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2007.03.26

[資料紹介]渡辺有理子著『図書館への道』

 今回は、渡辺有理子著『図書館への道―ビルマ難民キャンプでの1095日』の紹介をしたいと思います。著者の渡辺有理子さんは日本国際児童図書評議会や都内の小学校司書教諭の仕事に携わった後、(社)シャンティ国際ボランティア会(SVA)から派遣されて、2000年9月から3年間で18館のビルマ難民キャンプの図書館建設及び人材養成に関わった方です。ちなみに現在は再び学校図書館の仕事に携わっていらっしゃいます。

 先ずは例によって書誌事項等の紹介からいたしましょう。

  図書館への道 : ビルマ難民キャンプでの1095日 / 渡辺有理子
  著. --
  東京 : 鈴木出版, 2006.1
  271p, 図版[4]p ; 19cm
  ISBN-13: 978-4790291039
  目次 序章 海を越えて(タイ北部の町、メーサリアン/突然のF
  AX/小さなお守り) 第1章 ゼロからの図書館活動(初めての
  難民キャンプ訪問;あなたの名前は?/難民キャンプの運営と
  教育/難民キャンプの小学校/活動の一歩/図書館の建築/
  カレン語の本、ビルマ語の本/貼りつけ絵本/たくさんの"ター
  ブル"*/夢の図書館/図書館員の養成/活動の柱/民族の
  証/図書館へようこそ/子どもたちからのプレゼント/ゴミの教
  育/マラリアの夜/閉館希望?/布の絵本と移動図書館/
  青年の心/紙芝居制作と紙漉きのワークショップ/図書館に
  望むことは) 第2章 読む楽しさ、知る喜び(好奇心の翼/
  子ども文庫/新米の図書先生/本の探偵/人の心が読める
  /不思議な贈り物/世界で一冊の本) 第3章 忘れられた
  難民(四つの信念/カレン民族/難民の流出/難民とビルマ
  の民主化/カレンの農村にて/決して忘れるな) 第4章 光
  と色のある未来へ(新たな町へ/ヌポ難民キャンプの"硬い岩"
  /ボイコット/家族との再会/母の日の難民キャンプ訪問/
  消えた図書館/お化け屋敷図書館/テレビの登場/再建に
  向けて/図書館の再建/星空のディナー/夢の実現/最後
  のワークショップ/友だちと活力/難民キャンプでの送別会/
  また会う日まで) あれから あとがき
 *「ターブル」とはカレン語で「ありがとう」の意味。

 ここで言うビルマ難民キャンプとは、ビルマ国内で弾圧・迫害されてタイ国内に流れてきた難民の方々が仮の住まいを構えるところです。ここで「ビルマ」と書いたのは現在「ミャンマー」と呼ばれている国のことですが、民主化闘争を武力で鎮圧した軍事政権による国名の変更には正統性がないという主張がビルマ民主化を目指す人々から出されており、難民に関わる仕事をされてきた渡辺さんもそのことを尊重されて「ビルマ」という呼び名が使われています。渡辺さんが活動をされたビルマ難民キャンプに住まうのはビルマの少数民族であるカレン人の方々です。

 SVAの現地での拠点があるタイ北部の町メーサリアンは、本書によるとチェンマイから車で約4時間かかるところで、道中には悪路もかなりあるようです。ちなみにタイ国際航空のウェブサイトによるとチェンマイはタイの首都バンコクからだと2時間40分、バンコクは成田国際空港から6時間半(日本との時差は2時間)かかります。この本は、著者渡辺さんがビルマ難民キャンプの図書館に関わる決断をし、活動拠点となるこのメーサリアンの町にたどりつくところから話が起こされています。そして、初めてカレンの子どもたちと関わった経験や、図書館の設立計画に着手し、カレンの人々の中に図書館の担い手をを育てていこうとする様が描かれています。どのような子どもたちにも広く使えるような図書館にするために、無料の図書館を!、カレンの人の母語であるカレン語と、いつかビルマに帰れる日のためにビルマ語の本を!など、著者の思いが次第にカレンの人たちと一緒になって難民キャンプ図書館となって結実していく様が描かれています。

 また、それだけではなく、渡辺さんご自身のライフヒストリーも描きこまれています。渡辺さんのお母様は文庫に携わっていらっしゃるのですが、ご自身の幼少の頃からのことや、学校図書館に関わる中で接しえた子どもたちの輝きに触れたことなども描かれています。日本の学校図書館でのそのような経験と、カレンの子どもたちとの交流が、まさに管理人の中で二重写しになっているように思いました。さらに、カレンの人たちはビルマの中でどのような歴史を歩んできたのか、かつてビルマを植民地にしていたイギリスがビルマ族とカレン族をどのように扱っていたのか、第二次世界大戦中にビルマまで戦線を広げた日本軍がカレンの人々に何をしたのかまでが描きこまれています。実際、著者もカレンの人たちの中で苦労されたことも多かったようです。これらのことが描きこまれていることにより、この報告記『図書館への道』の輝きがとても増しているのだと管理人は理解しました。

 この報告記の最後に渡辺さんが記したことをここで紹介したいと思います。任期を終えて帰国した後、再訪した難民図書館で、著者は一枚の絵を発見したのだそうです。お医者さんになりたい、先生になりたい、パイロットになりたい、そのような夢を抱いた人たちが図書館を指差し、駆け寄っていく絵なのだそうです。自分たちの人生を切り開くための手がかりを得に図書館へ行こうというところまでカレンの人たちの中に根付いたのだと言うことが良く伝わってきました。

 AMAZONなどウェブ上で語られているほかの方の読後感を見ていると、「著者自身の生い立ちやビルマ難民キャンプでの図書館建設~図書館員養成の活動を通して、本の力、図書館の力が伝わってきました。3歳の子を持つ父親として、子供を育てる上で、本との関わり方を考え直すきっかけとなりそうです。また、海外支援のあり方も考えさせられる本です。」と語る方がおられました。同感です。人が生きていくために考える、そのきっかけとして本は大変重要なのであり、その本を利用者が利用するお手伝いをするために、図書館はまだまだしっかり仕事をしなければなりません。この『図書館への道』は「海の向こうの話に過ぎない」のではなく、私は、この本が日本で図書館に関わっていくための力を私たちにたくさん与えてくれるのではないかと考えています。是非多くの方にも手に取っていただきたい本だと考えています。

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