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2007.10.28

「利用者と向き合う」ということ

 お気づきかもしれないが、図書館司書、中でも利用者との対応の最前線に立つ者の仕事には、対人サービスの要素が色濃く現れる。様々な人生経験の中から様々な情報ニーズをもって訪れる利用者に向き合い、想いをお伺いし、そしてその方の必要な情報へのアクセスをお手伝いする。その中で、それぞれの司書は力を尽くそうとしているわけである。

 利用者としっかりと関わろうとした司書の顔は、利用者のほうでも良く覚えていてくださる場合が多いらしい。私などは例え非番の時であっても利用者の方から声をかけてくださることがよくある。光栄なことである。例えば成田空港の出発ロビーで、「司書さんですね、どちらまでですか?」「はい、シドニーまでです」等のやり取りが生まれるわけである。

 今回は、そのようなやり取りの中から、特に私の心に残っておりなおかつ利用者から「他の人に紹介してよろしい」とお許しいただけたケースを記そうと思う。しばらくお付き合いいただきたい。

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 それは、とある土曜日のJRの車内での出来事であった。毎週のスケジュールにしている本屋巡りに向かおうと、中央線に乗り込んだところ、温厚な年配の紳士が声をかけて下さった。実は、私がかなり長期間対応していたレファレンスの依頼者であった。仮にA先生とさせていただく。A先生は、20世紀にスイス等欧州で活躍した音楽教育家でありリトミックの創始者であるE.ジャック=ダルクローズ(1865-1950)の研究をされている方である。

 話は2005年に遡る。A先生がそのレファレンスの依頼のために来館した。ジャックダルクローズは"Le rythme, la musique et l'education"(「リズム・音楽・教育」の意味。Fischbacher & Rouartより刊行)という本をフランス語で著しているのだが、Julius Schwabeの翻訳によるドイツ語訳"Rhythmus, Musik und Erziehung"(Benno Schwabe刊行)には存在する「リズムの根源は労働」という件が原書の今手元にある版には存在しないので、そのドイツ語訳版の元になったフランス語原典版を探し出したいということであった。ちなみに、この"Le rythme, la musique et l'education"は開成出版および全音楽譜出版社から日本語訳が出版されている。

 A先生のおっしゃる「リズムの根源は労働」という言葉を聴いて私が連想したのは、一つはニシン漁を背景に生まれた北海道民謡の『ソーラン節』であり、もう一つはかつてのロシアの農奴たちが船を曳く情景の歌だという『ボルガの舟歌』であった。音楽と人生の深い関わりを語る言葉なのだと、A先生が提示した言葉を捕らえたわけである。そして、その言葉が翻訳版にあって原語版にはないということの問題意識も「わかった」上でレファレンスの作業に赴いたわけである。

 これは少し脱線になるが、私がこのように感じることができたのも、ある程度人間をやってきて、図書館に身を置いてからの経験が蓄積していたからなのだと感じている。幼き日々の学校教育から、司書になってからの様々な知識・経験、その他様々なことの積み重ねが日々の利用者との関わり方に出てくるのだと私は確信している。

 本筋に話を戻していこう。司書が本を探し出すときに武器にするのは当然の事ながら目録である。まず目にしたのは、日本国内の大学図書館が大方参加する総合目録であるNACSIS-WEBCATである。しかし、これで見つけられるのはA先生がお持ちの版でしかない。次は北米をベースに世界中の図書館が参加し、日本でも若干の大学図書館が参加するOCLCの"WorldCAT"や、ドイツのカールスルーエ大学図書館が提供している欧州・北米・豪州図書館検索への橋渡しシステムである"KVK"であった。それらしき版の資料が見つかったら、コピー取り寄せ依頼を行ったのは言うまでもない。しかし、それらからも、A先生の望む資料は見つけられなかった。

 求める資料への道筋が困難なとき、司書は時として図書館の公式制度上のつながりだけではなく個人的なつながりをも武器にして闘う。武器として管理人が採用したのは、国内外にある図書館関係のメーリングリスト。管理人が所属する研究団体のメーリングリストや、その他有志が集まるもの。海外では、国際図書館連盟(IFLA)が運営するIFLA-Lというリストにメッセージを投稿した。おかげで、国内外の各地からありがたい助言を頂いた。もちろん、寄せられたメッセージを基にして次の行動に移っていたのだが、それでもA先生の望む資料は見つけられなかった。

 ジュネーヴ・ジャック=ダルクローズ学院(Institute Jacques-Dalcroze Geneve)とのやり取りもあった。若干の行き違いもあったが同学院の司書とやり取りを続けたことにより、ジャック=ダルクローズに関する手稿など生資料がジュネーブ大学図書館にあることまで分かってきた。しかし、その中にもそれでもA先生の望む資料は見つけられなかった。だんだんと月日ばかりが無駄に過ぎていった。

 当人及び当該資料の調査が暗礁に乗り上げたため、A先生との協議により、関係者に調査の網を広げた。最前の国際図書館連盟経由で知ることとなったスイス国立図書館によるサービス"SwissInfoDesk"--スイスのこと全般に対応するレファレンスサービス--に対してジャック=ダルクローズ関係者についての調査を依頼したのだが、これもまた効果なしに終わってしまった。

 もはや、司書の立場で打てる手は尽きたと考える他はなくなり、A先生にご自身での研究者との連絡をお願いしたうえで管理人は作業の続行を断念した。着手から1年。その場に残ったのは後味の悪さだったかもしれない。

 JR車内でA先生にお目にかかったのは、管理人が断念した半年後のことであった。A先生によると研究者との連絡は失敗に終わったとのことで、今までに得た情報だけで結論を出し、学会に今回の件について発表したいとのお話を頂いた。車中では、目録の上に目的の資料を表すことや、目録から必要な情報を読み取ることがいかに難しいかという話になり、また私に対するお礼とねぎらいの言葉も頂いた。そのことを伺って、自分自身、肩の荷がようやく降ろせたという感があったように覚えている。

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 図書館に身を置く私自身の活動の一端をお目にかけた。先ほど書いたように、幼き日々の学校教育から、司書になってからの様々な知識や経験、それらもろもろのことの積み重ねが日々の利用者との関わりにとってとても重要になるのだという想いを新たにしている。これはきっと他の司書の方にとっても同様であろう。

 図書館とは、ただ単に機械的な操作により図書を貸し借りするだけの場ではない。様々な人生経験の中から様々な情報ニーズをもって訪れる利用者と、様々な人生経験に裏打ちされたプロフェッショナルとしての司書たち、そして様々な立場の制作者が生み出した資料の出会いの場である。より良い3者の出会いを積み重ねていくために、今後とも私たち図書館に関わる者はしっかりと歩みを進めていくことが求められているのだと、私は再確認した。

2007.10.07

[行事案内]日韓草の根図書館交流シンポジウム「元気で楽しい! 韓国の絵本の世界を知ろう!」

 日韓草の根図書館交流シンポジウムと銘打たれた集会の案内をいただきました。大変興味深い催し物のようですので、是非ご参加ください。

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한-일 풀뿌리 도서관 교류 심포지엄
  "재미나고 즐거운 한국 그림책이 열어가는 세계를
   알아보자!!!"

韓国の富川(プチョン)市は、図書館施策や図書館市民運動で、今韓国の先端を走っています。富川市と川崎市それぞれの図書館や図書館に関係のある市民活動の現状と直面している課題は何かをお互いに知り、一緒に考え、語り合いませんか。多くの皆様のご参加をお待ちしております。

❉日時:10月31日(水)12時30分開場
     午後1時~ 韓国の絵本展示と読み聞かせ
     午後2時~5時30分 シンポジウム
❉場所:高津市民館 12階 大会議室
     JR南武線・東急田園都市線「溝の口」下車徒歩3分 
     ノクティ2ビル
❉内容:①展示 韓国の絵本事情、パネル展示、
       富川の映像紹介など
     ②日韓草の根図書館交流シンポジウム
     ・富川市立図書館・富川市小さな図書館協議会「韓国の
       図書館はいま」
     ・川崎市立図書館・川崎の図書館ともの会「川崎の
       図書館はいま」
     ・意見交換「日韓が手をつなげば、図書館はこんなに
       元気に!」
❉参加費: 資料代として500円   
❉主催:川崎市と富川市の図書館交流を進める実行委員会
❉共催:川崎市教育委員会
❉後援:川崎市、富川市、読書のまち・かわさき事業推進委員会、日本図書館協会

2007.10.03

「図書館非正規雇用職員」について考えること

                  池沢昇
                  (東京の図書館をもっとよくする会
                   事務局)
 
 「図書館スタッフのための仕事のツボ--非常勤職員・委託スタッフのための図書館連続講座」に関連して、意見の交換がこの会のウェブで行われています。「東京の図書館をもっとよくする会」にこのやりとりにどんな感想があるのかとお尋ねもありましたので、また、このことに関して「会」としての立場を明らかにする必要があるとも思いましたので、考えていることを述べます。

 「会」は、図書館を維持発展するためには、専門的知識と熱意を持つ図書館員によって運営されることが必要不可欠という基本的立場をもって活動しています。非正規雇用職員については、非常勤職員と受託会社社員とでは、それぞれの置かれている状態から若干異なった認識をもっています。非常勤職員については「専門的知識と熱意を持って働いている図書館非常勤職員が民間委託や経費削減のために解雇されないように取り組む」、受託会社社員については「低賃金・無権利状態の待遇改善を行政・受託会社に求める」が「会」の姿勢です。これは、このことについて「会」が今何を一番重要に考えているのかということの一致点を表明したものです。当然ながら、会の中には、このような表現ですむはずのない、さまざまな意見や思いがあると思います。

 「会」は、東京23区の図書館委託の実態を把握するために、中央図書館長にアンケートを行い、その集計に分析を加えて、昨年春に発表しました。「受託先の図書館勤務社員の賃金はいくらか」の設問に、回答は「把握していない」11区、「記入なし」4区でした。委託を行っている図書館行政の全責任者が、図書館で働いている受託会社の社員の給料を知らないという異常な回答でした。この分析はかなり仔細に行いました。長文になるのでここでは触れません。「会」のウェブに掲載していますので見ることができます。

 以下は、「会」の事務局ということを離れての発言となります。
 図書館非常勤は、地方公務員法に規定され、各自治体の条例等により位置づけられているので、大枠については共通しています。しかし、勤務日数や給料等の勤務条件はそれぞれの自治体で決定されます。その決定に関わるためには、決定者と交渉することが必要になり、そこに労働組合が大きな役割を果たすことになります。決定者とは自治体の長ですが、実際にはこのことの事務を統括する部署の責任者となります。各自治体の差異が大きくありますので、学習会を開いても細かい部分については難しいとは思いますが、全体的な構図を捕らえることはできると思います。

 受託先の社員を含む非正規雇用職員に起きている問題は、社会全体で起きている問題の図書館版だと思います。今、日本では終身雇用制が破壊され、正規常勤労働者が非正規の低賃金・無権利の労働者に置き換えられつつあります。それにより低賃金の労働者が大量に作り出され、それらの人々の問題にとどまらず、社会全体を不安定にしています。厚生労働省は8月28日に「ネットカフェ難民」の実態調査結果を公表しました。その数を全国で5,400人と推計し、日雇い派遣や日雇い雇用などの非正規雇用がその半数を占め、4割が失業者と無業者です。9月29日の朝日新聞は国税庁の調査を紹介し、民間企業の会社員・パート労働者の昨年1年の平均給与が435万円で9年連続で減少したこと、年収200万円以下の人が1000万人を超え格差が広がった、と報じました。

 かつてのレーガン、サッチャーの新自由主義時代を「恥知らずの時代」と米英では呼んでいるそうです。日本では今「恥知らずの時代」が横行するのを眼前に見ています。「少子化」の問題も、労働者を再生産する最低の賃金さえ支払われず、加えて子育ての環境も悪化したからです。このことは、本来なら国を衰退させるのですが、外国のさらに低賃金の労働者を移入しますから、国民は衰亡しても、国や大企業は繁栄します。

 最近では、このような流れにたいする批判や「拝金主義」が何を作り出したかが見えてきたことから不安が広がっています。昨年「国家の品格」が大ベストセラーになったのもその現われに思えます。少し前まで、強者や勝者をもてはやしていた新聞やテレビでも、格差社会やワーキングプアの問題を正面から取り上げることが多くなってきています。そのようなマスコミの変化は、社会全体の考え方の変化に即応したもののように見えます。まだ、変化の流れは弱いのですが、「恥知らずの時代」はそんなに長く続くはずもないし、続かせたくもありません。

 図書館の非正規雇用職員の問題は、日本全体を覆っている流れの中の中でおきている問題でもあります。それを変えていくためには、自治体に雇用者としての責任を果たすように要求し交渉することが当然に必要になります。そして、自治体自身も、周囲の状況を眺め、国にこのような政策を推進させる圧力の下にあるので、国に政策を転換してもらうことが必要です。それがなければ、当然個々の現場での努力によって改善させることはできますが、十の努力を十の成果につなげるのは難しいと思います。 

2007.10.01

市民がつくる図書館・全国集会に参加しよう!!

■日時:10月28日 午後1時半~8時 (ご都合のよい時間帯だけの参加もできます)
■場所:日本図書館協会 2階 研修室   
■内容:
 1.各地からの報告市民がつくる図書館政策(案) を各地から報告して頂き、話し合います。
 2.交流会  図書館を大切に思う市民が広く出会う場、 率直に交流する場にします。
 3.懇親会  軽食を取りながら、交流や情報交換をさ らに深めていきます。
■参加費:
 (1,2)→500円
 (3懇親会)→1000円
■日程:
 1時半~2時半→各地からの報告
 2時40分~4時40分→ 交流会
 5時~8時→懇親会
■問い合わせ: こちらからお願いします

※第93回全国図書館大会協賛事業

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