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2007.01.08

『千の風になって』に寄せて

 私管理人は、職場では主に図書館間相互協力の仕事をしているのだが、また、7~9門(芸術・語学・文学)の本の選書担当者の一人でもある。本を選ぶときは、選書リストとして用いている資料はあるのだが、願わくば実際に本物も手にとって見たい。そのような思いを持って、よく休日には都心の大規模書店を巡り歩いたりもする。今日お話したいのは、そのような書店めぐりのときに出会った、はっとさせられた本の話である。

 その本のタイトルは『千の風になって』。読者の中にも、年末のNHK紅白歌合戦にこの歌が取り上げられたことなどでご存知の方もあろう。「私のお墓の前で泣かないでください。そこに私はいません。千の風になってあの大きな空を吹きわたっています」という歌いだしで、まるで死者が残された者に語りかけるかのような、あの歌である。オリジナルの英語詩の作者は不詳。日本語詞と作曲が新井満さんの手になる。

 そして、関連資料として視界に入っってきた次の本やCDを、思わず管理人は衝動買いしていた。

   千の風にいやされて あとに残された人々は悲しみをどうのりこえたか
   著者:佐保美恵子
   東京 講談社 2004
   監修 新井満

   千の風になって スペシャル版 企画プロデュース:新井満
   東京 ポニーキャニオン 2006 CD
   「千の風になって」一曲のみを複数の演奏者がそれぞれ演奏したもの

 前者は、日英両方の「千の風になって」のあと、第1部では肉親との死別など身近に死を経験した方々がこの詩とどのようにかかわり、どのようにかけがえのない人との別れを形作って言ったのかが佐保さんの取材の元に描かれている。この中には、神奈川県の小学校で「命の授業」に最後まで取り組んで旅立たれた大瀬敏昭さんのことも描かれている。また、第2部では新井さんの仲間の連れ合いの方の死など、「千の風になって」誕生までの物語が描かれている。第3部では作家の故遠藤周作さんの奥様の遠藤順子さんと新井さんとの対談が掲載されていて、そこでもこの歌などを通してかけがえのない人の死や命のことが語られている。ちなみに、後者のCDで複数の演奏者とは新井満、Yucca、谷川賢作、中島啓江、コペルニクス、新垣勉、スーザン・オズボーンらのことである。

 管理人は、かつてよく読んだ作家柳田邦男さんの『犠牲(サクリファイス) : わが息子・脳死の11日』(文藝春秋, 1995.7)--自死したご子息を巡る物語--を手にして立ちすくんで以来、「死」についての本にはよく目が行くようになったのだが、今回の『千の風になって』の「私は墓の中にはいない」という表現には驚かされてしまった。今まであまり出会ったことのない表現だったからである。しかし、上述『千の風にいやされて』でご遺族の一人が「死によって人が存在しなくなると思うより、風や光になっていると思うだけで、大切な人を亡くした喪失感が浄化される」と語っているように、「私(死者)は風になって大空を吹きわたる」というメッセージが多くの人の心に力を与えているのだと管理人は痛感した。

 昨今、上述の『犠牲』やその続編である『『犠牲 (サクリファイス) 』への手紙』(同社,1998.4)、東京学芸大学教授である相川充さんの『愛する人の死、そして癒されるまで : 妻に先立たれた心理学者の"悲嘆"と"癒し』(大和出版, 2003.2)など、心理学者らが「喪の仕事(グリーフ・ワーク)」と呼ぶ事柄に関わる本が多く出版されている。そして今回の『千の風になって』。もっとも、一人ひとりの人生は全然別のものであり、どれ一つとして同じ離別の物語などない。しかし、『千の風になって』に触れて大切な人を亡くした喪失感が浄化されると感じられた方がいらっしゃるように、書物などは時としてその人を新たなステージへと導いていく力となりうる。そして、管理人はこのように思う。図書館も、風を心に受けて進んでいくための大切な場所の一つとなりうるのだと。また、図書館に関わる者は、そのようなことに対して感覚を鋭敏にしていかなくてはならないということも、今回『千の風になって』に触れて痛感したことである。

追記
 こちらから新井満さんの公式ページ「マンダーランド通信」を訪問できます。
 http://www.twin.ne.jp/~m_nacht/

 

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コメント

このサイトのほかにも、『千の風になって』を取り上げる方が大勢いらっしゃるようである。こちらで気がついただけでも下記に紹介したい。

●「『千の風になって』新井満」(『本が好き♪図書館ブログ』より)
http://blog.goo.ne.jp/library1789/e/7b82ba15ed91561aff8f8435d56b7aa3
●「千の風になって」(『おばちゃんらいぶらりあん日記』より)
http://t-amana.cocolog-nifty.com/blog/2005/04/post_5.html
●「お話し会・かがやき」(『ささやま図書館友の会 Blog』より)
http://blog.livedoor.jp/library_blog/archives/50012295.html

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» 「千の風になって」英語版真の原作を発見 [音楽室からのたより〜名詩紹介〜]
「千の風になって」実は原作者が分かっているのです。メアリーという人です。訳してみました。ナチスドイツ政権の被害者「マーガレット」が母の墓参りも出来ないと悔やんだのを,慰めようと作った詩です。どうやら1932年にまでさかのぼるようです。紛れもなくこの詞の原型であることが分かります。このサイトで見つけました。http://www.mahoroba.ne.jp/~gonbe007/prof/1000winds.html1932年にメアリーが書いたオリジナルバージョンDo not stand at ...... [続きを読む]

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