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2007.10.03

「図書館非正規雇用職員」について考えること

                  池沢昇
                  (東京の図書館をもっとよくする会
                   事務局)
 
 「図書館スタッフのための仕事のツボ--非常勤職員・委託スタッフのための図書館連続講座」に関連して、意見の交換がこの会のウェブで行われています。「東京の図書館をもっとよくする会」にこのやりとりにどんな感想があるのかとお尋ねもありましたので、また、このことに関して「会」としての立場を明らかにする必要があるとも思いましたので、考えていることを述べます。

 「会」は、図書館を維持発展するためには、専門的知識と熱意を持つ図書館員によって運営されることが必要不可欠という基本的立場をもって活動しています。非正規雇用職員については、非常勤職員と受託会社社員とでは、それぞれの置かれている状態から若干異なった認識をもっています。非常勤職員については「専門的知識と熱意を持って働いている図書館非常勤職員が民間委託や経費削減のために解雇されないように取り組む」、受託会社社員については「低賃金・無権利状態の待遇改善を行政・受託会社に求める」が「会」の姿勢です。これは、このことについて「会」が今何を一番重要に考えているのかということの一致点を表明したものです。当然ながら、会の中には、このような表現ですむはずのない、さまざまな意見や思いがあると思います。

 「会」は、東京23区の図書館委託の実態を把握するために、中央図書館長にアンケートを行い、その集計に分析を加えて、昨年春に発表しました。「受託先の図書館勤務社員の賃金はいくらか」の設問に、回答は「把握していない」11区、「記入なし」4区でした。委託を行っている図書館行政の全責任者が、図書館で働いている受託会社の社員の給料を知らないという異常な回答でした。この分析はかなり仔細に行いました。長文になるのでここでは触れません。「会」のウェブに掲載していますので見ることができます。

 以下は、「会」の事務局ということを離れての発言となります。
 図書館非常勤は、地方公務員法に規定され、各自治体の条例等により位置づけられているので、大枠については共通しています。しかし、勤務日数や給料等の勤務条件はそれぞれの自治体で決定されます。その決定に関わるためには、決定者と交渉することが必要になり、そこに労働組合が大きな役割を果たすことになります。決定者とは自治体の長ですが、実際にはこのことの事務を統括する部署の責任者となります。各自治体の差異が大きくありますので、学習会を開いても細かい部分については難しいとは思いますが、全体的な構図を捕らえることはできると思います。

 受託先の社員を含む非正規雇用職員に起きている問題は、社会全体で起きている問題の図書館版だと思います。今、日本では終身雇用制が破壊され、正規常勤労働者が非正規の低賃金・無権利の労働者に置き換えられつつあります。それにより低賃金の労働者が大量に作り出され、それらの人々の問題にとどまらず、社会全体を不安定にしています。厚生労働省は8月28日に「ネットカフェ難民」の実態調査結果を公表しました。その数を全国で5,400人と推計し、日雇い派遣や日雇い雇用などの非正規雇用がその半数を占め、4割が失業者と無業者です。9月29日の朝日新聞は国税庁の調査を紹介し、民間企業の会社員・パート労働者の昨年1年の平均給与が435万円で9年連続で減少したこと、年収200万円以下の人が1000万人を超え格差が広がった、と報じました。

 かつてのレーガン、サッチャーの新自由主義時代を「恥知らずの時代」と米英では呼んでいるそうです。日本では今「恥知らずの時代」が横行するのを眼前に見ています。「少子化」の問題も、労働者を再生産する最低の賃金さえ支払われず、加えて子育ての環境も悪化したからです。このことは、本来なら国を衰退させるのですが、外国のさらに低賃金の労働者を移入しますから、国民は衰亡しても、国や大企業は繁栄します。

 最近では、このような流れにたいする批判や「拝金主義」が何を作り出したかが見えてきたことから不安が広がっています。昨年「国家の品格」が大ベストセラーになったのもその現われに思えます。少し前まで、強者や勝者をもてはやしていた新聞やテレビでも、格差社会やワーキングプアの問題を正面から取り上げることが多くなってきています。そのようなマスコミの変化は、社会全体の考え方の変化に即応したもののように見えます。まだ、変化の流れは弱いのですが、「恥知らずの時代」はそんなに長く続くはずもないし、続かせたくもありません。

 図書館の非正規雇用職員の問題は、日本全体を覆っている流れの中の中でおきている問題でもあります。それを変えていくためには、自治体に雇用者としての責任を果たすように要求し交渉することが当然に必要になります。そして、自治体自身も、周囲の状況を眺め、国にこのような政策を推進させる圧力の下にあるので、国に政策を転換してもらうことが必要です。それがなければ、当然個々の現場での努力によって改善させることはできますが、十の努力を十の成果につなげるのは難しいと思います。 

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コメント

 「非常勤」改め、老年学情報センター(東京都老人医療センター内)の宮本、と申します。医学図書館の非常勤です。
 「会」としての考え方を示していただきましてありがとうございます。

 非常勤について注目するポイントがなぜ「雇い止め」だけなのか?と考えると、むしろおおっぴらに触れられないところにこそ、なにか問題の本質があるのかなという気がしました。正職員の立場から見ればそういうまとめ方で収まりがいいのだろうと思いますが、立場が違えば、ちがう問題意識になってもおかしくないのではとも思いました。

 非常勤がどうの、委託がどうの、という、個別の分析のほかに、正職員と非常勤・委託社員など雇用の形式が異なるスタッフとを併せて、総合的に見て、司書のあり方としてどうなのか?という視点でもみていただきたいなと思います。そうしないと司書の制度の確立をめざすというところと話がつながりそうにありません。現状の図書館担当の正職員について全く触れていないということも気になりました。司書専門職の維持・確立についての責任・権限・活動意欲などについて、現状がどうなのかも注目して、分析していただきたいと思います。図書館の現場の職員を「このに人たちは問題は無い。守るべきいい人たち」と不問にしたまま、その組織上部(あるいは国)への要求というところに話が飛んでしまうのは、なにか不自然な感じがします。
 

 

 非常勤司書をなさっているという、ちあぼんとおっしゃる方から、SNSのご紹介をいただきました。ありがとうございます。

***************

はじめまして。突然のメッセージで失礼します。

某所で非常勤司書をしています、ちあぼんと言います。

ライブラリアンのためのSNSを作ってみました。

ライブラリアン個人の交流、情報交換などに役立てばいいなと思っています。

もしご興味がありましたら、登録いただけると嬉しいです。

▼SNSのURLはコチラです。

Cheers!Librarian SNS
http://librarian.sns.fc2.com/

管理人様
サイトへの掲載、ありがとうございます。

SNSをつくったきっかけについて、ブログに書いたところです。
お時間がありましたら、ご覧いただき、ご意見などいただけると嬉しいです。

 図書館振興運動をされている図書館員の方々の中には、「司書は正職員であるべき」という主張の元で、「非正規職員は司書じゃない」という差別的な感覚を差別とも感じていない方がいらっしゃる・・・そんな時期がずいぶん長くつづいていましたが(たぶん今も)、ちあぼんさんのような発想でのとりくみが始まったのは画期的なことだと思います。

 非常勤や委託社員の雇用条件の話になると、なぜかホームレス対策の話にスライドしてしまう正職員運動家の方がいて、おどろいたことがあります。どうもフリーター批判をしたくなる様子で。

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