のことではない
  II 1 建物ひとつだけでは図書館は働かない
   2 図書館経営は素人ではできない
   3 図書館は社会保障機関である
   4 むすび

 そして、有山さんは例の「水道の蛇口」という比ゆを使って、図書
館がネットワークで仕事を進めていく姿を次のように語っている。少
し長くなるが引いてみたい。

   例えば、水道の蛇口は各戸に設けられている。それだから
   便利なのである。バケツを下げて市の中心部の水道局まで
   水をもらいに行くとしたら市民は黙っているだろうか。貯水池
   があって、そこから全市に配管され給水網ができているから、
   各戸では蛇口をひねりさえすれば水が出てくるのである。
   これと同じことが先進外国では図書館について実施されてい
   る。つまり、水道の場合には各戸に蛇口があるのだが、図書
   館の場合には容易に歩いていけるところに末端施設がある。
   これがいわば共同蛇口である。そこに行けばある程度の本
   がある。その本は数は多くないがその辺の市民の要求に合っ
   た本である。だからたいていの場合はそこで用が足りるので
   あるが、足りない時は、そこに具え付けられている図書目録
   によって欲しい本を見つけ出し…

 いかがだろうか。日野市立図書館が発足した当時、市民のそば
に図書館が出て行くという意図で移動図書館車からスタートし、分
館網を整備し、中央館を構築したという流れだったと聞くが、その
歴史の中にはこのようなものの考え方がしっかりと定まっていた
わけである。そして、それから40年以上たち、大学図書館に相互
協力担当として身を置く管理人にとってもこの「水道の蛇口」という
表現は少しも古さを感じない。自館で対応できない資料については、
大学図書館同士のやりとりや、国立国会図書館からの文献提供を
うけることだけでなく、地域資料については対象地域の地元にある
公共図書館などともやり取りをしながら仕事を進めている。また、現
在は「グローバル化」という言葉がますます重要なものとして扱われ
ており、インターネットがもはや必要不可欠の道具になっているが、
管理人の身の回りでも、欧州や北米、東アジア、オーストラリア、ア
フリカとのやり取りが必要になるケースが現れている。有山さん風
にいえば備え付けの図書目録というところを、今ではインターネットで
提供された全世界の図書館の目録となるわけである。有山さんの
活動された時代とは、「水源地」や「水系」の規模が比べ物にならないほど拡大しているのだ。

 有山さんが語ってくださった「水道の蛇口」は図書館ネットワークの
ことを語る上でとても大きな位置を占めており、今でも多くの方が「水
道の蛇口」という比ゆをお使いである。これからも図書館ネットワーク
は図書館に携わるものにとってますます重要になり続けるだろう。

 ところで、この著作集の別の巻を紐解いたら、市民にとっての読書
と図書館のかかわりについて面白い記述に出会った。また引いてみ
たい。

   だが図書館への需めは、読書したいという欲求だけから
   おこるとは限らない。他の色々な動機からおこることが多
   いのを、これまでの図書館は見逃していた。
   例えば、米作改良という動機、台所改善という動機、ラジ
   オを作りたいという動機、芝居をしたい等様々な動機が
   先ずあって、それを実現していくいろいろな方法の内の一
   つとして、図書資料を需めるということが生まれてくる。
   だがそうだからといって図書館が、やれ米作を改良しろ、
   ラジオを作れと叫んでもどうなるものではない。…
   従って公共図書館が本当に地域社会の大衆と結びつくた
   めには、図書館だけで働くことをせずに、その地域社会内
   にあるいろいろの機関や団体と結びついて、それらの機関
   や団体に先ず十分働いてもらって…その課題解決の一つ
   の方法として、図書館は資料提供という本来の仕事をする
   ということが必要である(3巻所収「地域における公共図書
   館の課題」より。原報『教育じほう』昭和32年10月号)

 米作や台所、ラジオや芝居、つまりは人が文化的に生きていくた
めの生業や趣味等のことを述べているのだろうと管理人は理解し
た。これは、管理人が考えるに、今の公共図書館の世界で「ビジ
ネス支援」など生業を支援していこうとする取り組みに一脈通じる
ものがあるのではないだろうか?そのほかにも、この本のあちこ
ちに当時の社会情勢に有山さんが真摯に関わった姿が記されて
おり、40年前の本であるとはいえ、現代の私たちにも参考になる
様々な考えが汲み取れるのではないだろうか。「図書館は何をす
るところか」、この本にはそのことを考えるための有用な視座が
含まれているのだと私は考えている。

 かつて、歴史の授業で、E・H・カーという人の『歴史とは何か』(岩
波新書)を引きながら、歴史とは、川の流れの中にいる観察者が、
同じ川のはるか先を流れ去ってしまった物事を観察し、自分が今
身を置いている場所に即して捉え返す営みなのだと教えてくださっ
た先生がいた。これは、図書館の歴史にとっても重要なことであろ
う。別の言葉で言えば「温故知新」ということになろう。図書館が曲
がり角から抜け出そうと一所懸命な今、抜け出すための知恵は、
すでにかつて先人たちが語っているかもしれない。今回、管理人
は『有山〓著作集』を紐解きながらそのような思いを新たにした。

2007.01.01

年賀

読者の皆様方へ

 明けましておめでとうございます。旧年中はいろいろとお世話にな
りまして、ありがとうございました。おかげさまで現在のカウンター表
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 本年も様々な記事をお届けしたいと考えておりますので、旧年と変
わらぬご支援を賜りますよう、よろしくお願いいたします。

2007年元旦
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