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2007.09.29

[他団体集会情報]都立図書館を考える会「協力貸出の今、これからを語ろう 区市町村立図書館と都立図書館職員の意見交換会」報告

 都立図書館を考える会から、「協力貸出の今、これからを語ろう 区市町村立図書館と都立図書館職員の意見交換会」と題された集会の御報告をいただきました。都立図書館を考える会発行の「考える会ニュース」に掲載されていたものです。当ウェブサイトに掲載してよろしいとの事でしたので、転載してご紹介します。

    *****************
「協力貸出の今、これからを語ろう 区市町村立図書館と都立図書館職員の意見交換会」
都立図書館を考える会(2007.7.23)報告   


7月23日に行われた区市町村立図書館との意見交換会の報告です。

    参加者 区立4人、市立4人、都立7人、
         その他2人(中学校1、専門1)、
         市民4人、計21人

1.都立図書館からの報告
都立図書館労働組合の竹内分会長が事業年報の数字などを整理して協力貸出の変化などを報告しました。
【質疑】
 Q.貸出冊数が減っているのは、申し込み自体が減っているのか、貸出できないものが増えたのか。
 A.以前は申し込み冊数に対して何割提供したかという数字が出ていたが、今は出ていない。あるものだけしか申し込まれないので、提供率はあまり意味がない。
 Q.「具体的方策」「年次的取組み」作成メンバーの構成は?
 A.「具体的方策」は、都立のそれぞれの部署で、プロジェクトチームを作って作業を積み上げ、教育庁でとりまとめた。「年次的取組み」は、都立の企画経営課主導で作られ、職員用メールで全職員に示された。

2.区立図書館からの報告
 * 協力貸出が、多分一番多い館だと思うが、「なるべく都立から借りないようにしている」という申し合わせ?になっている。他の区から借りられないものだけを都立から借りている。委託については、常勤職員が6人いて、レファレンスデスクにすわる。リクエスト処理や返却も含め、相互貸借は職員がやる。他自治体からのweb予約分の集荷は委託業務。委託している区で、相互貸借業務を職員がやっているのは目黒、文京、江東ぐらいではないか。
 * 予約件数は増えている。他区からの借用が増え、都立からはなるべく借りない、「アテにしない」ようになってきている。利用者も図書館を使いこなしている。週2~3便欲しいくらいなのに、都立のやり方は逆の方向に流れている。
 * 11館中8館が委託。相互貸借は直営業務になっている。

【質疑、意見交換】
 市立:館長連絡会では、市立からは発言があるが、区部の館長からは声が出ない。都のやりかたに全く怒りを感じていないのだろうか。
 区立:怒りを感じていないとまでは言わないが、比較的区部図書館同士で対応できている、ということだろう。
 区立:区立間の貸借が多くなっているが、それでも都立から借りるものが三分の一はある。館長連絡会は都立が招集し、都立からの話を聞く会になっている。中央館長と現場との距離が遠く、現場の声が伝わっていかない。地域館の係長級の館長が集まるような場がない。
 都立:相互貸借が委託業務になっているとすると、委託業者に協力ハンドブックの中味、マニュアルをどこまで説明しているのか。電話で区立の人と話をしていて、メトリックスの検索のやり方などあまり分かっていないと感じることもよくある。
 区立:常勤職員でも、それに対応できるのは半分くらいではないか。
 ・ 担当者会議に委託の人が出るケースもあるらしい。職員の方でも、知っている人がいなくなるのでは。

3.市立図書館から
* 6月29日の館長連絡会で、「年次的取組み」が説明された。東公図廃止の時と同じ轍を踏むのでは、と危惧している。押し返すためには、区立図書館の声をまとめること、市民の声を届けることが大事だが、市民には知らされていない。都立の立場は市町村の窓口で周知徹底してほしい、ということだ。館として市民に説明するためにチラシをつくり、ホームページにも載せている。図書館協議会がこの件で、東京都に要望書を提出した。要望書と生涯学習スポーツ部社会教育課長名の回答を図書館のホームページに載せたところ、都教育庁から市の教育長に電話が入り、いろいろあったが結局は削除せざるを得なかった。図書館協議会は独自に外部に要望書を出す権限はない、というが、図書館協議会がそういう危機感を持たざるを得ない状況になったこと自体が問題なのだ。
* この4月に図書館に入って、まだ詳しいことはつかめていない。都立から本が届いてから「閲覧のみ」ということがわかり、他市から借りて提供することもある。
* リクエストの借用先は、まず都立、なければ他市、他区の順。都立にないことも多く、他市・区から借りることが多くなった。都立からの借用本の返却時に汚破損のトラブルが多く、担当者が非情に神経質になってすべてのページをチェックしている。「閲覧のみ」に関しての利用者とのトラブルは日常茶飯事。横断検索などを利用して所蔵館を調べて来る人も増えた。利用者は「ある」ことイコール「借りられる」と思っていて、わかってもらうのが大変。国会図書館からの借用が増えている。

【質疑、意見交換】
 区立:都立は本を貸したくないということだろう。ではどうすればよいか、というところは何もしていない。ネットワークの要であるべき都立が要であることを放棄している。
 区立:国会が間口を広げて、借りやすくなった。直接国会を案内することもある。都立の役割はいったい何なのかと思う。
 市民:かつて借りられたのに、今は借りられないことに利用者からのトラブルはないのか。
 市民:利用者をないがしろにしているのではないか。具体的な例で、市民にはっきりと伝えてほしい。図書館は、つきあげないとよくなっていかない。市民と図書館とが協力して、動きを作っていかないと・・・
区立:地域館ではトラブルはほとんどない。消耗品である以上、多少の汚破損は当然で、それでトラブるのはおかしい。以前はこわれのひどいものも貸し出されたこともあるので、その意味では良くなった部分もある。借用の際、都立よりブロック内を先にというのは、都立が指示した。
都立:電算システムの入れ替えで長期休館したときに、検索が効かなくなるので、自治体同士でやってほしいと要望したことがある。昔は性善説に立っていたが、基本的なところが違ってきている。貸出先の図書館での個人貸出を前提に一律に発行年による協力貸出しないものを決めたのだから、逆に館外に出さないのなら、一律で協力貸出禁止ではなく、個々に判断するという方向に働きかけてもよいのではないか。
都立:「具体的方策」でもそれ(協力貸出禁止の一部解除)は言っている。アメとムチといった感じ。
市民;利用者のためには早く提供することが必要なので、他から借りるにしても、そのあとで自館の蔵書構成を考えて購入することも検討するべきだ、また都立への要求も続けて欲しい。
区立:区では、1億、2億の資料費を持っているところがある。職員問題は厳しいが、都民の利用があるので予算は減らない。23区が束になってサービスすればもっといいサービスができるはず。都立が「自館優先」という立場になった今、区や市を超えた横断的な都民の力で運動していくしかない。
都立:協力貸出が減ったのは、「あり検報告」が根っこにある。「資料の保全が大切」と言っているが、資料保全担当に話しがあったわけではない。都立と区市町村の担当者との間で、「汚破損」をめぐって悪循環がおきている。
  「参考調査」と「協力」が2つの柱だったのが、「あり検」以降「協力」はママ子扱いだ。都立を育ててきたのは、区・市からのつきあげだ。あきらめないで言い続けてほしい。
市民:都立のカウンターでは、「区市町村を通して借りられる」ということを言わない雰囲気があった。自分は、退職前、なるべくそれを言うことにしていた。
学校:中学校の図書館でリクエストに取り組んでいるが、中学校は協力貸出の対象とされていない。地元では、団体貸出の制度があるが、他区・市からは借りられない。
都立:都立には司書職制度があるのに、なぜ声をあげないのかと思われるだろう。現場では、職員の声を一応は聞くが、何一つ反映されない。ある世代までは、都立の職員は区市立のために働くという意識があった。新人は区市立に研修に行けた。「東公図」が「館長連絡会」になり、都から一方的に伝える場になってしまい、都立と区市町村の方たちとの交流の場がなくなってしまった。図書館協議会の人選もかわり、「来館者重視」になっている。
  団塊の世代が退職したあと、都立を支えるのは区市立の声。見捨てずに何とか協力して言い続けて欲しい。
区立:区立全体が、というのは無理でも、2人でも3人でもわかってくれて、声を出してくれる館長を増やしていく運動を続けたい。

今後の取り組みなど
 当初この会は、都議会に署名を提出するために立ち上げたが、その過程で意見がたくさん寄せられた。「よく運動を始めてくれた」「現状をなんとかよくするためにがんばってほしい」などの声が続き、議会で請願があっさり不採択になったあともこのままでは終われないと感じた。東京都が「『具体的方策』の協力貸出の見直しについて3年間かけて検討する」といっている以上、その期間は運動を継続していく必要がある。「協力サービスを後退させない」ということに絞ってなにか運動を起こせないかと模索している。
 とりあえずは、都立と区市町村との職員がお互いに現状を報告しあい、意見を交換しようと、今日の会を持った。結論が出たわけではないが、秋にはもう少し広げてこのような会を持ちたい。東京都の動きや都議会の状況なども考え合わせながら、どう動けばいいのか考えて行きたい。

2007.09.18

もう一度S.R.ランガナータン『図書館学の五法則』を読む

 図書館の存立基盤が問い直されている今、私たちにできることの一つに、「温故知新」ということがあるだろう。つまり、古典といわれているものから新たに栄養を汲み取って、現在の活動に生かしていくということである。今回は、図書館に携わるものならば多くが知っているであろう、インドの図書館学の父と呼ばれたS.R.ランガナータンによる『図書館学の五法則』を取り上げたい。まずは例によって書誌事項の紹介から行う。

  図書館学の五法則 / S.R.ランガナタン著 ;
  渡辺信一, 深井耀子, 渋田義行共訳. --
  東京 : 日本図書館協会, 1981.9
  425p ; 22cm
  注記: 監訳: 森耕一 ; 原著第2版の翻訳
  ISBN: 4820481053
  初版発表:1931

よく知られたとおり、S.R.ランガナータン(1892-1972)は数学者であり、図書館学者であった。マドラス(現在のチェンナイ)のあるタミル・ナードゥ州で生まれ、マドラス大学等で教鞭をとっていた。図書館に携わるようになったのはマドラス大学においてである。

 ところで、インドは多言語多文化多民族の国であり、タミルナードゥではヒンディ語ではなくタミール語が用いられている。ちなみに、インドでどのくらい多くの言語が用いられているのかの一端を、こちらのウェブ版新聞のリンク集でご覧いただこう。これはAbyz Newslinkというウェブページである。

 この『図書館学の五法則』で取り上げられているのが、よく知られた下記の5つの原則である。意訳をしてあるのでご了承願いたい。

1.資料は利用するためのものである(Books are for use)
2.それぞれの人に、その人にとって必要な資料を(Every reader, His or Her book)
3.それぞれの資料を、その資料を必要とする人に(Every book, its reader)
4.図書館利用者の時間を節約せよ(Save the time of the reader)
5.図書館は成長する有機体である(Library is a growing organism)

 ランガナータン当人には、帰納的にまとめられた原理から、図書館活動の現象が説明できないだろうかという考えがあったようである。各原則には実務の経験が盛り込まれているだけでなく、「現在行われていない、あるいはいまだ知られていないそのほかの多くの実務を含んでいる」(本書p.20)ものだということが述べられている。しかし、よく読みなおしみると、この本には、初版の発表から70年以上がたった21世紀に生きている我々にも良く分かる実例が随所に述べられている。

 例えば、第1原則「資料は利用するためのものである」に目を通してみる。利用者に図書館を使っていただくために、どの様な配慮が必要なのかを検討するために、図書館の立地や開館時間、家具、図書館員に必要な待遇や学識、図書館員のサービスに必要とされることなどが展開されている。「本の利用を教える」という、現在の情報リテラシー教育に繋がりそうな節も設けられている。

 第2法則「それぞれの人に、その人にとって必要な資料を」では、人がこの社会で生きていくためには知識の獲得が必要なことを踏まえながら、性別や居住地、その人の直面している条件(障害の有無、施設に入っているか否か、等)に関わらず、アクセスの保障が重要になることが論じられている。あわせて、その当時の世界各国の状況などが紹介されている。そして、「それぞれの人にその人にとって必要な資料を提供する」を実現するために、国の義務や図書館管理者の義務、職員の義務、利用者自身の義務が論じられている。

 第3法則「それぞれの資料を、その資料を必要とする人に」では、本をどの様に提供するのかという視点から、配架方法や目録のこと、レファレンスのことなどが論じられている。また、「拡張サービス」の節では、未識字者への朗読や、南インド諸言語での出版点数が少ないがための手書き本の翻訳資料の提供、図書館での催し物などのことが論じられている。

 詳細は是非皆さんで読んでいただきたいのだが、私が本書を何十年かぶりに再読して、この『図書館学の五法則』には現在の諸問題を考える上で有用な知恵が詰まっているのだということを再認識した。例えばこのサイトの別のページで取り上げている非正規雇用職員の問題にこの『五法則』の光を当てて考え直してみることも一つの方法なのだろうと考えている。また、この本にはサービスの実例として、児童のため、障害者のため、職人のため、新識字者のため、仕事に携わっている人のため、迷えるスペシャリストのためのサービスが論じられている箇所がある。現在も障害者サービスや多文化サービス、ビジネス支援サービスなど様々のサービスが各地の図書館により取り組まれているが、それぞれの人に必要な資料を届けるという視点から、図書館利用者のニーズにしっかりと応えるということがますます重要になっていくであろう。

 この『図書館学の五法則』の再読で、私が試みたことがもう一つある。それは、『五法則』を当時のインド史と少しだけでも良いから重ね合わせて読んでみたいと考えたことである。本書初版発表はご存知のとおり1931年である。1947年にインドはイギリスから独立するので、1931年とはそのような動きに向かってインド社会が様々な動きを見せていた時なのだ言えよう。また、現在でもインドは多民族多言語多文化の国であり、そのような状況をこの五法則と重ね合わせて読むことにより、また『五法則』から新たなる光が見出せるのではないかと考えたのである。これもまた詳細は是非皆さんで試してみていただきたい。昨今、インドはBRICSの一角として大変注目されているので、大きな書店には数多くのインド関係書物が置かれている。もちろん図書館にも様々なインド史の本が置いてある。私はその中で『近代インドの歴史』(ビパン・チャンドラ著、栗屋利江訳、山川出版社刊行)を脇において読んでみた。『近代インドの歴史』では、次のように記されていた

   民族主義思考のインド人が愛国主義や、経済、社会、政治
   に関する近代的な思想を普及し、全インド的な意識を醸成す
   るのに主たる手段は出版であった。19世紀後半に、大量の
   民族主義的な新聞が姿をあらわした…小説やエッセイ、
   愛国主義的な詩という形をとった民族主義的な文学も、民族
   意識を高揚するのに重要な役割をはたした…」(p.204)

 このような文言の後、インド各言語で言論活動を行った人々の名前がそこには記されていた。また、同書には当時のインド社会で教育の果たした役割の重要性についても指摘がある。ランガナータンの活躍した当時のインド社会の社会の一端がほんの少々だが分かったような気がした。もっとも一冊読んだから『五法則』のことが分かったなどとは言えないのであり、今後ともランガナータンのことは自らも含めて多くの人がもっともっと手がけていく必要があると考えている。

 21世紀初頭の日本。常世田良さんが2005年度JLA中堅職員ステップアップ研修で述べたように、日本社会は「自己判断自己責任」型社会へと向けて変わり続けていく。そして変わり続ける日本社会の中で情報の持つ役割は増えこそすれ、減りはしない。まさにこの社会の中で『図書館学の五法則』が新たに生き生きとした光を放つのだと考えている。

 一方で、残念ながら今回取り上げた『図書館学の五法則』は皆さんご存知のとおり新刊書店では手に入らなくなっている。「復刊ドットコム」がこの資料を取り上げているおり、多くの人が復刊の希望を寄せている。この取り組みが実り多いものになることを願ってやまないのだが、私たちは何も『五法則』の復刊を座して待つ必要はないのである。社会がそして図書館が荒波にさらされている今だからこそ、それこそそれぞれのお近くの図書館で、多くの人がもう一度この『図書館学の五法則』を手に取り直し、読み直してランガナータンが活動していた頃の状況と対話していただき、それを現在のそれぞれが活動する場に生かしていただければ、と考えている。

参考
常世田 良. “図書館と情報リテラシー”. 情報管理. Vol. 48, No. 12, (2006), 835-837
同 "情報リテラシー育成支援" JLA中堅職員ステップアップ研修資料 http://www.jla.or.jp/kenshu/resume2005-2/4.tokoyoda.pdf (2007/09/17確認)
ビパン・チャンドラ著、栗屋利江訳『近代インドの歴史』 山川出版社,2001

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