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2008.11.24

[資料紹介]久慈 力著『図書館利用の達人―インターネット時代を勝ち抜く』

 今日は、書店で何気なく見つけた資料を紹介してみたい。著者はノンフィクション作家であり歴史研究家である久慈力さんである。久慈さんは日々著作活動やジャーナリスト活動、市民運動や訴訟、テレビ番組出演などの活動で図書館を使いこなしながら様々な成果を挙げている方である。

  図書館利用の達人―インターネット時代を勝ち抜く 久慈 力著
  東京 現代書館, 2008/11
   ISBN-13: 978-4768469866
  目次 はじめに インターネットよりすぐれた図書館情報/
  序章 最先端の「千代田Web図書館」がリニューアルオー
  プン/第1章 拡大する公共図書館のインターネットサー
  ビス/第2章 図書館利用の極意/第3章 図書館サー
  ビス利用の極意/第4章 国会図書館利用の極意/
  第5章 公共図書館利用の極意/第6章 省庁、行政、
  議会図書館利用の極意/第7章 専門図書館、博物
  館図書室利用の極意/第8章 大学、産業、報道関係
  などの図書館利用の極意/第9章 図書館の抱える
  問題点は/第10章 図書館利用の極意 実践編/あ
  とがき テレビ番組への出演、協力のための図書館利
  用の極意

 この本では、図書館の現状がごくわかりやすく描かれており、インターネットサービス等の現在の図書館の取り組みもしっかりと紹介されている。また、図書館を使おうとするときに、どのように図書館を選び、用い、資料を検索し、貸出や予約やレファレンスなどのサービスを受けたらよいのかという極意が簡潔に記されている。第4章から第8章にかけて国会図書館や公共図書館、大学図書館や専門図書館など各種図書館を用いるときの「極意」がわかりやすく記されており、それぞれの図書館を利用する者にとってそれらの図書館がどのような特長を兼ね備えているのかが記されている。第3章では図書館で行われているサービスが紹介されている。その中には障害者サービスやビジネス支援サービス、子育て支援サービスや高齢者支援サービス、入院患者等支援サービスや多文化サービス(在住外国人支援サービス)等、どのような利用者にもしっかりと対応していこうとしている図書館の姿勢や現状がよくわかるようになっている。

 一方で第9章では、公共図書館の世界で今起こっている図書館民間委託や指定管理者制度のこと、図書館予算の削減の問題などが記されており、筆者は日本の図書館行政の問題点を指摘している。

 そのように図書館の現状に触れた後、第10章では著者自身が自らの活動においてどのように図書館を用いてきたのかが明らかにされている。

 実は管理人はこの本の帯に記されていた「図書館を使うことは市民の権利だということを身をもって教えてくれる本だ」との帯の宣伝にひかれて買ってみたのであるが、一読した後、まさにそのとおりだとの考えを強く持った。また、これも帯に書かれていた文言そのままで恐縮なのだが「ここまで図書館を使い込んでくれるとは」本当に「司書冥利に尽きる」と思っている。

 ぜひ多くの方々に、久慈さんという図書館のパワーユーザーが送り出してくださったこの本を手に取っていただき、それぞれが直面する問題の解決のために図書館を利用しようとする際の手引としていただければ幸いである。

2008.05.04

図書館は情報の町医者--静岡市立御幸町図書館に関する資料の紹介など

 私がよく視聴するテレビ番組のひとつに、NHKの『プロフェッショナル仕事の流儀』がある。他の畑の仕事をする人の姿を目にすることが自分の栄養にもなるからである。最近のプログラムの中で印象に残ったのは、2008年4月1日放送のウェブデザイナーの中村勇吾さんの回であった。印象に残ったのは何なのかというと、ウェブデザイナーとしての仕事内容、ということよりも、中村さんが独学で始めたウェブデザインがプロの領域に到達しているということである。

 よく、私たちは「学び」を重要視するが、この『プロフェッショナル』というプログラムに出てくる人々の印象に残る姿は、やはり「学び」であり、現実との真摯なかかわりである。中村さんの例のほかにも、農薬に頼らずにリンゴ作りを進めている農家木村秋則さんが、リンゴに害を及ぼす害虫を写真に撮って図書館でその生態を研究してこられたということがこの番組の別の回で紹介されていた。

 この社会で暮らし、生き抜いていく。そのためには私たちにも「学ぶ」ということが必要になってくる。「生涯学習」が重要視されている所以である。当サイトでも今までに生涯学習にかかわる話題を何回も取り上げてきているが、生涯学習を支える組織の一つである図書館に関わる者として、私たちは生涯学習の重要性を改めて肝に銘じるべきであろう。

 生涯学習の視点から図書館を考えようとするときに、私が興味深くとらえている図書館の一つに静岡市立御幸町図書館がある。今回はこの静岡市立御幸町図書館に関する雑誌記事を紹介したい。

 「無料貸本屋」から「情報の町医者」へ 豊田高広
 『人文会ニュース』102号(2007年12月) pp.17~21

 豊田さんは静岡市立御幸町図書館の館長であり、2007年3月に勁草書房から出版された『図書館はまちの真ん中―静岡市立御幸町図書館の挑戦』の著者のお一人である。ビジネス支援サービスと外国人住民への多言語サービスを柱として活動する同図書館にかかわる上で豊田さんが重要視していることは、図書館は情報の町医者なのだということである。すなわち、仕事や社会生活の中で情報ニーズが出てきたとき、図書館がしっかりとかかわっていけることが重要なのだということである。豊田さんが図書館を町医者に例えているくだりは大変興味深いので、恐縮であるが少し引用させていただきたい。

信頼のおける町医者(公共図書館)とは、その町の人々にとって、どんな病気(課題)、にかかったとしても、最初に受診してみようと思える存在である。とりあえずの処方箋(資料、情報)を提供してもらうと同時に、必要に応じて、より専門的な病院(都都道府県立図書館、国立国会図書館、大学図書館、専門情報機関、公的機関の相談窓口、社会教育講座等)や薬局(書店)を紹介してもらう。大病にかからないための健康法(メディア・リテラシー)のアドバイスもしてもらえる。往診(移動図書館などのアウトリーチ・サービス)も町医者独自の機能だろう。保健所(行政各部局)と協カして、寝たきりをなくす(情報による自立支援)まちづくりへの取組も考えられよう。

  そして情報の町医者としての図書館に必要とされるものとして豊田さんは筆者は「『地域の記憶』ともいうべき、設置自治体とその周辺の地域資料の集積」と「さまざまな専門の入門となり得るような『広く浅い』蔵書構成」の2つを挙げる。

  人々がこの社会で生き抜くために、資料や情報を扱う機関である図書館は何をしなければならないか。豊田さんのこの論考にはその答えの一端が書かれているのだと理解している。多くの方が手に取っていただければ幸いである。

2008.03.03

[資料紹介]田村・小川編『公共図書館の論点整理』

  公共図書館の論点整理 田村 俊作・小川 俊彦【編】
  東京 勁草書房 2008.02   228,37p 19cm
  (図書館の現場〈7〉)   ISBN:9784326098330

   この本のはしがきによると、編者らはV・L・パンジトア 『公共図書館の運営原理』(勁草書房1993年刊行)に着想を得たのだという。パンジトアのこの本は「アメリカ公共図書館界で、公共図書館の運営やサービスに関連して課題となってきたことを取り上げて、対立する主張や様々な議論を整理し、論点を明らかにすることを狙いとしている」のだそうだが、今回の『公共図書館の論点整理』も、 今まで発表された書物や雑誌記事に基づき「無料貸本屋」論やビジネス支援サービス、図書館サービスへの課金、司書職制度、公共図書館の委託、開架資料の紛失とBDS、自動貸出機といった問題をそれぞれ章に分けて論点整理を行っている。また、その論点整理を踏まえそれぞれの執筆者がコメントを寄せている。

 曲がり角にいる日本の公共図書館。当会を含め様々な立場の方々がそれぞれの活動や発言に取り組まれている。この本は、上記に掲げたテーマの取り組みを進めていく上で、その取り組みの基礎として有用なものになるであろう。ぜひ多くの方々に手に取っていただきたい。

2008.02.24

[資料紹介]松林正己著『図書館はだれのものか』

  図書館はだれのものか : 豊かなアメリカの図書館を訪ねて / 松林正己著. --

  春日井 : 中部大学 名古屋 : 風媒社 (発売), 2007.2 96p ; 21cm. --

  (中部大学ブックシリーズアクタ ; 7) ISBN: 9784833140577

   最先端公共図書館の誕生―シアトル公共図書館新館
  2 フィラデルフィア図書館組合―公共図書館の起源
  3 世界最大の国立図書館―米国議会図書館と全米図書館政策
  4 研究図書館協会のはたす役割
  5 図書館の専門職制度―人的サービスの充実
  6 結論に代えて

 

 岩波新書として菅谷明子著『未来をつくる図書館 ニューヨークからの報告』が2003年に出版されて以来、 様々な海外図書館紹介資料が出版され、私たちも参照できるようになっている。今回紹介する松林さんの本は昨(2007)年出版されたが、そこに紹介されているシアトル公共図書館の章を読むと、働き方の問題など私たち日本の社会で起こっている様々な問題にへの図書館のあるべき姿が思い描けるのではないかという印象を持った。例えば、その章には「シアトル公共図書館友の会」「公共財の運営方法」「少数民族のための多言語サービス」「障害者へのサービス」「究極のビジネス支援としてのホームレス対策」「ビジネス支援サービス」「図書館と民主主義」などの項目があり、社会に生きる人間にとって図書館とは何で、どのように運営していこうとしているのかが端的に紹介されているように思う。5年ほど前にサンフランシスコ公共図書館を訪ねた際にしっかりと就職支援関係の資料が収集されているのを思い出し、感慨を新たにした次第である。

 この本もまた、図書館のことを真摯に考える多くの方にぜひ手に取っていただきたい一冊である。

2008.02.10

[資料紹介]雑誌『としょかん』

 長く地域と市民の立場から図書館活動交流を支えてきた『としょかん』はいったん休刊となりましたが、あらたに「としょかん文庫・友の会」により再刊されています。全国の図書館友の会などの動きがよくわかり、また、105号には有志メンバーによるフィンランド図書館訪問記など興味深い記事なども掲載されています。『つれづれ』というウェブログがこの雑誌の目次を再録していてくださっていますので、ご参照のうえ、多くの方にぜひお読みいただければ、と願っています。

2008.01.27

[資料紹介] 山内薫著『本と人をつなぐ図書館員』

 ランガナータンの昔から、私たちは「それぞれの人に、その人にとって必要な資料を」と言ってきた。当サイトでもその言葉を拝借している。では、資料や図書館を使いたくても使いづらい人に対して、私たちのすべきことは何であろうか。そのことを真摯な書物でまとめてくださった方がいる。今回はその本のことについて紹介したい。

 本と人をつなぐ図書館員: 障害のある人、赤ちゃんから高齢者まで
 山内 薫・著
 東京 読書工房 2008.1
 ISBN978-4-902666-15-1

 この読書工房という出版社は、本を「誰でも」楽しめたり、利用したりできるメディアに進化させるため、書籍のユニバーサルデザインを研究し、実践しているとのことである。著者である山内薫さんは東京都墨田区立図書館で長年にわたり「図書館利用に障害のある人へのサービス」を手がけてこられた方であり、日本図書館協会の障害者サービス委員もなさっている。

 本書には、著者である山内さんと障害のある方々や認知症の方々、赤ちゃんや親御さん方との関わり、刑務所図書館のこと、心身障害学級のこと、障害のある方々にとって読むとは、書くとは、情報とは何なのか等が9つの章立てにまとまっていている。それらのことはどれも山内さんが実際にそのような「読みたくても読みづらい人々」や「他の領域のプロフェッショナル」たちと関わりながら経験してこられたことである。きっと、読む人はそれらの生の中から、読書というものの大切さ、「それぞれの人自身の読みたい本に出会うこと」の大切さ、そして図書館(司書)の果たす役割の大きさに気づかされることであろう。

 ぜひ、多くの図書館関係者の方がこの本を手に取っていただければ、と念じている。

2008.01.10

[ウェブページ紹介]片山善博著「図書館は民主主義の『知の砦』」

 前回記事では川崎で行われる予定の片山善博元鳥取県知事(現慶応義塾大学大学院教授)の講演会をご紹介したが、今回はそれに関連してNikkei-netに掲載されていた片山さんの発言を紹介したい。まずは例によって書誌事項の紹介からである。

 「図書館は民主主義の『知の砦』」(2007/12/27)(片山善博の直言・苦言・提言)
 http://bizplus.nikkei.co.jp/colm/katayama.cfm?i=20071220c2000c2&p=1

 「民主主義の社会は、治者と被治者が同質であることを前提にして成り立っている。...ところが、政府と国民の間には往々にしてとてつもなく大きい情報格差が存在する」、片山さんはこのように話を起こしたあと、年金問題や市町村合併を例に取り上げながら、一人ひとりの市民が現状を把握し検証しようとする際の情報アクセスの不便さに触れている。「貧困で歪な」情報環境の中に国民が身をおくしかない状況の問題点を指摘したのち、片山さんはそのような状況で「重要な役割を果たしうるのが図書館である」とする。

 確かに、この社会はさまざまな生きにくさを抱えた社会である。その中でどのように私たちが生き抜いていけるのか。そのヒントは図書や雑誌など様々なメディアの中にある様々な情報から得られることが多い。そして、それらの情報へのアクセスの場所として図書館も有力なのだと確信している。

 図書館が曲がり角を脱し、市民がそのような情報へのアクセスをするお手伝いの場として生き生きと活動していくために、片山さんはとても大切な提言を下さっているのだと筆者は考えている。図書館に関わる多くの方が上記ウェブサイトをお訪ねになり、書かれている提言をお読みいただければ、と願っている。

2007.08.13

[資料紹介]医者よりも医療情報サイトで得た知識を信じる患者たち(メディアサボール)

 ネットサーフィンをしていたところ、「メディアサボール」というブログを見つけた。「専門家や海外ジャーナリストのブログネットワーク」と謳われている。今回私の目が行ったのは、その中の「医者よりも医療情報サイトで得た知識を信じる患者たち」というタイトルの記事である。執筆者は、南田登喜子さんという、オーストラリア在住ジャーナリストである。

    論題 :医者よりも医療情報サイトで得た知識を信じる患者たち
    著者 :南田登喜子
    ブログ名:メディアサボール

 南田さんは、2007/7/14付け"Sydney Morning Herald"に紹介されていた、誤った情報により自己誤診をしてしまった患者を安心させるために医師が苦労している話を踏まえたうえで、「納得のいく医療サービスを受けたいと思っている人にとって、インターネットで得られる情報や知識は不可欠になりつつある」ということや、「ネット上に氾濫する玉石混交の情報を自己責任で判断する目を養うことの重要性」について述べておられる。いわば医療の場面での情報リテラシーの重要性の指摘だといえよう。また、「病気についてもっと知りたいと思っている一般の人々のために必要なのは、規制ではなく、「調べる」というアクションが受診や早期治療、予防医療につながっていくための分かりやすい仕組みづくりだ」とも述べておられる。私たち図書館に関わる者についても重要な問題提起だと思う。

 南田さんが末尾に紹介してくださっているウェブページには、医療者の発言とともに、当ウェブでかつて紹介した朝日新聞の記事「賢い患者術」のページや、「医療情報・法情報およびビジネス情報に関わる参考業務のための指針」についても紹介してくださっている。光栄なことである。南田さんがおっしゃる「分かりやすい仕組みづくり」のために必要な歩みが着実に進んでいくことを私も切に願っており、私たち図書館に関わる者の歩みがそこに繋がっていくことができれば、その一人として幸いである。

2007.07.22

[資料紹介]松山巌制作「新潟県中越沖地震(2007年7月16日)に関するリンク集」

 新潟県中越沖地震の発生からもうすぐ一週間が過ぎようとしている。しかし、まだ、人々の暮らしに平穏が戻るまでにはまだかなりの時間がかかりそうである。壊れた家、避難所生活、その他もろもろの事柄…。

 そのような時、知り合いから標記のリンク集を紹介してもらった。今回のような災害に直面したとき、そして廻りのものが当事者たちのことを理解し、援護しようとするとき、そして自らが災害への備えをしようとするとき、重要となるものはやはり情報である。標記のリンク集には以下の項目に分けられた有用なウェブ情報源がまとめられている。

  気象庁∥NHK∥他のマスコミ(ラジオ局の周波数一覧あり)∥
  総務省消防庁∥自治体∥ライフライン,生活情報総合サイト∥
  交通・運輸∥電話・郵便・金融機関∥救援・救護・復興∥
  義援金∥ 図書館∥国の機関∥学術的な情報∥
  リンク集・ブログなど

 URLは下記のとおりである。是非一度ご訪問いただければ幸いである。

  http://www2.odn.ne.jp/~cbp91480/niigata07.html

2007.06.16

[資料紹介]『TOKYO図書館日和』

 今日は、少々洒落た図書館案内の本を紹介したい。例によって書誌事項の紹介からお目にかける。

    TOKYO図書館日和 /冨澤 良子【著】
    東京 アスペクト,2007.06
    ISBN:9784757213913 (4757213913)

 「お気に入りの図書館をみつけよう」というメッセージと、女性が本棚にはしごをかけて本を取ろうとしている写真が表紙になっているこの本には、公共図書館や専門図書館(たとえば博物館や美術館、大使館に併設されている図書館)など、が掲載されている。掲載された各館には館内の風景写真や随想のような短い紹介文が載せられている。

 紹介されている図書館には次のようなところがある。若干紹介したい。

  住まいの図書館、日清食品 食の図書館、食の文化ライブラリー、
  東京ドイツ文化センター図書館、東京日仏学院メディアテーク、
  国立国会図書館国際こども図書館、ちひろ美術館・東京図書室、
  東京都写真美術館図書室、早稲田大学坪内博士記念演劇博物館図書室、
  大宅壮一文庫、アド・ミュージアム東京広告図書館、
  目黒区民センター図書館;東京都立中央図書館、
  旅の図書館、江戸東京博物館図書室

 たとえば、海外に旅をするとき、住まいや食べ物など普段の生活で何かふと疑問を持ったとき、ここにある図書館を訪ねて情報収集などするとよいのではないだろうか。皆さんも是非この本を手に取ってみていただきたい。

2007.06.03

医療情報・法情報およびビジネス情報に関わる参考業務のための指針

 最近、公共図書館で医療情報サービスや法情報サービスに取り組むところが現れた。かつて管理人が訪れたサンフランシスコ公共図書館では、職探しなど利用者の生活に直結する局面での情報提供サービスが行われていたが、今後は日本でもこのような場面での資料・情報提供が重要な取り組みとなるであろう。

 そこで、今回はアメリカ図書館協会参考業務・成人サービス部会による"Guidelines for Medical, Legal, and Business Responses"の指針の全文を翻訳したものを紹介したい。これは、アメリカ図書館協会から翻訳権を得てかつて管理人が翻訳したものである。今後の議論や取り組みの参考になれば幸いである。また、翻訳について不明の点はご教示いただければ幸いである。

                                ****************************

序文
 これは、情報サービス担当職員が医療情報や法情報、あるいはビジネス経済情報を求めるユーザ利用者のニーズに応え、支援することを目指してアメリカ図書館協会のメンバーによって策定された指針の第2版です。この版での修正の主眼は3点あります。

 (1) 新しい用語への入れ替え。特に「参考業務」を「情報
      サービス」に、「お客様」を「利用者」に、「図書館司
      書」を「情報サービス担当職員」に替えたこと。
   (2) 特化された情報サービスを提供する場面や、情
      報源の形式の上に現れている急激な技術変革
      の影響を認識し、それを統合していること
   (3) 改訂前のガイドラインの元々の意図である、一般
      参考業務窓口での非専門家のニーズを扱うた
      めのものということから、専門家および非専門
      家の両方のニーズを扱うことに変更したこと。

 "Guidelines for Information Services"(「情報サービスのための指針」、2000)に盛り込まれている情報を拡張するものとして、医療・法・ビジネスに関する情報サービスにおいて扱われる下記の問題・見地に特化して取り扱う。

  1.情報サービス担当職員の役割
  2.情報源
  3.図書館外にいる利用者のための対応
  4.倫理

1.0 情報サービス担当職員の役割
1.0.1 図書館の情報サービス担当職員は、利用者の日常の法情報・医療情報・ビジネス情報へのニーズに対応するために適切な知識を備え、準備をしておかなければなりません。

1.0.2 職員は求められる主題領域の最新動向に通暁し、彼らの能力のレベル越える質問に言及する必要があります。

1.0.3 図書館は、専門情報サービスの提供に関する方針についての書面による免責条項を策定するべきであり、そこではサービスの種類や程度の違いをしめすべきです。利用者にどのレベルの援助や説明を行うかは、専門家と非専門家の間の主題についての知識の差に基づいて判断すべきです。

1.0.4 法情報、医療情報、あるいはビジネス情報に関わる質問が利用者から出されたら、情報サービス担当職員は自分たちの図書館の専門情報サービス方針に述べられているところにより自らの役割を明確にするべきです。

1.0.5 情報サービス担当職員は、利用者の質問に対する完全で正確な回答を提供すること、および、図書館利用者の情報ニーズにとって最も適切な資源に誘導するすることに責任を負っています。

1.0.6 職員は、もし利用者がそのように望めば、利用者が情報を独立して有効に獲得することを可能にするために、情報源をどのように使うのかを教えるべきです。

1.0.7 利用者が情報源を理解することが難しい場合、一層の説明あるいは比較のためはそれとは別の情報源が求められるべきです。適切な情報源を捜し出すことができない場合、図書館が利用者に適切な情報源を紹介すべきです。

1.0.8 利用者とのやりとりを通じて、入手可能で適切な情報を準備するか、図書館外で提供されている入手可能な情報源やサービスを明解かつ簡便に紹介することにより、利用者の情報へのニーズを満足させるべきです。

1.1 助言
1.1.1 図書館は、それらの情報源の長所にかんして助言したり、その情報源の媒体を問わずに利用者に助言することができ、そうすることがふさわしい場合には利用者に図書館資料に関する推薦をすることが出来ます。

1.1.2 利用者には、可能な限り包括的で最新の資料を推薦すべきです。

1.2 守秘義務
1.2.1 直接来館の場合であっても、館外からの問い合わせの場合であっても、利用者からの要求に関わる秘密はどんな場合でも尊重されなければなりません。

1.2.2 職員は、その質問についての探索援助の場合以外はその質問について図書館外で議論していけません。また、利用者の氏名は利用者の許可なくしては口外してはなりません。

1.3 要領
1.3.1 情報サービス担当職員はレファレンスインタビューの間中分別を持っているべきです。行き届いたインタビューを行なうことが重要であり、インタビューは利用者の不快感を最小限にするような方法で行われるべきです。

1.3.2 職員は、利用者のプライバシーを侵害することなく、質問に現れるの問題が何なのかを識別するよう努めるべきです。

1.3.3 情報サービス担当職員は利用者の質問に対応する際には公平であるべきで、裁くような態度をとるべきではありません。

2.0 情報源
2.0.1 それぞれの図書館は、サービス対象となるコミュニティーのニーズを満たすため、最新かつ正確で、アクセス可能な医療・法・ビジネス関係の適切な情報源を評価し収集していくべきです。

2.0.2 利用者には、著作権及び使用許諾の限界の範囲内で図書館の蔵書にある情報にアクセスする権利があります。利用者のアクセスしようとしている情報が掲載されている情報源を使うことで使用許諾が犯されるのでなければ、利用者は情報入手を妨げられてはなりません。

2.0.3 情報サービス担当職員は、利用者が要求する情報が掲載されている入手可能な情報源に利用者を誘導するべです。これらの情報源は外部情報源のアクセスと同様に禁帯出資料および印刷物以外の収集も含んでいます。

2.0.4 職員は、利用者が適切な情報源を識別し、使用し、かつ評価するのを支援するための援助をしていくべきです。

2.1 情報源の最新性
2.1.1 図書館は、その図書館の本来のの顧客層のニーズを満たし、資料購入予算および資料収集方針の制限にに見合う範囲で可能な限り最新の情報を提供するべきです。

2.1.2 職員は、利用案内を定期的に見直して資料についての説明を削除すべきです。

2.1.3 職員は、図書館の蔵書から、古くなった資料を除籍のために間引きしたり一般書架へ移動したりすべきです。

2.1.4 時間に敏感な性質を持つ情報や情報源の場合は、出版日の最新性は利用者に明確にされるべきです。

2.1.5 医療や法、ビジネスの領域の情報の変化は激しいため、職員は利用者に、この領
域にはもっと最新の情報があるかもしれない旨助言すべきです。

2.2 情報源の正確さ
2.2.1 医療・法・ビジネス情報に対する利用者の要望に応える情報源を一つ以上、図書館の蔵書として提供すべきです。情報サービス担当職員は、可能な場合はいつでも、他の情報源を比較や解釈のために提供することによって利用者が情報の正確さを評価するのを支援すべきです。

2.2.2 広告や勧誘が情報内容として誤って解釈されうる場合には、職員は、可能な場合は常に、利用者が弁別するのを支援するべきです。

2.3 他の情報源への紹介
2.3.1 情報サービス担当職員は、地域の情報サービスの方針や蔵書構築方針に従って利
用者の質問に応えるためのあらゆる努力を尽くすべきです。

2.3.2 利用可能な情報源や職員を用いても質問に答えることができない場合、多様な出版物資源と同様に、そのことに詳しい個人への質問を準備すべきです。

2.3.3 その機関、サービス提供者、個人がその利用者に対応する意志がある場合に限り、紹介は行われるべきです。

2.3.4 図書館外の地域や州、そして私営のサービスについての知識は重要であり、これらのサービスを紹介することは基本的にいくつかの慣習に従います。

2.3.5 職員は、特定の弁護士、法律事務所、医者等の医療サービス提供者ビジネス上の専門家への推薦をしてはなりません。しかし、利用者がそれらの情報源を識別し見つけ出すために有用かもしれない他の情報にアクセスを支援することは差し支えありません。

3.0 図書館外の利用者のための対応
 図書館外の利用者は、遠隔地より援助を依頼している、そのコミュニティの成員である利用者とそうでない利用者を含みます。

3.1 図書館外の利用者からの要望への対応には特段の注意が払われなければいけません。その理由は、私たちは容易に音声メッセージを誤解することと、文章化されたメッセージは説明と解釈が必要となることがあるからです。

3.2 それぞれの図書館は、館外からの要望に対するサービスの提供をも含んだ情報サービス方針を策定するべきです。

3.3 図書館は、要望を寄せた利用者に対し、図書館はその主題についての情報を持ってはいるが、禁帯出資料や印刷物以外の資料を用いたり、より進んだ研究援助のを得るためには図書館に足を運ぶ必要がある旨知らせる必要があります。

4.0 倫理
4.1 アメリカ図書館協会の最近の倫理規定(ALA Handbook中のALA Policy Manualに触れられているように) は、情報サービスを提供するすべての職員の業務遂行を支配します。

2007.03.26

[資料紹介]渡辺有理子著『図書館への道』

 今回は、渡辺有理子著『図書館への道―ビルマ難民キャンプでの1095日』の紹介をしたいと思います。著者の渡辺有理子さんは日本国際児童図書評議会や都内の小学校司書教諭の仕事に携わった後、(社)シャンティ国際ボランティア会(SVA)から派遣されて、2000年9月から3年間で18館のビルマ難民キャンプの図書館建設及び人材養成に関わった方です。ちなみに現在は再び学校図書館の仕事に携わっていらっしゃいます。

 先ずは例によって書誌事項等の紹介からいたしましょう。

  図書館への道 : ビルマ難民キャンプでの1095日 / 渡辺有理子
  著. --
  東京 : 鈴木出版, 2006.1
  271p, 図版[4]p ; 19cm
  ISBN-13: 978-4790291039
  目次 序章 海を越えて(タイ北部の町、メーサリアン/突然のF
  AX/小さなお守り) 第1章 ゼロからの図書館活動(初めての
  難民キャンプ訪問;あなたの名前は?/難民キャンプの運営と
  教育/難民キャンプの小学校/活動の一歩/図書館の建築/
  カレン語の本、ビルマ語の本/貼りつけ絵本/たくさんの"ター
  ブル"*/夢の図書館/図書館員の養成/活動の柱/民族の
  証/図書館へようこそ/子どもたちからのプレゼント/ゴミの教
  育/マラリアの夜/閉館希望?/布の絵本と移動図書館/
  青年の心/紙芝居制作と紙漉きのワークショップ/図書館に
  望むことは) 第2章 読む楽しさ、知る喜び(好奇心の翼/
  子ども文庫/新米の図書先生/本の探偵/人の心が読める
  /不思議な贈り物/世界で一冊の本) 第3章 忘れられた
  難民(四つの信念/カレン民族/難民の流出/難民とビルマ
  の民主化/カレンの農村にて/決して忘れるな) 第4章 光
  と色のある未来へ(新たな町へ/ヌポ難民キャンプの"硬い岩"
  /ボイコット/家族との再会/母の日の難民キャンプ訪問/
  消えた図書館/お化け屋敷図書館/テレビの登場/再建に
  向けて/図書館の再建/星空のディナー/夢の実現/最後
  のワークショップ/友だちと活力/難民キャンプでの送別会/
  また会う日まで) あれから あとがき
 *「ターブル」とはカレン語で「ありがとう」の意味。

 ここで言うビルマ難民キャンプとは、ビルマ国内で弾圧・迫害されてタイ国内に流れてきた難民の方々が仮の住まいを構えるところです。ここで「ビルマ」と書いたのは現在「ミャンマー」と呼ばれている国のことですが、民主化闘争を武力で鎮圧した軍事政権による国名の変更には正統性がないという主張がビルマ民主化を目指す人々から出されており、難民に関わる仕事をされてきた渡辺さんもそのことを尊重されて「ビルマ」という呼び名が使われています。渡辺さんが活動をされたビルマ難民キャンプに住まうのはビルマの少数民族であるカレン人の方々です。

 SVAの現地での拠点があるタイ北部の町メーサリアンは、本書によるとチェンマイから車で約4時間かかるところで、道中には悪路もかなりあるようです。ちなみにタイ国際航空のウェブサイトによるとチェンマイはタイの首都バンコクからだと2時間40分、バンコクは成田国際空港から6時間半(日本との時差は2時間)かかります。この本は、著者渡辺さんがビルマ難民キャンプの図書館に関わる決断をし、活動拠点となるこのメーサリアンの町にたどりつくところから話が起こされています。そして、初めてカレンの子どもたちと関わった経験や、図書館の設立計画に着手し、カレンの人々の中に図書館の担い手をを育てていこうとする様が描かれています。どのような子どもたちにも広く使えるような図書館にするために、無料の図書館を!、カレンの人の母語であるカレン語と、いつかビルマに帰れる日のためにビルマ語の本を!など、著者の思いが次第にカレンの人たちと一緒になって難民キャンプ図書館となって結実していく様が描かれています。

 また、それだけではなく、渡辺さんご自身のライフヒストリーも描きこまれています。渡辺さんのお母様は文庫に携わっていらっしゃるのですが、ご自身の幼少の頃からのことや、学校図書館に関わる中で接しえた子どもたちの輝きに触れたことなども描かれています。日本の学校図書館でのそのような経験と、カレンの子どもたちとの交流が、まさに管理人の中で二重写しになっているように思いました。さらに、カレンの人たちはビルマの中でどのような歴史を歩んできたのか、かつてビルマを植民地にしていたイギリスがビルマ族とカレン族をどのように扱っていたのか、第二次世界大戦中にビルマまで戦線を広げた日本軍がカレンの人々に何をしたのかまでが描きこまれています。実際、著者もカレンの人たちの中で苦労されたことも多かったようです。これらのことが描きこまれていることにより、この報告記『図書館への道』の輝きがとても増しているのだと管理人は理解しました。

 この報告記の最後に渡辺さんが記したことをここで紹介したいと思います。任期を終えて帰国した後、再訪した難民図書館で、著者は一枚の絵を発見したのだそうです。お医者さんになりたい、先生になりたい、パイロットになりたい、そのような夢を抱いた人たちが図書館を指差し、駆け寄っていく絵なのだそうです。自分たちの人生を切り開くための手がかりを得に図書館へ行こうというところまでカレンの人たちの中に根付いたのだと言うことが良く伝わってきました。

 AMAZONなどウェブ上で語られているほかの方の読後感を見ていると、「著者自身の生い立ちやビルマ難民キャンプでの図書館建設~図書館員養成の活動を通して、本の力、図書館の力が伝わってきました。3歳の子を持つ父親として、子供を育てる上で、本との関わり方を考え直すきっかけとなりそうです。また、海外支援のあり方も考えさせられる本です。」と語る方がおられました。同感です。人が生きていくために考える、そのきっかけとして本は大変重要なのであり、その本を利用者が利用するお手伝いをするために、図書館はまだまだしっかり仕事をしなければなりません。この『図書館への道』は「海の向こうの話に過ぎない」のではなく、私は、この本が日本で図書館に関わっていくための力を私たちにたくさん与えてくれるのではないかと考えています。是非多くの方にも手に取っていただきたい本だと考えています。

2007.01.31

[資料紹介]西川馨著『優れた図書館はこう準備する』

 今回は西川馨著『優れた図書館はこう準備する』を紹介したい。こ
の本は(有)図書館計画コンサルタントの西川馨さんが「優れた図
書館を実現するためには図書館側(教育委員会の場合も)がソフトも
八一ドも十分に勉強をし、準備しなければならない。そして、図書館
計画書をしっかり書くことが必要である」との立場の下に、「図書館
の新設・改装などに直面する関係者のために、著者の経験を踏ま
えて送る手引書」としてお出しになったとのことである。今入手し、
改めて内容に目を通し始めたが、著者の意図することが簡潔にまと
まっており、私たち図書館に関わる者にとって大変参考になる本だ
との思いを新たにした。

  優れた図書館はこう準備する / 西川 馨 (著)
  東京 教育史料出版会 (発売) 2006/12
  ISBN-13: 978-4876524754
  価格: ¥ 3,990 (税込)
  目次より
  はじめに
  第1章 日本の図書館は発展途上にある
   日本の公共図書館の現状/日本の特殊事情
  第2章 今図書館はどのように使われているか
   図書館統計から/実態調査/利用者の特性
  第3章 計画の準備段階
   計画の流れ/準備室/準備委員会/基本構想
   基本計画/本館の規模計画/敷地の選定/複合建築
  第4章 図書館建築の基本構成
   図書館建築の一般的な条件/構成要素・ダイヤグラム/
   全体構成の考え方/その他の基本的事項
  第5章 各部の考え方
  第6章 設備・備品・家具
   図書館設備/電気設備/家具
  第7章 建設・開館へ向けての準備
   建設準備室/建設予算・設計期間/建設スケジュール
   図書購入計画/設計者の選の方/基本設計/実施設計
   工事監理/視聴覚機材の準備/利用者へのPR
  第8章 計画書の書き方・実例
   構成例・目次/内容記述の例   
    第9章 ライブラリーシステム
    ライブラリーシステム/イギリス・オランダの例/
    日本の現状/市町村内での図書館サービス網を
    構成する

 以上のような項目立ての元、図書館の施設の各部についての留意
点がとても詳しく書かれている。そして、巻末の付録には国内・外の
図書館建築計画書の実例が引かれていて、それぞれ元になった図
書館の思想からどのような計画書が出来上がっているのかがわかる
ようになっている。
 図書館に関わる者にとって、図書館施設とは利用者と資料、そして
図書館で仕事をするものが交わる場として重要である。そのことを省
みるためにも、よろしければ皆さんも何らかの機会にお手にとって御
覧になるとよいのではないだろうか。

2007.01.03

『有山たかし著作集』を紐解く

 忙しい日々の仕事。私たちはともすると目の前の仕事を片付けるこ
とに追われ、「道筋」を見失うということはないだろうか?正月休みの
ひと時、管理人は久しぶりに本を一冊手にとってみた。日々行ってい
る図書館間相互協力の仕事をしている時に再度出会った、身近な図
書館を水道の蛇口だと例える文言の源流を確認し、これからの仕事
の力の源としたかったからである。そして、その手に取った本とは『有
山〓』著作集(〓は山冠に松)である。書初めではないが、今年はこ
のことから書き起こしていきたい。少し「つれづれ」になってしまうかも
しれないが、ご容赦いただければ幸いである。

 まずは例によってこの本の書誌事項を確認しておこう。有山さんに
ついてはここで管理人がどうこう申し上げるまでもないだろう。日本図
書館協会の事務局長として活躍し、また、出身地である日野で
「市民の図書館」を創ることに努力され1969年永眠された方であ
る。この著作集は3巻組みになっており、「図書館の本質を論じたも
の、図書館協会や図書館運動に関するもの、読書と読書運動に関す
るもの」という3本の柱の下に彼の書かれたものがまとめられている。

  有山〓著作集 / 有山〓著 ; 石山洋 [ほか] 編. --
  東京 : 日本図書館協会, 1970   3冊 ; 20×19cm -- 1;2;3

 目的の「水道の蛇口」論の源流らしきものは、1巻の「市立図書館
の経営:市には図書館を、その図書館はこうあってほしい」(pp.20-
29)に書き込まれていた。ただ、これより前にも言われていたことかも
知れないので、もしご存知の方がいらしたらご教示いただければ幸
いである。これはもとは『市政』という雑誌に1964(昭和39)年(1月、
2月)に発表されていたものだとのことである。この論考は次の柱で成
り立っている。

   Ⅰ 1 すべての民衆は図書館サービスを受けるべきである
   2 国からの交付金の中には図書館費が算入されている
   3 図書館とは建物のことではない
  II 1 建物ひとつだけでは図書館は働かない
   2 図書館経営は素人ではできない
   3 図書館は社会保障機関である
   4 むすび

 そして、有山さんは例の「水道の蛇口」という比ゆを使って、図書
館がネットワークで仕事を進めていく姿を次のように語っている。少
し長くなるが引いてみたい。

   例えば、水道の蛇口は各戸に設けられている。それだから
   便利なのである。バケツを下げて市の中心部の水道局まで
   水をもらいに行くとしたら市民は黙っているだろうか。貯水池
   があって、そこから全市に配管され給水網ができているから、
   各戸では蛇口をひねりさえすれば水が出てくるのである。
   これと同じことが先進外国では図書館について実施されてい
   る。つまり、水道の場合には各戸に蛇口があるのだが、図書
   館の場合には容易に歩いていけるところに末端施設がある。
   これがいわば共同蛇口である。そこに行けばある程度の本
   がある。その本は数は多くないがその辺の市民の要求に合っ
   た本である。だからたいていの場合はそこで用が足りるので
   あるが、足りない時は、そこに具え付けられている図書目録
   によって欲しい本を見つけ出し…

 いかがだろうか。日野市立図書館が発足した当時、市民のそば
に図書館が出て行くという意図で移動図書館車からスタートし、分
館網を整備し、中央館を構築したという流れだったと聞くが、その
歴史の中にはこのようなものの考え方がしっかりと定まっていた
わけである。そして、それから40年以上たち、大学図書館に相互
協力担当として身を置く管理人にとってもこの「水道の蛇口」という
表現は少しも古さを感じない。自館で対応できない資料については、
大学図書館同士のやりとりや、国立国会図書館からの文献提供を
うけることだけでなく、地域資料については対象地域の地元にある
公共図書館などともやり取りをしながら仕事を進めている。また、現
在は「グローバル化」という言葉がますます重要なものとして扱われ
ており、インターネットがもはや必要不可欠の道具になっているが、
管理人の身の回りでも、欧州や北米、東アジア、オーストラリア、ア
フリカとのやり取りが必要になるケースが現れている。有山さん風
にいえば備え付けの図書目録というところを、今ではインターネットで
提供された全世界の図書館の目録となるわけである。有山さんの
活動された時代とは、「水源地」や「水系」の規模が比べ物にならないほど拡大しているのだ。

 有山さんが語ってくださった「水道の蛇口」は図書館ネットワークの
ことを語る上でとても大きな位置を占めており、今でも多くの方が「水
道の蛇口」という比ゆをお使いである。これからも図書館ネットワーク
は図書館に携わるものにとってますます重要になり続けるだろう。

 ところで、この著作集の別の巻を紐解いたら、市民にとっての読書
と図書館のかかわりについて面白い記述に出会った。また引いてみ
たい。

   だが図書館への需めは、読書したいという欲求だけから
   おこるとは限らない。他の色々な動機からおこることが多
   いのを、これまでの図書館は見逃していた。
   例えば、米作改良という動機、台所改善という動機、ラジ
   オを作りたいという動機、芝居をしたい等様々な動機が
   先ずあって、それを実現していくいろいろな方法の内の一
   つとして、図書資料を需めるということが生まれてくる。
   だがそうだからといって図書館が、やれ米作を改良しろ、
   ラジオを作れと叫んでもどうなるものではない。…
   従って公共図書館が本当に地域社会の大衆と結びつくた
   めには、図書館だけで働くことをせずに、その地域社会内
   にあるいろいろの機関や団体と結びついて、それらの機関
   や団体に先ず十分働いてもらって…その課題解決の一つ
   の方法として、図書館は資料提供という本来の仕事をする
   ということが必要である(3巻所収「地域における公共図書
   館の課題」より。原報『教育じほう』昭和32年10月号)

 米作や台所、ラジオや芝居、つまりは人が文化的に生きていくた
めの生業や趣味等のことを述べているのだろうと管理人は理解し
た。これは、管理人が考えるに、今の公共図書館の世界で「ビジ
ネス支援」など生業を支援していこうとする取り組みに一脈通じる
ものがあるのではないだろうか?そのほかにも、この本のあちこ
ちに当時の社会情勢に有山さんが真摯に関わった姿が記されて
おり、40年前の本であるとはいえ、現代の私たちにも参考になる
様々な考えが汲み取れるのではないだろうか。「図書館は何をす
るところか」、この本にはそのことを考えるための有用な視座が
含まれているのだと私は考えている。

 かつて、歴史の授業で、E・H・カーという人の『歴史とは何か』(岩
波新書)を引きながら、歴史とは、川の流れの中にいる観察者が、
同じ川のはるか先を流れ去ってしまった物事を観察し、自分が今
身を置いている場所に即して捉え返す営みなのだと教えてくださっ
た先生がいた。これは、図書館の歴史にとっても重要なことであろ
う。別の言葉で言えば「温故知新」ということになろう。図書館が曲
がり角から抜け出そうと一所懸命な今、抜け出すための知恵は、
すでにかつて先人たちが語っているかもしれない。今回、管理人
は『有山〓著作集』を紐解きながらそのような思いを新たにした。

2006.10.18

[資料紹介]日本教育法学会教育基本法研究特別委員会

 前回の記事をはじめ、 何度かこのブログでも教育基本法のことを取り上げてきた。「学図研blog」 や「きょういくブログ」、 「あんころブログ」など、 多くのブログで教育基本法をめぐる現在の状況について述べられているが、私たちも、 現在の日本の教育の骨組みを定めているこの教育基本法の議論の動向についてしっかりと見定めていく必要がある。

 そこで、今回はそのための有用なウェブサイトのひとつを紹介したい。

日本教育法学会教育基本法研究特別委員会
http://homepage2.nifty.com/1234567890987654321/kyokihou.index.htm

 このサイトでは、経緯などに引き続いて、国会審議の再録(動画。Windows Media Player、または、 RealPlayerが必要)や、現行法・法案・提案理由等の基礎資料、声明やコメントが用意されており、大変参考になる。

 多くの人が目を通す必要のあるサイトであろう。お手すきのときに是非たずねてみていただきたい。

2006.09.09

[資料紹介]総合的職業情報データベース『キャリアマトリックス』

 図書館の世界では、「ビジネス支援」が重要視されるようになってきている。ならば、人生最初のビジネスである就職に、図書館はいかに関われるのだろうか。職に赴く前の人たちの立場で言えば、自分はどのような者になりたいのか、なれるのか、世の中にはどのような職業があり、どのようにしたらその職業に赴けるのか、そのようなことを考える時に必要になるのもやはり情報に基づいた判断であり決断であろう。

 このようなことを考える根は、管理人が大学図書館に身を置いていることにもあるだろう。たとえば、「○○(職業の名前)になりたいという学生がいるのだけれども、何か資料はないだろうか」などと就職担当部局の担当者に相談された司書が関連する本やウェブサイトを紹介した、などというケースも見聞きしている。また、管理人がかつて訪れた米国ボストンやサンフランシスコの図書館で、職に就くために必要な情報を図書館がしっかりと提供している姿に触れ、図書館にとってのこの問題についての重要性を痛感させられた。学生にとってまだまだ就職戦線は厳しく、また、世の中では「フリーター」なる言葉も行き交っている今、大学に身をおく司書にとってこの問題は他人事ではありえない。

 このように徒然に思いあぐねている時、ウェブログ"Verba volant, scripta manent"がとても興味深いデータベースを紹介していたので、こちらでも一言触れてみたい。データベースの名前は「キャリアマトリックス」、提供者は独立行政法人労働政策研究・研修機構である。

       キャリアマトリックス
       http://cmx.vrsys.net/TOP/GC_01.php

 このデータベースの内容だが、まずひとつは職業名や職務内容などから職業を検索し、職業についての詳細情報を表示する機能がある。職業の内容、就職の要件や資格、労働条件、その職業の関係団体等参考となる情報などが盛り込まれている。ためしに、上記画面から職業検索をクリックしてその画面に移動し、検索画面で「司書」、あるいは自らの身近な人の職業の名前を入れてれてみていただければどのような内容かがよく理解できるであろう。

 また、このデータベースは適職探索という機能も備えているようである。こちらはここでは詳しくは触れない。もしよかったらそれぞれで試してみるとよいであろう。

 私立大学の教員が開設する"Under my thumb"というブログをはじめ、インターネット上には「仕事」を考える上での有用な情報が流れている。もちろん紙ベースの情報にもそのようなものはたくさん存在する。これから人生という荒海に漕ぎ出す若者たちがそのような情報にアクセスするためのお手伝いをする局面では、図書館もまたお役に立てるのだと思っている。最後に付け足すが、"Verba volant, scripta manent"の管理人である廣田慈子さんが述べていることだが、私も、上記の情報をはじめ、人の一生を左右しかねない情報に対するデバイドがあってはならないということと、そのための図書館の役割も重大なのだということを強調しておきたい。

2006.06.09

[資料紹介]『日経サイエンス』掲載論文「貧しい人はなぜ不健康なのか」

 以前、当ブログで『希望格差社会』 という本を紹介させていただいた。それ以降も格差についてたくさんの本や雑誌論文は次々と発表されている。 この社会がどのような社会になってきているのか、その中で私たち図書館に関わる者が何をしなければならないのか、 しっかりと考えていかなければならなくなってきている。

 今回は、雑誌論文をご紹介したい。"Scientific American"誌の日本版である『日経サイエンス』から、 やはり社会での格差と人間の暮らしにくさについて考えさせられる論考である。

公衆衛生 貧しい人はなぜ不健康なのか / Robert Sapolsky
『日経サイエンス』vol.36、no.3 (通号413) [2006.3] pp.72~80

 この論文では、収入,職業,教育水準,住環境などを加味した「社会経済的地位」を調べてみると, その最も富裕な層から階層が下がっていくにつれ,健康状態も悪化するということがまず第一に据えられている。 そのことにもとづいて社会経済的地位と健康との相関関係の分析が行われている。また、人間の健康は、 「自分は貧しい」 という意識そしてストレスによって損なわれやすいということも指摘されている。そして、 論者は解明や対策の取り組みの重要性をも力説している。ちなみにこの論文の冒頭では冒頭に19世紀のドイツの神経科学者・ 医師のウィルヒョウの、「医師は本来、貧しき者たちの弁護士のようなものだ」という文言が引用されており、 その考えが論調の底辺に流れている。

 さて、このブログでも、昨年元旦の「賢い患者術」 等の記事中で医療等重大な決断が必要な場面での情報の重要性と図書館の有用性に触れてきた。 これからこの社会ではますますそのような場面が増えることであろう。そして、この社会は「格差社会」と言われるようになってきた。 そのような時、私たち図書館に関わる者はこの論考にどのように向き合えるだろうか。皆さんもよろしかったらこの論文を手にとって頂き、 ご一緒にお考えいただければ幸いである。

2006.06.04

司書が平和を願うということ(3)…[資料紹介]『バスラの図書館員』

 報道によると、イラクでは自身の政府ができ、一歩ずつ歩みを始めているようではある。しかし宗派間の対立など、まだ完全な平和には程遠いようでもある。今回紹介する絵本は、平和を願いそして図書館の本を救おうと取り組んだイラクの図書館員の物語が元になっているのだという。

バスラの図書館員 イラクで本当にあった話 絵と文/ジャネット・ウィンター 訳/長田弘
東京 晶文社 2006.4
ISBN4-7949-2042-3
原題:The Librarian of Basra: a true story from Iraq

 原著が2005年に出されたこの本は、2003年に実際に起こった事柄…イラク戦争最中に、戦火が迫っていた南イラクの港町バスラにおいて町の人たちと力を合わせて図書館の本の大部分を守った図書館員の話が描かれている。ちなみに、 同書によるとバスラの図書館はその9日後に焼け落ちてしまう。『New York Times』が報じたことが作者ジャネット・ウィンターさんの目にとまり、原作の絵本になったのだと言う。

 「図書館の本には私たちの歴史がつまっている」、この絵本のカバーに書かれていた言葉である。まさにそのとおりである。そして、戦争はその歴史の記録を容赦なく破壊してしまう。この絵本にあるような図書館員がいたということは、私たちの記憶にとどめておくべきであろう。

 帯によると、この絵本の収益の一部はアメリカ図書館協会の基金を通じてバスラ中央図書館の再建を助けるために使われるという。もしよかったら皆さんも一度手にとっていただければ幸いである。

2006.04.23

[資料紹介]『学習権を支える図書館』

 図書館が今曲がり角に立たされている。ならば、図書館は今何をしなければならないのか。今回紹介しようとしている種村エイ子著『学習権を支える図書館』は、そのような問いに応える力を読む者に与えてくれると考えたので取り上げた。まず例によって書誌事項から見ていただきたい。

学習権を支える図書館 / 種村エイ子著.
鹿児島 : 南方新社, 2006.3
287p ; 21cm
ISBN: 4861240794
目次:
第一部 学習権と公立図書館(第1章 学習権を保障する公立図書館の役割/第2章 生涯学習・読書運動・図書館/第3章 地域社会における公立図書館/第4章 すべての人の学習権をささえる図書館サービス/第5章 規制緩和と公立図書館)
第二部 児童生徒の学習権を支える学校図書館(第1章 学校図書館法「改正」と鹿児島の学校図書館/第2章 学ぶ喜びを伝える学校図書館/第3章 食農教育と学校図書館/第4章 学校図書館における司書と司書教諭の職務分担/第5章 学校図書館と知的自由)
第三部 学習権を支える図書館員の養成(第1章 学生の授業評価にみる短期大学部の司書教育/第2章 児童生徒の学習権を支える司書教諭の養成)

 ご存知の方も多いことと思うが改めて述べると、著者の活動拠点である鹿児島は、かつて作家椋鳩十が鹿児島県立図書館長を務め、創作と並行して読書運動である『母と子の20分間読書』運動を推進したことで知られている。また、著者である種村エイ子さんはかつて『知りたがりやのガン患者』(1996年農山漁村文化協会刊行)を著していらっしゃるが、管理人が思うにご自身がガンになったという経験を通じて情報を得るということの重要性を身をもって味わったということなのだろう。そのことが少し著者の言葉で「はじめに」に書いてある。

 そのようなご自身の経験に基づき、本書では、それぞれの住民の暮らしや学習権を支える上で地域の図書館が果たす役割の重要性が論じられており、それは患者や「障害者」などハンディがある人に対しても変わらないのだということが記されている。そのことの延長線上に、現在問題になっている指定管理者制度と公立図書館に関する発言も行われている。

 また、子供たちの学びにとって重要となるべき学校図書館についてや、図書館の活動を支えていく司書をどのように養成していくかについても述べられている。

 様々な問題を抱えている現在の図書館に関わっていく上で、この本はとても重要な考えを私たちに提示しているのだと管理人は考えている。是非皆さんも一度手にとってご覧いただきたい。

2006.04.15

[資料紹介]『働く人の「学習」論』

 少し前の記事で中央大学図書館の入矢玲子さんの発言を紹介た際、自己責任社会への移行ということを書いた。ところで、劇的な変化を続ける社会の中で暮らし、働き続ける私たちにとって「学ぶ」ということ、資料を読むということ、そして図書館の役割とは何であろうか。図書館の社会で「ビジネス支援」ということが重要視されて久しいが、今回紹介する資料には社会で働く人々に対する図書館での取り組みにとって重要な考え方がこめられているのではないかと管理人は考えている。

 まずは書誌事項から紹介する。

働く人の「学習」論 : 生涯職業能力開発論 / 田中萬年, 大木栄一編著. --
東京 : 学文社, 2005.9
189p ; 21cm
ISBN: 4762014613
目次
序論 働く人の「学習」とは何か
第1部 働く人の学習の制度(働く人の学習制度の概要、失業者のための職業能力開発、新規学校卒業者の職業能力開発、在職者の職業能力開発、障害者の職業能力開発、働く女性の生涯職業能力開発、ホワイトカラーの職業能力開発)
第2部 企業における職業能力開発(教育訓練政策と教育訓練投資、教育訓練体制と教育訓練制度、働き方の変化とキャリア形成支援
第3部 働く人の学習の課題(「働く人の学習」の理論的課題、「働く人の学習」の制度的課題、職業訓練の捉え直し

 編者である田中氏らは職業能力開発総合大学校の所属であるが、この社会の中で仕事を続け、生活を続けていくためには「学び」続けていくことが不可欠という視点に立って論を進めておられる。そして様々な場面で働く人の学びについて論を展開した後、フリーター等の問題が山積みになっている現状に対して、職業能力開発の体制の整備を力説しておられる。

 振り返って、私たち図書館に関わる者が「ビジネス支援」というとき、どのようなことを頭に置いているであろうか。フリーターやニート、非正規職員、これらの方々が大勢いらっしゃる現在、この資料は利用者と図書館のかかわりを考える上でとても大切な一冊になるだろうと管理人は考えている。皆さんもお手すきのときにでも是非お読みいただければ幸いである。

2006.04.09

[資料紹介]朝日新聞「私の視点」より

 しばらく更新をおろそかにしている間に、おかげさまでアクセスが4万件をだいぶ上回っていたようです。いつも当サイトにお越しくださいましてありがとうございます。管理人も心機一転で新年度に臨みたいと思います。

 さて、今日の資料は2月に発表されたものですのでだいぶ旧聞に属する話ではあるのですが、私たちが図書館について考えをめぐらす際に大事な視点を示していただいていると思うものですから、ここに紹介させていただきます。まずは例によって書誌事項からご覧ください。

官から民へ「図書館文化」の継承を / 入矢玲子. -
『朝日新聞』. - 朝刊.- 2006.2.15.-p.14

 筆者の入矢玲子さんは、中央大学図書館の司書でいらっしゃり、レファレンス・ルームを持ち場としていらっしゃいます。上記論考で入矢さんはまず、「...移管はむろん万能ではない。移管のマイナス面を厳しく検証しつつ、プラス面を果断に推進することが真の改革であるはずだ」との問題意識の元に、まず現在行われている図書館での民間委託や指定管理者制度のことについて書き起こしていらっしゃいます。

 その中で、「民間の委託先は開館時間延長や接客マナー向上など、目に見えるサービスの改善を強く指向...」するが、「目に見えない部分は放置しがちで、その放置され劣化にさらされている部分にこそ図書館の存在意義が集中している」と述べて、一例として選書を取り上げています。それを踏まえて、司書の役割の重要性を述べ、必ずしも安定しているとはいえない委託業者に人材育成の手間と経費がかけられるのかとの疑問を提示していらしゃいます。

 この社会が「自己責任型社会」へと変わっていき、「情報センター」としての図書館の役割がますます重要視されていく中で、入矢さんからも、市民が意思決定を行っていくための知る権利を守る図書館の役割がますます重要になっていくのだと述べていらっしゃり、管理人もまったく同感だと考えています。

 そして、国立国会図書館の本館に掲げられていて皆さんも良くご存知の「真理がわれらを自由にする」との文言を踏まえて、「図書館の設置者はこの精神を忘れず、安易な委託に走る前に設置者、利用者、司書3者の立場から望ましい形態を十分に議論するべきだ」と結んでいらっしゃいます。

 今、図書館は曲がり角にいます。そして、私たち図書館に関わるものは「図書館とは何をするところなのか」をしっかり踏まえて進んでいくことが求められているといえましょう。多くの方々がそのことのために取り組んでいらっしますが、今回のこの入矢さんの発言もそのような取り組みに大変重要なものといえましょう。多くの方に読んでいただければ、と考えています。

2006.02.26

[資料紹介]都立図書館改革推進会議による都立図書館大改造計画に対する見解

(2006.02.26追記あり)

 更新が滞りがちではあるものの、おかげさまでカウンターが4万を超えるまでになりました。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

 さて、日比谷図書館の移管問題や図書館サービスの有料化等の議論が進められようとしている昨今の都立図書館の動きに対し、2月16日に、東京都庁職員労働組合(都庁職)教育庁支部、教育庁支部日比谷分会、教育庁支部三多摩分会が標記の見解を表明しています。章立てを次に紹介しておきます。

  はじめに
  1.日比谷図書館の千代田区移管計画
  2.協力貸出サービスの利用制限拡大・区市町村の費用負担
  3.図書館サービスの有料化
  4.レファレンス体制の縮小・ワンストップ
  5.都立多摩図書館のありかた
  6..収集・保存の将来展望を
  7.必要な司書職員の採用配置を
  8.討議の公開と都民、区市町村立図書館の意見の吸い上げを

 図書館が曲がり角である現在、様々な意見を元に考え取り組んでいくことが求められていますが、是非この見解についても多くの方に読んでいただき、参考にしていただければと考えています。全文はこちらからご覧いただけますので、よろしくお願いいたします。

 都民サービスや区市町村の図書館へのサービスの大幅低下につながること、全国の県立図書館へのマイナス影響もありますので、もっとの会として、また都教育庁などの部署に意見書などを出したいと考えています。

2005.10.23

もう一度「中小レポート」を読む

 図書館が曲がり角に来ている今、私たちにできることの一つに、図書館の取り組みに関する古典的な資料を読み直してそれを現代の文脈のなかで捉え直すということがあろう。今回は初版が1963年に出版された『中小都市における公共図書館の運営』(略称「「中小レポート」」)を取り上げる。

 それでは、例により、書誌事項の紹介から始める。

中小都市における公共図書館の運営. -- 復刻版.
[東京] : 日本図書館協会, 1973.3
217p ; 21cm
ISBN: 4820473018
別タイトル: 中小都市における公共図書館の運営 : 中小公共図書館運営基準委員会報告
目次:
0 はしがき
1 序論(中小公共図書館の機能/中小公共図書館の歴史/中小公共図書館の現状)
2 図書館奉仕(はじめに/奉仕計画/館外奉仕/館内奉仕/相談(レファレンス)/集会・行事/児童・青少年に対する図書館奉仕)
3 図書館資料とその整理(はじめに/収集と選択/不要払い出し、き損、亡失/図書の整理/新聞雑誌の整理/パンフレットの整理)
4 管理(はじめに/管理の問題点/図書館職員/館長/組織/財政/広報/統計/法規)
5 図書館の施設(図書館の位置/図書館の建物/ブックモビル/図書館設置と相互協力)
6 図書館設置と図書館協力(図書館設置/図書館協力)
付録

 思うに、この本は発表後40年以上経た今でも輝きを失ってはいない。私がそう考えているいくつかのポイントを述べてみよう。まず、レファレンスについての記述を下記に引用する。

市民は、毎日の生活の中で色々な疑問をもつ。そうしてその解決は、あるときには仲間や知人や先輩に、あるときには専門家や一定の期間(新聞社や相談所)に求めているのである。今日のように複雑な世の中になってくると、社会に対する情報の必要性は高まっているのである。
このようなときに、図書館が正確な情報、あるいは正しい判断を売るための基礎的資料を提供するならば、図書館の真価は大いに上がるであろうことはたしかである。…だから市民の日常生活に直結し、市民の必要なインフォメーションセンターとして活動する機関でもあることをしっかり認識してもらうことは、今の図書館にとって大切な活動の方向なのである。(p.101)

 地域でそれぞれ人は生業を営む。そして法律など色々な問題にぶつかり悩みながら生きていく。ビジネス支援を重要視する方々が「中小レポート」をよりどころとするのを見受ける(例えば「山中湖情報創造館ブログ 」に紹介されていた松本功氏の発言)が、地域住民の日常の生業を真摯に支えていくという視点からは大賛成である。このサービスは、時流だから着手する、などというものであってはならない。本書でも別の場所で、地域産業構造などをしっかり分析した上でサービス計画を進める必要性が述べられているが(pp.71-73)、まさにそのとおりである。かつて農村だった鶴川(現町田市)で私立図書館を開設して地元の農民と共に活動を展開した浪江虔さんなど、先人の活動に学ぶべきところも多いであろう。

 また、本書ではサービス面だけでなく資料収集面等についても分析・提言がなされている。図書館業務に関わる職員が活き活きと仕事ができるような体制の重要性や図書館業務を統括する館長の重要性も然りである。

 40年以上前に本書で指摘されている市民生活に対する情報の重要性は、インターネットが急速に発達した今日ではさらに増している。このレポートの底辺に流れている思想が何であるのかをしっかり踏まえておけば、今後の私たちの取り組みも確たるものになるのではないだろうか。図書館が曲がり角に来ている今、皆さんも是非もう一度一度本書を手にとっていただきたい。

参考文献
図書館そして民主主義 : 浪江虔論文集 / 浪江虔著 ; まちだ自治研究センター編.--
東京 : ドメス出版, 1996.10
250p, 図版[2]p ; 20cm
注記: 浪江虔図書館関係主要論文一覧: p246-250 ; 著者の肖像あり
ISBN: 4810704440

2005.10.09

[資料紹介]ジョナサン・コゾルの2冊の本 

 色々とドタバタしていた間に、おかげさまでカウンターが3万を超えていました。振り返ってみると、このサイトを開設してからそろそろ1年が経とうとしています。当サイトをお訪ねくださいました皆様に御礼申し上げますとともに、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

 この1年、色々なことがありましたが、中でも戦慄を味合わされたものは様々な災害です。新潟の地震、スマトラ等の津波、そして8月に発生した合衆国南部のハリケーン「カトリーナ」等による水害。何よりもまず、犠牲になった方々に哀悼の意を表します。

 考えるに、ある意味では、災害が襲い掛かることにより、それぞれの社会の有様が抉り出されたということが言えるのかもしれません。「カトリーナ」がもたらした傷はまだ癒えてはいないようですが、「人種差別」が深くこの災害には関わっているのではないかとの疑念を持つ人々のことが様々な形で伝えられてきました。そのことをも含めて、日本のブログなどでも多くの方がこの災害のことを取り上げておられます。少しだけタイトルを挙げてみましょう。


「カトリーナのもたらした災禍」(『内田樹の研究室』)
「正直なところ、イラクにいたほうがいい。」(『ブログ加藤眞三 医療の維新をより良い方向に』) 
「カトリーナ被害からブッシュ叩きの世相について」(『極東ブログ』) 
「ハリケーン(カトリーナ)は天災か1?」(『コラムの王様』)
「ハリケーン・カトリーナ」(『Wikipedia』)

 ここまで書きながら、アメリカの作家ジョナサン・コゾル氏の著作2冊を思い出し、棚から取り出してみました。一冊は『非識字社会アメリカ』、もう一冊は『アメリカの人種隔離の現在』。今回はこの2冊を取り上げます。

 その前に、コゾル氏について少し述べておきましょう。コゾル氏はボス トンに生まれ、1958年にハーバード大学を卒業しました。1964年よりボストンのサウスエンド地区--観光案内な どでは、治安の観点から「オモシロ半分で近づかないこと」等と記されています--に住んで黒人教育に携われてこら れました。御自身が赴任したボストン公立学校で黒人への差別教育が公然とまかり通っている現状に直面し、 『死を急ぐ幼き魂』(1968年早川書房刊)という本を「告発の書」として発表します。その他にも、たとえば、『自分の学校をつくろう』( 1987年晶文社刊。貧困が理由で学校に通うことが出来ない子 どのためのフリースクールを立ち上げたことに基づいたレポート)や 『先生とは』(1986年晶文社刊。教えるこ との根源と教師の役割とを問い直したもの)等の著作を発表し続けています。

 それでは、1冊目の『非識字社会アメリカ』からご紹介しましょう。まずは書誌事項からご覧下さい。


非識字社会アメリカ / ジョナサン・コゾル著 ; 脇浜義明訳. --
東京 : 明石書店, 1997.4
434p ; 20cm. -- (世界人権問題叢書 ; 16)
ISBN: 4750309184
目次:第1部 目に見えないマイノリティ―読み書き不能のアメリカの危機増大(こんな字が読めないのか、は国民の三分の一 言い逃れと数字ゲーム ほか) / 第2部 読み書きのできないアメリカを動かすために(無力感という神話―何をなすべきか 火種起こし―読み書きのできないアメリカを立ち上がらせる計画 ほか) / 第3部 実用を越えて(テクノロジー憑依 大学の責務 ほか)

 この資料は、合衆国内の非識字問題の存在を指摘し、教育・行政等での緊急の取り組みの必要性を 訴えたものです。本書執筆時(原書"Illiterate America"は1985年発表)の著者の経験として、「文章が読めない」ということでその人々が社会の中で幸せに生活することが不可能となり、ひいてはその人々が民主主義社会の崩壊を招くということが余すところなく描かれています。

 続いて、2冊目の『アメリカの人種隔離の現在』をご紹介します。


アメリカの人種隔離の現在(いま) : ニューヨーク・ブロンクスの子どもたち
/ ジョナサン・コゾル著 ; 脇浜義明訳. --
東京 : 明石書店, 1999.8
379p ; 20cm. -- (世界人権問題叢書 ; 32)
原題:"Amazing grace : the lives of children and the conscience of a nation"(1995年刊行)
目次:第1章 南ブロンクス、夏 / 第2章 閉ざされた生活 / 第3章 絶望の中のクリスマス
第4章 だれが子どもを殺すのか / 第5章 ゲットーの学校、ゲットーの病院
第6章 イエスは泣かれた―アメイジング・グレイス

 この資料は、ニューヨーク、 南ブロンクス地区--ニューヨーク最貧困地区--からのレポートです。病院や警察など地域を支える行政サービスが市当局の予算削減によって悪化し、その地域の住民が「暮らしにくさ」に直面している状況が描き出されています。例えば、著者は、市の財政削減で建物の点検担当の行政職員が削減され、危険な地区を避けてもいいという労働規約をたてに壊れたエレベーターを点検しなかったことが、ある黒人少年の死を招いたのではないかという一女性の話を紹介し、この女性の「新聞が市の予算削減を書くとき、焼死した子どもや事故死した子どもの写真もいっしょに載せればいい」等のコメントも紹介しています。 また、著者は、正規の免許状をもたない教員が多数をしめる学校の存在や、生活環境の悪さが原因で心身の病をかかえている子どもたちの多さ、学校の建物自体の環境汚染問題も指摘しています。ちなみに原題"Amazing Grace"は、讃美歌第2編 167番「我をも救いし」の英語版タイトルで「驚くべき恩寵」の意味です。Judy Collinsの歌でご存知の方も多いことでしょう。

 この2冊のコゾル氏の本にこめられた、人々が幸せに生きるには問題を多く含んでいる社会へに向けられた怒りから、私たちも汲み取らなければならないものが数多くあるのだと思います。ただ、この記事を書いている途中に見つけたウェブページ「『カトリーナ』被災者救援でネットが活躍」(Wired News, 2005年9月1日)には救われる想いがしました。人間にとっての情報の重要性、インターネットの持つパワー、そして危急の際に立ち上がった方々の思いを再確認させていただきました。

 最後にもう一言書いておきたいことがあります。それは、自然災害は対岸のものではないのだということです。東京でも9月4日晩の豪雨災害…「想定外」の降水量…により23区に被害がもたらされ、練馬区立南大泉図書館がいまだに予約受け取り窓口以外の業務を再開できない状態であることはご存知のとおりです。

    http://www.lib.nerima.tokyo.jp/library/minami.html

 災害、それはいつ襲ってくるかわからないものです。襲われたとき、どうするのか。いや、「襲われたとき」では間に合わないのであり、普段の社会の中でどのような営みをしていくのかを考えること。その中で、私たちの生活にとって情報の持つ役割、そして図書館の持つ役割は何なのかを振り返り、行動していくこと。それらのことを私たちは努々忘れてはならないのではないでしょうか。

(追記)
 アップする直前、次の"American Libraries"(アメリカ図書館協会機関誌)掲載記事に接した。ニューオーリンズ公共図書館職員のレイオフにより、同図書館の活動が停止したという記事である。ロイターが10月5日に、ニューオーリンズ市が職員のレイオフを発表したことを伝えていたが(「米ニューオーリンズ、財政難で市職員3000人をレイオフへ」)、図書館にもその影響が現れたということである。

"New Orleans Public Library Services Terminated." American Library Association. 2005.
http://www.ala.org/ala/alonline/currentnews/newsarchive/2005abc/october2005ab/nopllayoff.htm (Accessed 09 Oct, 2005)

2005.10.02

[資料紹介]柳田邦男『人間の事実』

 DORAさんのブログ『DORAの図書館日報』にもし、突然の宣告があったらという記事が寄せられていた。「もし、家族とか親族が不治の病と宣告されたら・・・家族として、司書として、その立場に立たされたらどういう事をすればいいのか」との真摯な問いかけであった。当サイトでもかつて「賢い患者術」等の記事を書いているが、そのような時に、闘病記へのアクセスツールがあれば、などと考え、今回標記の資料を紹介してみたい。

人間の事実 / 柳田邦男著
東京 : 文藝春秋, 1997.2
596p ; 20cm
注記: 『同時代ノンフィクション選集(全12巻)』の解説に大幅に加筆、単行本化したもの
書名索引及び著者名索引: p569-596
ISBN: 4163523308

 上記資料で柳田氏は闘病記のほか、政治、社会、科学技術など多方面にわたるノンフィクションについて12の章に分けて概観しているが、その第1章「自分の死を創る時代」、つまり闘病記の章には、ガンになった医師の闘病記も加えられている。例として、何冊か収録資料を紹介してみる。

飛鳥へ、そしてまだ見ぬ子へ : 若き医師が死の直前まで綴った愛の手記 / 井村和清著
東京 : 祥伝社, 1980.5
231p ; 18cm. -- (ノン・ブック ; 168)
たたかいはいのち果てる日まで : 医師中新井邦夫の愛の実践 / 向井承子著
東京 : 新潮社, 1984.7

 巻末には書名索引及び著者名索引も付いており、検索の便もよい。確かに出版年から7年も経過しており、これ以降に出版された闘病記はカバーできないわけであるが、それを承知の上で、アクセスツールの一つとして用いてみるのはいかがであろうか。

2005.07.17

[資料紹介]『図書館ハンドブック』6版

 皆さんは、『図書館ハンドブック』の最新版をもうご覧になっていらっしゃるでしょうか?

図書館ハンドブック / 日本図書館協会図書館ハンドブック編集委員会編集. 第6版.
東京 : 日本図書館協会, 2005.5
xvii, 652p ; 22cm
注記: 参考文献: p[453]-470 ; 年表: p525-622
ISBN: 4820405039

 15年ぶりの大改訂を経て、本書は最新の図書館状況を概観するのにぴったりの道具になっています。例えば、職員の問題を考える際には、「VI図書館職員」という項目を開いて頂くと、「図書館員の専門性」「人事制度」「労働」「図書館員養成教育と研修」の4項目に分けて概説されており、現在の状況を踏まえて委託等の問題も取り上げられています。

 是非皆さんも新しくなった『図書館ハンドブック』をご覧になってください。

2005.07.09

[資料紹介]ウェブログ図書館

 今日は、標記のサイトを紹介しよう。URLはこちらである。

    http://library.jienology.com/

 上記サイトは、当サイトのような「ウェブログ」(俗に言うブログ)に掲載された記事の一つ一つに対してNDC(日本十進分類法)上の記号を付与し、体系化・組織化させようとする取り組みである。NDCとは、知識の体系を十区分を繰り返すことで分類していく方法で、日本の図書館で広く採用されている。もちろんキーワードによる検索も可能である。大変頭の下がる取り組みである。当サイトの記事も「蔵書」にしていただいている。

 皆さんも、こんな分野に対してウェブログ上にどんな記事が展開されているか興味をもたれた際には、上記サイトを訪問してみてはどうだろうか。


2005.06.19

[資料紹介]『図書館情報学の地平 50のキーワード』

 今回は、管理人の知人が執筆者として加わっている下記の図書を紹介したい。

     図書館情報学の地平 50のキーワード 根本彰ほか編
     東京 日本図書館協会 2005.3
     監修:三浦逸雄

 サブタイトルにもあるとおり、現在の図書館で話題(問題)となっていることを50のキーワードを切り口にして、それぞれの専門家が執筆者として説き起こしている。図書館について考えていく際、脇に1冊置いておくと、何かと参考になる本だと考える。
 執筆者のお一人が開設しているサイトに目次が詳しく紹介されているので、参考にしていただいたうえで、是非お手にとっていただければ幸いである。

2005.05.21

[資料紹介]『阪神・淡路大震災と図書館活動』

 災害と図書館活動との係わり合いについては、多くの図書館関係者のブログで真摯に議論されているが、管理人は先日神保町の書店街をめぐっていた際にふと次のような文言の入った帯を目にした。

災害からの復興に図書館はどんな役割を担えるのだろうか

 この帯の文言にひかれて買い求めたのが今回紹介する次の本である。内容は、大まかに言えばこのブログでも以前紹介した神戸大学附属図書館震災文庫の来し方の記録である。著者である稲葉洋子さんは、神戸大学附属図書館の司書として同文庫の開設に携わった方である。

阪神・淡路大震災と図書館活動 神戸大学「震災文庫」の挑戦
稲葉 洋子著
[神戸] 人と情報を結ぶWEプロデュース/吹田 西日本出版社発売 2005.3
ISBN : 4-901908-09-X
目次
1 兵庫県南部地震の発生
2 「震災文庫」の活動
(相次ぐ震災資料収集グループの結成/神戸大学附属図書館の収集活動/
「震災文庫」の立ち上げと公開準備 ほか)
3 コレクションづくりに役立つ資料収集・整理・公開・保管の方法
(資料収集/整理・保管方法/分類 ほか)
年表

 例えば、「デジタル化」という項目では被災状況写真等に日・英両方の言語で撮影場所・日付・キーワードを付与してインターネット上に発信することにより、海外からもレファレンス依頼が寄せられるという事が記されている。普段の真摯な情報収集・整理・提供活動が全世界の災害復旧に役立っている姿の一端がうかがえるものである。

 著者は前書きに次のように記している。「『震災文庫』のために考え出したノウハウを提供することで、図書館職員がユニークなコレクションを構築したり、資料を整理・公開する際に少しでも役立てていただくことが出来れば司書冥利に尽きるというものである」。私達も、この本を手に取り、少しでもそこから汲み取るべきものを汲み取ることにより、社会に対する情報提供という仕事をより充実したものにすることが出来るのではないだろうか。

2005.05.15

[資料紹介]人文会特別講演「がんばれ!日本の図書館」(齋藤明彦)

 職場に送られてきている『人文会ニュース』の表紙にあった上記の論題にふと目が留まり、目を通してみた。今回はこの講演報告を紹介してみたい。まず、例によって書誌事項を紹介しよう。

「がんばれ!日本の図書館--人文会特別講演」齋藤明彦述
『人文会ニュース』No.95(2005.4)pp.11-45

 報告者は2005年3月まで鳥取県立図書館長であった方である。元々それほど一号のページ数の多くない雑誌であるが、講演全文の紹介のためにしっかりとページが割かれている。編集部で付与してある見出しを下に記す。

自己紹介を兼ねまして/図書館を取り巻く状況/地方だからこそ図書館は重要/
ソフトによる住民満足と「役に立つ」図書館/教育機関の枠を超えた情報提供機関/
韓国・中国の急速な変化/図書館のマネージメントの欠落/
何よりも職員のモチベーション/事業展開の考え方と実際/変化の方向性/

 報告本文からは知事や利用者、関連団体とのやり取り、あるいは職員集団とのかかわりの一端も垣間見える。末尾には質疑応答も収録されており。大変密度の濃い報告である。

 管理人は、この報告の柱は2本あるのだと捉えた。まず一本は、刻々と変化する社会の中で暮らす人々のニーズを情報提供機関としての図書館がしっかりと捉え、積極的に青写真を出し、行政の中で主張すべきはして、関連団体との協力が必要な場合にはしっかり取り組み、そのようにして図書館のサービスを構築していくべきであること。もう一本は、図書館でそのようなサービスを進めていくにあたり、職員のモチベーションを高めていくための配慮が何よりも大切であること。

 大変示唆に富む報告であるとの印象を持った。『人文会ニュース』は大方の図書館に送られていることであろう。仕事の合間に、是非目を通してみては如何だろうか。

2005.04.10

[資料紹介]『図書館雑誌』特集「これからの公立図書館の行方」

 管理人が帰宅すると、日本図書館協会から郵便物が届いていた。中身は最新号(v.99,no.4)の『図書館雑誌』である。今回の特集は標記のとおり「これからの公立図書館の行方」。副題に「指定管理者制度導入をめぐって」とある。現在大変な問題になっている事柄であり、早速論題だけでも読者の皆様にご紹介したい。


[特集]これからの公立図書館の行方-指定管理者制度導入をめぐって
特集にあたって…西野一夫/222
公立図書館の法的環境の変化と図書館の未来…山口源治郎/224
堺市立図書館の指定管理者制度導入構想をめぐって…竹田芳則/228
山中湖情報創造館における行政とNPOの協働-全国初の指定管理者…小林是綱/230
PFI手法から見た図書館への指定管理者制度導入-サービスの質を評価する仕組みを図書館の指定管理者制度に導入…熊谷弘志/234

 同誌編集長である西野一夫氏(川崎市立中原図書館)の概説や、東京学芸大学教員(図書館学)の山口源治郎氏による論考に続いて、それぞれのお立場から指定管理者制度についての発言が寄せられている。ちなみに竹田芳則氏は堺市立中央図書館所属であり、小林是綱氏は特定非営利活動法人地域資料デジタル化研究会の理事長である。また最後の熊谷弘志氏はKPMGビジネスアシュアランス(株)パブリックセクター事業部の責任者で、慶応義塾大学でも教えていらっしゃるという。

 前段でも述べたが、現在図書館は大きな曲がり角にあり、指定管理者制度も大変大きな事案として取り扱われている。私たちの暮らしにとって図書館とは何なのか、そしてその図書館がよって立つ制度はどうあるべきなのか、しっかり考えていく必要がある。山口氏は上記論考の最後を「…私たちの側の豊かな図書館像が求められているということであろう」と締めくくっているが、読者の皆様も早速今月号の『図書館雑誌』を手にしていただき、意見交換・交流などを進めていただければ、と考えている。

参考URL
KPMGビジネスアシュアランス(株) http://www.kpmg.or.jp/profile/ba/

2005.02.08

[資料紹介]"Australian and New Zealand Information Literacy Framework"

 知識の有無は、時によりその人の生き方をも変えてしまう。ならば、人が生き抜く力を養うために、私たちがすべきことは何だろうか。その答えへの道筋は「情報リテラシー」の育成にあるといえよう。情報リテラシー…①情報ニーズを認識する能力 ②情報の発見・獲得能力 ③情報及び情報探索過程を評価する能力 ④情報管理能力 ⑤新たな理解を生み出す能力 ⑥情報の背後にある問題を認識する能力…を身に着けるために、私たち図書館に関わる者や、社会に暮らすもの、教育に携わるものは何をすべきだろうか。

 今回は、オセアニア地区(オーストラリア及びニュージーランド)の大学図書館員が大学教員と協同してどのように情報リテラシーの育成に取り組んでいるかを振り返る意味で、下記の書物を紹介したい。

Title: Australian and New Zealand information literacy framework : principles, standards and practice / editor, Alan Bundy.
Edition: 2nd ed.
Publisher: Adelaide : Australian and New Zealand Institute for Information Literacy, 2004.
Description: 48 p. : ill. ; 30 cm.
ISBN: 192092700X

 本書によると、オーストラリアでは、現在、生涯学習者養成という観点から高等教育機関の卒業生が身に着けるべき資質について活発な議論がなされている。その資質の中には情報リテラシーの育成も位置付けられている。激しく変化する社会の中で生き抜くためには生涯教育が必須となり、そしてその方法をそれぞれが身に着けるためには情報リテラシー能力の取得が必須となっているということである。市民としての社会参加・社会的責任遂行のために、情報を使いこなす力を身に着けなければならないということである。そして、情報リテラシーは教育のすべてのレベル--初等・中等・高等・社会-で取り組んでいく必要があることも指摘されている。

 "Curriculum alignment and assessment of information literacy learning"(情報リテラシー学習のカリキュラム設定と学習効果の測定)では、情報リテラシー能力の育成のために、どのようなカリキュラムが必要なのかが概説されている。また、そこでは教員や司書を含め全教育スタッフの密接な協同作業が求められている。

 "How some Australian and New Zealand academic libraries were using the first edition of the Information literacy standards in 2003"(本書初版を踏まえた各大学での実践(抄))では、オセアニア地区の大学図書館における情報リテラシー教育の一部分が記されている。そこでは、たとえば教員と司書の共同作業の一端が示され、また、補助金交付や全学レベルでの協議、大学図書館連合体のなかでの協議などの取り組みの一端が示されている。

 そして、"Information literacy: a selective chronology 1965-2003"(情報リテラシー年代記(抄))では、情報リテラシー教育の取り組みを振り返るにあたり、特筆すべき出来事が年表にまとめられている。情報リテラシー教育にとって重要な著作が多く掲げられているが、その他にも図書館関係者がオーストラリア議会公聴会で発言したことや、大学の連合体や行政、議会によって情報リテラシーの教育における図書館の果たす役割の重要性を述べたレポートが発表されたことなどが記されている。

  振り返って、日本ではどのように取り組んでいくべきか。調べ学習等、様々な取り組みが行われてきているが、この「情報リテラシー」は、私たちがしっかりと取り組んでいかなければならない課題の一つである。多くの方にこの本を手にとって頂き、ご一緒に考えていければ幸いである。

2005.01.30

[資料紹介]『浦安図書館を支える人びと』

 ご存知のとおり、図書館は今、曲がり角に立たされている。どうすればよいのか、それを様々な方々が様々な角度から発言しておられる。私たちが議論を始める際の可能なことの一つに、素晴らしい仕事を続けてきた図書館の来た道を振り返る、ということがあろう。今回紹介したいのは、日本の公共図書館の世界においてここ何十年かトップランナーとされてきた、浦安市立図書館を支えてきた人々の物語である。

『浦安図書館を支える人びと 図書館のアイデンティティを求めて』鈴木康之・坪井賢一著
東京 日本図書館協会 2004

 また、例によって章立てを記しておこう。

  • 第1章 浦安図書館の司書はこんな仕事をしてきた
  • 第2章 浦安図書館の実績・課題・展望をこの10人が語る
  • 第3章 浦安図書館の秘密をデータで明かそう

 たとえば、第1章では浦安市立図書館の司書が手がけてきた様々な仕事が描かれている。貸出・レファレンス・児童サービス・障害者サービス・多文化サービス・電子図書館・その他…。利用者の求める資料・情報を提供するという立脚点に立ち、手がけていないことはないというぐらいに様々なことを手がけている。そして、図書館の体制、つまりしっかりとした司書集団及び行政のエキスパートが支えている様子も描かれている。

 また、第2章では、浦安図書館の館長であった竹内紀吉さんや常世田良さんらのインタビューで構成されている。

 「東京の図書館をもっとよくする」議論のためには、この本を紐解いて学びとるべきものを学ぶことも必要であろう。是非多くの人が手にとってほしい本である。

2005.01.16

[資料紹介]『法情報 資料室  ☆やさしい法律の調べ方☆』

 読者の皆様も、昨今、法律の問題を調べようという機会がいろいろとあろうかと思う。たとえば相続や契約、隣近所との紛争等、自分の人生でいろいろな問題が起きたとき。また例えば、職場で様々な問題が起こった時。その他いろいろあろうかと思う。「法律の知識の有無がその後の人生を決めてしまう」、そんな場面もきっと多いことと思う。そのような時、皆様はいかがされているだろうか。

 今回は、法に関する情報を入手しようとする時に参考になるサイトを紹介する。

     『法情報 資料室  ☆やさしい法律の調べ方☆』
      http://www007.upp.so-net.ne.jp/shirabekata/

 上記サイトには、法令、判例、議会資料に分けてそれらがどういうもので、どこにあって、どのように探すのかの解説が掲載されている。また、参考になる文献もあわせて掲載されている。
 
 冒頭に書いたような問題に出くわした時には、参考になる情報が得られるかもしれないので、このサイトを訪れてみてはいかがだろうか。

2005.01.01

[資料紹介]『朝日新聞』連載「賢い患者術」

 『朝日新聞』元旦の紙面に、病気と情報とのかかわりを考える上で興味深い記事が掲載されていたので紹介する。

    「賢い患者術 上--病気を知るには」『朝日新聞』2005.1.1p.33

 病気を知る・病気と闘うにあたり自らが情報を収集することの重要性を、昨今、様々な論者が指摘している。一例はノンフィクション作家柳田邦男氏の『死の医学への日記』(新潮文庫)である。今回の朝日新聞では、「病気を知るには」とのメインテーマの下、「電話を使おう」「専門の図書館に足を運ぼう」「ネットを活用しよう」との3本柱を立てて、それらについて概説がなされている。

 そのうち、第2番目の「専門の図書館に足を運ぼう」では、患者情報室国立大阪医療センター)やさわやか情報センター(聖路加国際病院)、からだ情報館東京女子医科大学病院)等の取り組みを紹介しながら、病気について知るための、図書館での資料提供の重要性が記されている。

 また、「ネットを活用しよう」では、国立国会図書館NDL-OPAC(『雑誌記事索引』等、日本の文献の索引となるもの)を含め、インターネット上で提供されている有用な情報源が紹介されていた。ちなみに、この国立国会図書館NDL-OPACの利用には費用は係らない。

 アメリカではMEDLINEという医学文献情報データベースがあり、誰でも無料で利用できるようになっているが、残念ながらまだ日本ではそのような状況にはない。しかし、今回上記の記事で紹介されているインターネット情報を使うことにより、いくらかでも、一般の人々にとって病に関する情報にアクセスする機会が増加しているということは言えるだろう。たとえば『雑誌記事索引』でタイトルに「がん」等と入れてそれに関する論文の一覧を出したり、著者に医師名を入れてその人の業績のリスト(一部)を出したりすることなどができるであろう。

 そのほか、「電話を使おう」では、電話相談についての情報が記されていた。また、この紙面には、がんと闘っている最中である絵門ゆう子さんのインタビュー記事も載せられている。自分自身の体験に基づき、絵門さんは患者が情報に触れることの大切さを指摘している。

 絵門さんの記事は、「がんでも幸せな毎日を送れれば問題ない。その目的のためにあらゆる分野の方たちが一つになることを望みます」という言葉で締めくくられている。とても大切なご発言である。「情報に関わる者」の一員つまり司書としての管理人も、改めてこの言葉が身にしみた次第である。今回紹介されなかったが、日本病院患者図書館協会のWEB患者図書館の取り組みが現在も進行中であり、また、地域の公共図書館でも入院患者へのサービスを行っているところがある。それぞれの場所で、それぞれの人が行っている取り組みを、今後ともしっかりと続けていくことが重要となろう。

 この連載は、3日に「下--病院を探すには」が掲載されるとのことである。正月、のんびりしている機会に、是非紙面をめくってみてはいかがだろうか。

参考文献
死の医学への日記 柳田 邦男著
東京 新潮社 1999年03月
ISBN 4-10-124915-6
(新潮文庫 や 8-15)

病院患者図書館 患者・市民に教育・文化・医療情報を提供 菊池佑著
東京 出版ニュース社 2001年12月
ISBN4-7852-0100-2

2004.12.26

[資料紹介]『これからの図書館員のみなさんへ』

 少々古い話ではあるが、ブログ『日本の図書館はもっと良くなる』に「本の力で負担を減らす」という記事が掲載されていた。新潟県中越地震を受け、被災者に対する図書館での支援の可能性として、地震関連の本、地震体験者の本、地震から立ち直った人が書いた本、サバイバルの本、DIYの本等の書誌を提供したり、実際の資料を提供することを挙げていらした。とてもすばらしい提案だったと思う。

 上記の記事を読みながら、昔出会った資料を思い出したので、今回はその資料のことを取り上げる。タイトルは『これからの図書館員のみなさんへ』、著者は日本図書館協会の理事長をされている竹内さとる先生--"さとる"は"折"の下に"心"--である。

    これからの図書館員のみなさんへ 現場の役には立たない話 竹内さとる
    矢本町(宮城県) 図書館問題研究会宮城支部 2001
    (図書館問題研究会宮城支部かばねやみブックレット 2)
    目次:
    0.はじめに
    1.事務局からの手紙
    2.図書館とは何か
    3.図書館で働く自分
    4 利用者への信頼と期待
    質問
    あとがき

 複雑な現在の社会にどのように対処していくべきなのか等の事柄に対して、管理人はこのブックレットから大いに示唆を受けた。また、このブックレットを手にしてとても驚いたことがある。それは、竹内先生がお話の中で紹介している、『ちょっと待って!自殺はやめて図書館へ』という、15ないし16年前のアメリカの図書館のポスターが描かれているページである。そのポスターは、Anne F. Roberts著"Library instruction for librarians"(Libraries Unlimitedより1982年刊行)に収録されていたものであった(p.46)。

 著作権法上の問題があるので、ここでの画像の紹介はまたの機会ということにし、言葉での説明を試みる。そのポスターには、拳銃を自らの頭に突きつけている男と、その周りにたくさんの本が描かれている。そして、キャプションには「もし自殺したいと思っているのなら、やめなさい。その代わりに図書館へいらっしゃい」と書かれている。先生のコメントにもあったが、「自殺の前に図書館にいらっしゃい」などというせりふは、図書館司書の側によっぽどの力量・自信があるから言えることだと理解している。「図書館にはガイドや書誌、類縁機関案内などがあり、図書館司書があなたの調べもののお手伝いをします。だから死ぬのはいけません」という文言もそのポスターには書かれていた。利用者が自殺を思いつめるまでに追い詰められている原因に対して、図書館として問題解決のための援助をしていこうとする姿勢には、管理人は立ちすくむ思いがした。

 このポスターと出会うことで、図書館の果たすべき役割、つまりそれぞれの母体となるコミュニティ--公共図書館だったら自治体の住民、大学図書館だったら設置大学の構成メンバー--にとって図書館は情報拠点であり続けなければならないのだということを再確認することができたと管理人は理解している。是非皆さんもこのブックレットを手にしてみていただきたい。

参考文献
Library instruction for librarians / Anne F. Roberts.
Littleton, Colo. : Libraries Unlimited, 1982
図書館学の五法則 / S. R. ランガナタン著 ; 森耕一監訳 ; 渡辺信一 [ほか] 共訳
東京 : 日本図書館協会, 1981.9

2004.12.23

[資料紹介]『ヒイラギの檻』(加筆)

ハンセン病について勉強中だというMayさんのブログ『Mayちゃんの学習帳』に、上記の書物が紹介されていた。以下のブログの「ハンセン病文学全集」」(皓星社刊)関係記事を読んだ管理人にも少し思うところがあったので、今回は表記の資料を取り上げる。著者瓜谷修治氏は元読売新聞記者で、ミニコミグループの一員としてエイズ取材に関わった後、ハンセン病の問題に関わるようになった方である。

 今回は、まず、ハンセン病のことについておさらいをしておこう。ハンセン病とは何かやハンセン病患者がどのような歴史を歩んできたのかは、是非ハンセン病資料館のサイトをそれぞれの方で訪れて頂きたい。1996年まで存在した「らい予防法」のこと、その法律のもとで、すべての患者の終生隔離という方針が採られたということ、そして、患者さんたちや元患者さんたちが味わいつくした差別のことはおさえておいたほうが良いだろう。

 つづいて、例により『ヒイラギの檻』の書誌事項である。

ヒイラギの檻 : 20世紀を狂奔した国家と市民の墓標 / 瓜谷修治著
東京 : 三五館, 1998.7
266p ; 20cm
注記: 参考文献: 巻末
ISBN: 4883201511

 三番目は、章立てである。

第1章 ヒイラギの檻 第2章 熱瘤   第3章 動物小屋
第4章 火傷    第5章 自治会  第6章 図書館

 東京の東村山にある多磨全生園というハンセン病療養所の入所者のお一人で、ハンセン病図書館の責任者であり、上述したハンセン病資料館での資料収集の担当者である山下道輔氏の協力を得て、著者瓜生氏は本書の筆を進めていく。本書には山下氏の実体験を元に、ハンセン病療養所というところがどういうところだったのか、どのように患者たちは扱われたのか、当時の政策はどのようなものだったのかが描きこまれている。

 また、司書である管理人が感銘を受けたことは、この山下氏が全身全霊をこめてハンセン病資料の収集に携わっていることである。ハンセン病とは、療養所とは…など、諸々のことを語る資料の収集に携わる氏の姿には、私たちも教わらなければならないものがあるのだと管理人は理解した。

 かつて、管理人と同じ職場で仕事をしていた方から、「知る」ということと「わかる」と言うことに関して次のような言葉をプレゼントして頂いたことがある。

原爆のことについていえば、投下の年月日、場所、被爆者数、歴史的文脈などを、答えることができれば、原爆について、「知っている」、一定の知識がある、と言えるでしょう。しかし、分かる、とはどういうことなのか。まとまった知識をもとに、共感したり、行動の指針を持つことができるレベルではないかと、私は考えています。

 これは何も原爆だけのことでなく、今回のハンセン病の文脈でも生きる言葉であろう。過日、管理人は上述の多磨全生園を訪ね、見学させていただいたことがあるが、その敷地内にある納骨堂の前まで来て、立ちすくんでしまったことを覚えている。読者の皆様には、ハンセン病療養所の中に納骨堂があるということがどういうことかお察しのことであろう。骨になっても外の社会に出ることができないということである。花を手向けては来たものの、それが上記の「わかる」ということなのだとは、とてもおこがましくて言えない。しかし、「わかる」ことへは「知ること」から出発するしかないのであり、その場面で「記録」の持つ意味は重要なのである。そして、私たちが関わる「図書館」という場所は、記録を扱う仕組みとして不可欠なものであり、そこで書物を選ぶことの意味は大変重いのである。

 「日々記」の記事が言うように、公共図書館と一口に言っても中央館とか分館とかいろいろあって、収書方針も予算も書庫スペースも館によって異なるのだから、全ての館で買えというのは乱暴である。だから、求められるのは、それぞれの館がそれぞれの館の状況に応じてしっかり本を選び、それを図書館システム(館種を超えた…)の中で相互協力をしながら利用していくと言うことであろう。自らが身を置く社会での図書館の役割、そして図書館で記録や情報を収集・提供することの役割は何なのか。この本からもそのことを勉強させていただいたと管理人は理解している。もしよろしければ、皆さんも、正月にでもこの本を手にとって見てはいかがだろうか。

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2004.12.21

[資料紹介]『自分で調べる技術』

 「あっかんべぇ」などあちこちのブログで『岩波アクティブ新書』終刊のニュースが取り上げられていた。なかなか面白い企画の本も多かったので管理人としても少々残念ではある。

 今回はその『岩波アクティブ新書』の中から一冊取り上げたい。タイトルは『自分で調べる技術』、著者宮内泰介氏は北海道大学の教員である。

   自分で調べる技術 : 市民のための調査入門 / 宮内泰介著
   東京 : 岩波書店, 2004.7
    vi, 199p ; 18cm. -- (岩波アクティブ新書 ; 117)
   注記: 参考文献・ホームページ: p193-195
   ISBN: 4007001170

 例によって章立てを少し紹介する。

   1 市民が調査をするということ
   2 資料・文献調査
   3 フィールドワーク
   4 まとめかたとプレゼンテーション
   5 最後に--市民調査を組織しよう

 これをみていただくと、どこにでもある調査法の教科書に思う方も多いことだろう。管理人がこの本について注目すべきだと考えている点は、市民たち自らが、この社会で生きていくにあたり、「自分たちが自分たちのことを決めるという、言ってみれば当たり前のこと実現していくために」、自分自身で調査をしてみようとことを御主張され、この本を出版されたということである。

 私たちの生活に必要となる情報を、私たちがこの社会で生き抜くために自分たち自身で調査していくこと。これは、社会がより激しく変化していくこれから、さらに求められていく技量であろう。そして、資料や情報と利用者とを結び付けていく図書館に関わるものにとっても、これからますますそのことに考慮を払わなければならなくなるであろう。この資料は、そのような、私たちの生活と情報とのかかわりにとって、大切な示唆を与えてくれるものだと理解している。

 皆さんも、お手すきのときにこの本を手にとられてはいかがだろうか。

2004.12.05

[資料紹介]『希望格差社会』

 今回は山田昌弘著『希望格差社会』を取り上げよう。著者は東京学芸大学の教員(社会学)である。著者はあとがきに「…しかし…司書…を目指す者…などは、相当苦戦している。…各種試験(…司書…等)を何年も受け続けている卒業生などを見ていると、…学生を受け入れる社会の側に変化が起こっていることを実感すると同時に、悲しさがこみ上げてくる」と記しているが("…"は管理人による省略)、この本は、その想いをこめた、大学教育現場発の渾身のレポートである。

    希望格差社会 「負け組」の絶望感が日本を引き裂く 山田昌弘著
    東京 筑摩書房 2004.11
    ISBN4-480-8630-5

 希望格差社会とは何か。カバーに記された定義によると、リスク社会日本において、「勝ち組」と「負け組」の格差がいやおうなく拡大する中で、「努力は報われない」と感じた人々から希望が消滅し、将来に希望が持てる人との間に分裂が生じる、そのことを言うのだそうである。

 本書の章立てを以下に記す。

    1.不安定化する社会の中で
    2.リスク化する日本社会 現代のリスクの特徴
    3.二極化する日本社会 引き裂かれる社会
    4.戦後安定社会の構造 安心社会の形成と条件
    5.職業の不安定化 ニューエコノミーのもたらすもの
    6.家族の不安定化 ライフコースが予測不可能となる
    7.教育の不安定化 パイプラインの機能不全
    8.希望の喪失 リスクからの逃走
    9.いま何ができるのか、すべきなのか

 図書館の世界を振り返ると、周知のとおりまさに職業の不安定化を地で行く世界になっていると言わざるを得ない。今若い人たちが図書館で仕事をしようとすると、委託先社員としてなど、不安定な立場で働かざるを得ない場合が多くなっている。それは働く人たちにとって良いはずはないし、サービスを受ける立場の市民にとっても良いはずはないのである。

 さて、それならばどうするか。「希望を失わない」と言うことを大前提として、著者の記すように「公共的取り組みの再建」あるいは「速やかなる総合対策」が求められているのだと言えよう。当然、「公共的取り組み」の内容は職種等によって異なるわけであり、私たち図書館でもしっかりとした取り組みが早急に求められていることは言うまでもない。
  
 私たちの取り組みにとっても、この本は様々な示唆を与えてくれるものだと管理人は理解している。もしよろしければ、機会があったら本書を手にとってみてはいかがだろうか。

2004.11.21

[資料紹介]"Toward Equality of Access"

 先日、"IFLAインターネット宣言"の紹介記事で、公共図書館がインターネットアクセスに果たすべき役割の重要性について触れた。今回、もう一つ同様な文献を紹介したい。"Toward Equality of Access"というタイトルの、ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団がかかわって発表された報告書である。

  "Toward Equality of Access: the role of public libraries in addressing the digital divide"
  http://www.gatesfoundation.org/nr/Downloads/libraries/uslibraries/reports/TowardEqualityofAccess.pdf

 報告書の"About this report"というページに内容が簡単にまとめられている。それによると、アメリカの公共図書館の95パーセントは、図書館でコンピュータを用意して無料のインターネット・アクセス環境を提供しているが、この国の最貧地域の住人--最も大きな情報ニーズを持った人々である--にとってはそれが唯一のインターネットアクセス手段の提供である場合がしばしばあるとのことである。このレポートは、情報格差(デジタルデバイド)に取り組む為の、図書館でのインターネットアクセス手段の提供事業の重要性を評価している。そして、デジタル情報へのアクセス環境を提供するという役割を果たしていくために、急いで着手すべき挑戦に公共図書館が直面していることにも触れている。そして、このサービスが、政策決定者や図書館司書、地域での支持者の継続的な支援無しには継続することが出来ないと言うことを述べている。

 次に章立てを試みに訳して紹介する

    要約
    1. 情報格差: 議論を発展させる
    2. 公共からのアクセスの提供者としての図書館: 概略史
    3. 図書館でコンピュータを提供するということ: 図書館における投資の評価
    4. 挑戦は続く:予算削減の風潮の中で、獲得したものを強固なものとすること
    5. 結論

 日本を振り返るに、たとえば『情報通信白書平成16年版』中に記されているように、インターネット利用には様々な要因--たとえば世代・都市規模・世帯年収--により格差が生じている(「第1章第4節2-(5) デジタルデバイドの解消に向けて」から)。一方でそのインターネットには、紙媒体等(図書や雑誌等)で提供されているのと同様に様々な情報が流通している。その中には医療情報や法情報など、利用者の暮らし、そして生き死にに直接かかわるものもある。図書館で扱う他のメディアの情報と同様、インターネット情報へのアクセス機会の不平等はすなわちこの社会で生き抜くための条件の不平等を意味すると言わざるを得ない。逆に、この「情報格差の解消」という任務には「基本的人権のひとつとして知る自由をもつ国民に、資料と施設を提供することをもっとも重要な任務とする」図書館の役割がますます問われることになるのだと言えよう。

 今、図書館の世界で「受益者負担」を議論しようとする動きがある。このサイトでも「東京都立図書館協議会第22期第1回会議」の報告記事の中でそのことに触れた。それに対し、私たちは今こそ、図書館で利用者に情報を提供することの意義を再確認する必要がある。そのことを考えるきっかけとして、この報告書を是非多くの方に読んでいただければ幸いである。

参考
図書館の自由に関する宣言
http://www.jla.or.jp/ziyuu.htm

2004.11.14

[資料紹介]『日本経済新聞』連載「アーカイブ零年 失われる記録」

 今回は、『日本経済新聞』で連載された、「アーカイブ零年」を取り上げたいと思う。この連載記事についてはすでに"Liblog Japan"(「アーカイブズ零年失われる記録」)や他のウェブログ等で紹介記事をご覧になった方もあろうかと思うが、図書館司書としての管理人の「想い」もこめてみたいと思うので、しばしお付き合い願いたい。

 この連載は、下記のように都合3回にわたって行われた。まず書誌事項を紹介しておく。

  上 文献後進国:現代史研究、外国頼み 2004.11.2 朝刊 p.40
  中 海外の現実:紙切れ一枚まで「救出」 2004.11.3 朝刊 p.40
  下 独自の試み:なくした過去取り戻す 2004.11.4 朝刊 p.32

 そして、3回の連載では、満鉄(南満州鉄道)資料の整理収集を「国家プロジェクト」と位置付ける中国・吉林省档案館を始め、下記の文書館や図書館、博物館を取り上げて、世界各地での「記録を保存するという営み」の現状がレポートされた。

○国内
 放送ライブラリー
 松本清張記念館
 福岡市総合図書館映像ライブラリー
 国立公文書館アジア歴史資料センター
○海外
 National Archives and Records Administration (アメリカ国立公文書記録管理局、NARA)
 Archives of American Art(アメリカ国立芸術資料館,AAA)
 Les Archives nationales(フランス国立公文書館)
 The Museum of Television & Radio(アメリカテレビ・ラジオ博物館)
 Octagon Museum(アメリカ建築財団附属オクタゴン博物館)
 Skyscraper Museum(摩天楼博物館,アメリカ)

 その一方で、日本の資料保存の現状の問題点(「資料を残す」と言うことに重きが置かれない、生の資料の喪失に対する抵抗感が少ない、等など)が指摘されている。また、あわせて「公文書等の適切な管理、保存及び利用に関する懇談会」による報告書である『公文書等の適切な管理、保存及び利用のための体制整備について』にも触れられている。

 ところで、この記事では、上記の報告書『公文書等の適切な管理、保存及び利用のための体制整備について』の"仕掛け人"福田康夫前官房長官が日本と外国での資料保存の現状の落差に愕然とするエピソードが紹介されている。実は、管理人にも似たような経験がある。その経験とは、かつて存在した日本国有鉄道という組織の前身である鉄道省観光局発行の雑誌"Travel in Japan"に掲載された記事が読みたいのだと言うリクエストに応えようとしたが、国内では探し当てられず、ようやくイギリスのオクスフォード大学ボードリアン図書館から複写物の提供を受けたというものである。その際に、「何ということだ!」と衝撃を受けたことを、この前橋の写真のエピソードで思い起こしていた。

 文書館や博物館の方々もそうであろうが、図書館に関わる司書も、利用者の読みたい資料を収集し、提供するという日々の営みを、現在の利用者に対しても、将来の利用者に対しても行おうとしている。記事中に出てきた学芸員のせりふではないが、「今の活動が30年後、50年後に大きな意味を持つようになる」ことは図書館の世界でも同じである。図書館の世界が曲がり角に差し掛かっている今こそ、将来に禍根を残さないような議論、取り組み、政策決定が強く望まれると言えよう。
 

2004.11.06

[資料紹介]『多文化サービス入門』

 今回も新潟県中越地震に関する話題から始めたいと思う。『東京新聞』のサイトで、「母国の家族が情報源:新潟中越地震 孤立する外国人被災者」という記事が掲げられていた(特報2004年10月26日付)。地震の恐怖に「言葉の壁」が加わり、基本的な情報すら得られないでいる在住外国人の様子が描かれている。

 ところで、中越地震のような極限状態に限らず、在住外国人にとってこの日本社会で生活を続けていくためには、そのために必要な情報へのアクセスが不可欠であるが、現状ではなかなかうまくいかない場合も多い。在住外国人も住民であることには変わりない。「国際化」の現在、在住外国人は増えており、ますますこのことについての条件整備をしていく必要があるだろう。

 さて、そのような場合に図書館に関わる私たちはどのようにすればよいのか、そのことについて参考になる資料が出版されたので紹介したい。

    多文化サービス入門 日本図書館協会多文化サービス研究委員会編
    東京 日本図書館協会 2004.10
    ISBN4-8204-0430-X

 ここで、「多文化サービス」とは、簡単に言えば「本が読みたい」「情報がほしい」などの在住外国人の方々の声に応える図書館のサービスのことである。この本では、このサービスにこれから取り組もうとしている図書館などのために、そのノウハウ(資料収集や整理、広報等)や実例、資料等を紹介している。

 外国籍住民の多い地域の図書館に関わる方など、是非多くの方々に手にとっていただければ幸いである。

2004.11.03

「ディスカバー図書館」報告書が出版されました

 先日、[資料紹介]鳥取県立図書館の特選リンク集(試験公開)の記事に対するコメントで、「ディスカバー図書館2004」という催し物のことが取り上げられましたが、このたび、日本図書館協会から「ディスカバー図書館2004」の報告書が出版されました。取り急ぎ、書誌事項をお知らせします。

    ディスカバー図書館2004 図書館をもっと身近に暮らしの中に
    日本図書館協会編集
    東京 日本図書館協会 2004.10
    ISBN4-8204-0434-2
    目次:"知的立国を図書館から"(基調講演) 片山善博."進化
    するニューヨーク公共図書館"(事例報告) 菅谷明子."地域の
    情報拠点としての図書館"(パネルディスカッション) 片山善博
    [他]。

   

[資料紹介]『だれのための図書館』

 今回は、管理人が学生のころに出会い、最近読み直している本を紹介したい。

   だれのための図書館 ホイットニー・ノース・シーモアJr.
   エリザベス・N.レイン著 京藤松子訳
   東京 日本図書館協会 1982.12
   ISBN4-8204-8209-2

 この本は、1979年にWhitney North Seymour Jr及びElizabeth N.Layneによって書かれた"For the people : fighting for public libraries"の日本語訳である。ちなみにタイトルを直訳すると「住民のために--公共図書館のために闘うということ」となる。

 管理人が思うに、この本は20年以上前のアメリカで出版されたにもかかわらず、2004年になって東京で読み直してみてもその輝きを少しも失ってはいない。なぜなのかをこれから書いていく。まず、構成について紹介しよう。

   序文 
   感謝の言葉
   はじめに
   第1章 小史
   第2章 読書の喜びを知る
   第3章 多年齢層の学生たち
   第4章 仕事の創造と求職者への援助
   第5章 貧しい人々に手を差し伸べる
   第6章 権利と自由を守る
   第7章 幸福の追求
   第8章 高齢者のための新しい世界
   第9章 公共図書館のための闘い
   付録
   訳者あとがき

 著者の一人シーモアJr氏は、弁護士業の傍らニューヨーク公共図書館(New York Public Library)に理事として関わっていたが、1976年に経済状態の悪化の影響で全米の公共図書館が危機に陥った際、全米の公共図書館市民の会を結束して「公共図書館を救うための全米市民緊急委員会」(以下緊急委員会と言う)を設立させた。もう一人のレイン氏は緊急委員会の調査部長である(いずれも当時)。

 1976年に、財政難のためにニューヨーク公共図書館が地域分館の整理を発表したことがこの本の執筆のきっかけなのだと言う。執筆者二人は、非常な困難な問題に直面しているアメリカの公共図書館のための闘いに取り組む人たちの「行動のための手引書」としてこの本を執筆したのだという。そして、この本では公共図書館が国民の生活に与える重要な役割を理解してもらうということが意図されている。ちなみに、ニューヨーク公共図書館地域分館の整理計画は、力強い住民運動により中止されたとのことである。

 個人の力を伸ばし、コミュニティを活性化させるためには教育が重要であることや、その基礎となるものが自己学習であること、そして、その中核をなすものが図書館なのだとということがこの本には記されている。公共図書館は「市民の大学」であり、市民の生活、自由、幸福の追求のために、決して譲れない権利の実現を援助するための地域社会の主要な情報源なのだと書かれている。

 公共図書館は市民の子ども時代から墓場まで寄り添うものであり、そして、公共図書館のドアは貧富、人種、その他いかなる条件に関わらずすべての人々に無料で開かれているのだと書かれている。図書館へのアクセスに支障がある人には必要な援助を行うべきことも書かれている。たとえば、子どもたちに読書の喜びを知ってもらう児童サービスの紹介の章では、「極貧地区」へでも、子どもたちのいるところへ図書館側が出かけていってサービスしている姿が紹介されている。大学入学のための資料・情報を提供することなどを含めて、学ぼうとしている学生への支援を行っている図書館の姿が記されている。履歴書の書き方の本、面接の受け方の本等をも含め、職を探す人のための情報提供を行っている図書館の姿も記されている。「障害者」、老人、在住外国人、貧困者等、「不利な条件の人たち」がこの社会の中で生きていくために必要な情報の取得を援助する図書館サービスのことも描かれている。公共図書館の使命はすべての大衆にサービスすることであり、公共図書館への公平なアクセスをすべてのアメリカ人に平等に保障する仕組みを実現していくことがこの本では強調されている。

 ところで、菅谷明子さんが岩波新書『未来をつくる図書館』で紹介したニューヨーク公共図書館の様々な先進的サービスが、ある意味で私たちにショックを与えてくれたことは確かである。ビジネス支援や医療情報、舞台芸術資料の収集・提供等、そこでは、私たちが目を見張るような図書館サービスが展開されている。また、ニューヨーク公共図書館は同市の他の図書館組織と共同して、英西両言語で一般市民に健康情報を提供するウェブサイト"New York Online Access to Health(NOAH)"を開設していることでも知られている。しかし、そのニューヨーク公共図書館が、かつて危機的状況に直面し、その際に市民が図書館を守る闘いに立ち上がったことはよく覚えておく必要があるだろう。「公共図書館のための闘い」に一番必須なものは市民の力であり、図書館関係者は市民から支持されるサービスを行っていくことが大切なのだということも、この本は語っている。

 そして、ご存知のとおり、現在、東京の、そして日本の図書館は曲がり角を迎えている。そのような今、私たちはこの本から、いろいろなことを学び取っていく必要があるだろう。この本には私たちが汲み取っていくべき内容がいまだにたくさん残っている。生きていく私たちにとって、また市民社会にとって「情報」とは何なのか。図書館とは何なのか、図書館司書とは何をする人なのか、そして、その図書館をどのようにしていかなければならないのか。そのことを考えるために、今、日本の公共図書館のための闘いに取り組む人々の中で本書がもう一度広く読まれることを願ってやまない。


参考文献
ニューヨーク公共図書館 市民はどのようなサービスを受けているか 
大島弘子著
静岡 大島弘子 1982.11

未来をつくる図書館 ニューヨークからの報告 菅谷明子著
東京 岩波書店 2003.9 (岩波新書 ; 新赤版 837)
ISBN4-00-430837-2

2004.10.30

[資料紹介]図書館系Web日記・Blogリンク集

 ネットサーフィンをしていたところ、ウェブログ『日々記―へっぽこライブラリアンの日常―』の中に面白いページを見つけました。タイトルは「図書館系Web日記・Blogリンク集」です。開設者のMIZUKI様、ご教示くださいましてありがとうございました。内容は、図書館関係者が開設するウェブログへのリンク集なのですが、様々な職務・様々な立場の図書館関係者が開設するウェブログが収録されており、とても興味深かったです。

参考URL
図書館系Web日記・Blogリンク集
http://www.blink.jp/go?page=ShowShare&args=2&arg0=view&arg1=36595966

2004.10.26

[資料紹介]"IFLAインターネット宣言"

 前回の「中越地震お見舞い」という記事はいかがでしたでしょうか。昨今目覚しい発達を遂げているインターネット。そこを流れ続けている情報は時として「良くない事」に使われる場合も確かにあります。しかし、このような私たちを突然襲う不幸に対処するための情報を収集する一助として、インターネットが大活躍している一端がうかがえるのではないでしょうか。9年前の阪神大震災のときも、救援や復興にインターネットの果たした役割が大きかったことをご記憶の方も大勢いらっしゃると思います。ちなみに、NPOたかとりコミュニティセンターはそのような活動の中から生まれた団体のひとつです。

 このような、人の暮らしになくてはならないものになったインターネットに対して、図書館に関わる私たちはどのような姿勢をとればよいのか、そのことを考える上で有益な資料を今回は紹介したいと思います。国際図書館連盟(IFLA)という、世界中の図書館関係者の集まる組織の2002年の年次大会で採択された「IFLAインターネット宣言」という文書です。

 この宣言は、(1)見出しはないものの、前文に相当する部分 (2)「情報、インターネット、図書館・情報サービスへの自由なアクセス」 (3)「インターネットによる情報アクセスの自由に関する原則」 (4)「宣言の実行」の4つの部分で成り立っています。

  (1)では、知的自由…人それぞれが意見をもち、かつ表明する権利、また情報
  を求め、かつ受け取る権利…が民主主義の基本であることや、情報への自由
  なアクセスがいかなる地域においても図書館・情報専門職の中心的な責務で
  あること等が語られています。


  (2)では、地球規模でのインターネットは、世界のどんな場所にいようと、世界中
  の個人やグループが情報に平等にアクセスできるようにし、それによって個人
  的成熟、教育や知的刺激、豊かな文化や経済活動、広い見聞や知識に基づ
  いた民主主義への参加が可能になることなどが語られています。


  (3)では、インターネットとその情報源のすべてのアクセスは、「国際連合世界人
  権宣言
」19条で語られている、国境・メディア不問の情報アクセス権をすべての
  人々が享受できるようにするための一つの手段であることや、そのアクセスは、
  いかなる障壁にも屈してはならないことなどが語られています。


  (4)では、国際図書館連盟から国際機関や各国政府、国家及び地域レベルで
  図書館政策を立案する人々への強い要請という形で、この宣言において表明
  された基本原則の実現が求められています。

 振り返って、昨今、図書館を含めどの行政分野でも「受益者負担」ということが求められています。しかし、「受益者負担」議論の行き着く先はどこでしょうか。この宣言の内容とまったくの対極の世界であってはならないと考えています。何もインターネットだけではなく、人間が生きるにあたって、情報の持つ役割は何なのか、そしてそこで図書館、図書館司書の持たなければならない役割とは何なのか、私たちはこの宣言に目を通しながら今一度考えてみる必要があるのではないでしょうか。

2004.10.07

[資料紹介]鳥取県立図書館の特選リンク集(試験公開)

 情報時代といわれ、インターネット環境が日々劇的に進化している昨今。図書館でも、様々な取り組みが行われています。その中で、「鳥取県立図書館の特選リンク集(試験公開)」をご紹介します。

 同リンク集は、下記の区分のもと、有用なウェブへのリンクがまとめられています。同ページによると、利用者の皆様の生活・仕事に役に立つと思われるホームページを今後も順次追加していく予定とのことです。

○ビジネス支援関連情報 ○生活に役立つ情報   ○児童・青少年関連情報   ○本・図書館・出版に関する情報 ○雑誌に関する情報 ○新聞・NEWS・メディア情報   ○鳥取県関連情報  ○環日本海交流室関連情報 ○文学・郷土作家関連情報   ○歴史・地理情報   ○オンラインデータベースのデータベース ○サーチエンジン ○国の機関・省庁関連情報   ○IT・コンピューター関連情報  ○その他役に立つ情報

 図書館の役割が問われ続けている昨今、インターネットを通じてもこのような情報発信を続けようという取り組みを紹介してみました。URLは以下のとおりですので、お時間のあるときにお立ち寄りください。

http://www.library.pref.tottori.jp/kenritu/slink/slink.htm

2004.08.01

リンク集

1.東京の図書館(専門図書館と私立図書館は全国版)
公共図書館[日本図書館協会]
大学図書館[日本図書館協会]
専門図書館[リンク集-専門図書館(ACADEMIC RESOURCE GUIDE)]
私立図書館[日本図書館協会]

2.図書館資料検索手段
東京都の図書館横断検索
----------------------------------------------------
NACSIS-WEBCAT
国立国会図書館NDL-OPAC( 『雑誌記事索引』等)
国立国会図書館総合目録 「ゆにかネット」(国会・都道府県立・政令指定市立図書館総合目録)
国際子ども図書館児童書総合目録

・国際子ども図書館・国立国会図書館・大阪国際児童文学館
・神奈川県立神奈川近代文学館・三康文化研究所附属三康図書館
・東京都立多摩図書館・日本近代文学館・梅花女子大学図書館

----------------------------------------------------
JCROSS図書館の本の横断検索

3.図書館関係団体
多摩地域の図書館を結び育てる会 (多摩むすび)
図書館をよくする会in北区
図書館を利用する音楽家の会
中野の図書館を守る連絡会
よりよい練馬区の図書館をつくる会
ライブラリーフレンズ日野(旧日野の図書館を考える会)
国立駅前に図書館をつくる会
----------------------------------------------------
学校図書館問題研究会
静岡市の図書館をよくする会
図書館サポート北九州
図書館問題研究会ホームページ
図書館友の会全国連絡会
むすびめの会
----------------------------------------------------
日比谷分会(都庁職教育庁支部日比谷分会)
----------------------------------------------------
日本図書館協会
日本病院患者図書館協会
----------------------------------------------------
アメリカ図書館協会(ALA)
国際図書館連盟(IFLA)

4.海外の図書館
New York Public Library(ニューヨーク公共図書館)
Legal Information Access Centre(LIAC)(在シドニー、オーストラリア)

5.指定管理者制度関係
[ 「図書館における指定管理者制度」を取り上げた雑誌記事一覧](「第8回 東京の図書館を考える交流集会」コメント)
指定管理者ドットネット
「指定管理者制度とは」(明日への道しるべ@ジネット別館)

6.PFI関係
PFIインフォメーション

7.書店サイト等
amazon.co.jp
オンライン書店bk1
紀伊国屋BookWeb
Books.or.jp
TRCブックポータル
楽天ブックス
復刊ドットコム

8.法令
法令データ提供システム総務省行政管理局)
○国際人権規約(外務省)
**A規約(経済的、 社会的及び文化的権利に関する国際規約)
**B規約(市民的及び政治的権利に関する国際規約)

9.その他
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